『チャナイナ・スタディ』の勉強会、第4章「史上最大の疫学調査 CHINA PROJECTの全貌
総合文化(2024/12/29)
コリン・キャンベル(T. Colin Campbell、コーネル大学栄養学教授、名著CHINA STUDYの著者)
酪農家に生まれたが32年前に肉食をやめ、25年前に乳製品もやめ、90歳を越えた今もますます元気
CHINA STUDY 「疫学研究のグランプリ」
英国オックスフォード大学、米国コーネル大学、中国がん研究所によって、中国全土で行われた壮大な共同研究。1983ー1990
中国全域65郡、成人6500人に、「中国農村部の食習慣」を徹底分析する
→ 米国:総摂取カロリーの15~16%はタンパク質で、そのうちの81%が動物性食品
→ 中国:総摂取カロリーの9~10%がタンパク質で、そのうちのわずか10%が動物性食品
「乳ガン」と動物性食品の深い関係
肉食 →「初潮年齢が」早い → 乳ガンリスクが高まる
「貧しさが招く病気」←→「豊かさが招く病気」
「食脂肪」と「体脂肪」、「食事コレステロール」と「血中コレステロール」
サプリメントより、丸ごとの食物を、
アトキンス・ダイエット(糖質制限ダイエット)の致命的欠陥
「動物性タンパクでなければ大きくなれない」という嘘
抗酸化物質(ファイトケミカル)は植物のなかだけに存在する。
非ヘム鉄は、色の濃い野菜、大豆製品、アサリ、果物に豊富に含まれていて、吸収も非常にいい
1.幸運がもたらした「ガン分布図」の入手
1970年代初め、周恩来首相がガンで死にかけていた。
そこでガン情報を収集するため、2400余りの郡と住民8億8000万人を対象として「12種にわたるガン死亡率」の調査が開始された。
その結果の1枚が188~9頁の「女性の結腸・直腸ガンの死亡率」。
ガン集中地域は、上記地図と見比べれば、上海市を中心とした地域であることがわかる。
上海は「世界的な金融勢力が集まっており、HSBCなどの大手多国籍投資銀行や多国籍企業の本社・支店があり、国内の他地域と寄生関係にある世界資本の中心地として100年以上の歴史をもつ」ところ(パストリッチの言。出典は以下の翻訳NEWS)。
*2年前の上海のCOVID封鎖。背後にいたのは誰だったのか?
http://tmmethod.blog.fc2.com/blog-entry-2788.html(『翻訳NEWS』20241020)
ガンが主に遺伝によるものではなく、環境やライフスタイルによる可能性が大きいという仮説を、キャンベル博士は「もしかしたら」という但し書きをつけて慎重に展開している。
もうすでに1981年には「遺伝は、ガンのリスク全体のわずか2~3%を決定するに過ぎない」という連邦議会向けの報告書が出ていたにもかかわらずだ。
こういう慎重な論の進め方が、重要というか、動物性タンパク質摂取とガンの関係というような(畜産業界全体を敵に回す)リスクの大きい主張を展開していくときには必要なことなのだと、この本を読んでいて何度も感じるところがあった。
2.アメリカと中国では何が違うのか
中国のガン罹患率の最も高い地域は、最も低い地域の100倍もあった。
それに対して、米国 NY州ロングアイランド内では、乳ガン罹患率が10~20%違うというだけで、新聞の1面を賑わし、人々を怖がらせ、政治家を動かし、その研究に33億円もの巨費と長い年月が費やされたという。この認識の違いはどこからくるのか?メディアのせいか?
・なぜ、ガンが中国の一部農村地域に多いのか
(とキャンベル博士は書いているが、上記地図と見比べれば、ガンが集中しているのは上海近郊。
ただの農村地域ではなく、100年以上も世界資本の中心地だった上海市近郊)
・なぜ、中国では地域によってガンの罹患率が100倍も違うのか
・とはいえ、なぜ、中国ではガンが米国より一般的ではないのか。これが本章のテーマである。
3.大型研究プロジェクトのスタート
それで中国全域65郡、成人6500人に、アンケートと血液検査、尿サンプル、「3日間にわたって家族が食べているものすべてを直接調査する」ことになった。
この模様は、ネット上で動く映像として直接見ることができる。内モンゴルの人々の生活様式なども垣間見られる貴重映像。ニューヨークタイムズ紙さえも「疫学研究のグランプリ」と評した。
「疫学研究のグランプリ」であるのはもちろんだが、キャンベル博士にとってはこれまでの研究室での成果を実証するまたとないチャンスでもあったということだ。それはつまり・・・
・動物を使った研究室での研究結果は、実際の人間と一致するか
・アフラトキシンによる肝臓ガンにたいするタンパク質の研究は、他のガンにも当てはまるか
4.「中国農村部の食習慣」を徹底分析する
米国:総摂取カロリーの15~16%はタンパク質で、そのうちの81%が動物性食品
中国:総摂取カロリーの9~10%がタンパク質で、そのうちのわずか10%が動物性食品
体重77キロの米国成人男性のカロリー摂取量は1日2400カロリー
体重77キロの中国農村地帯成人男性のカロリー摂取量は1日3000カロリー
体重?キロ(多分同程度)の日本人成人男性のカロリー摂取量は1日2141カロリー
中国農村地帯成人男性のカロリー摂取量の多さには目を奪われてしまった。なのに痩せている!!
5.「貧しさが原因の病気」か「豊かさが招く病気」か
病気の分類は、はっきり分けられる
栄養過多:ガン、糖尿病、心臓病・・・「欧米風の病気」
栄養不足と劣悪な衛生環境:肺炎、腸閉塞、消化性潰瘍、消化器疾患、肺結核(?)、寄生虫病、リュウマチ性心疾患、糖尿病以外の代謝・内分泌腺の疾患、妊娠(?)その他に関する病気
肺結核に(?)をつけたのは、ひとつには父の例があったから。9人兄弟の末っ子で、戦中ひもじい思いをしていたのが、ハイカラ好みで料理好きの母と結婚し、肺結核になって丸3年間の入院療養生活を送った。(当時の教員は3年間の病休が許されたので、手術で命も失わず、職をつないで私たちを育てることができた。が、最近は、その期間も短縮されていると聞く)
なお、松岡史郎氏によれば、昭和33年頃の農村の病気の70%が結核だったという。そのころ農村も急激な食生活の変化を来たしていたのではなかろうか。(父の結核発症は29年頃)
また別の例は「あなたと健康社」の東城百合子である。生い立ちまでは詳しくは知らないが、西洋栄養学を学んで実践し、重度の肺結核になり、そののち玄米菜食になった。
宮沢賢治の妹トシも肺結核で早死にした。日本女子大学を卒業後、花巻女学校の教員を務めていた。戦前にバイオリンまで習うほどの豪農の家庭だったから、貧しさが原因とは考えられない。
また、不妊も、豊かさが招く病の筆頭ではなかろうか(私の場合もそうかもしれない)。豊かな国ほど出生率は低く、金持ち階級ほど子どもがおらず養子縁組が盛ん。
6.コレステロールはどのようにして病気を招くのか
「食脂肪」と「体脂肪」
「食事コレステロール」と「血中コレステロール」
この2つは似て非なるもの。「血中コレステロール値」が上昇すると、「欧米風の病気」が増加。
中国人の血中コレステロール値は、予想以上に低く平均127mg/dl。米国人は215mg/dl。
中国は地域によっては94や80などの平均値もあった。(日本人の平均値は200mg/dl)
7.「コレステロール値が低いとガンのリスクが高くなる」というまやかし
アメリカではコレステロール値が150mg/dl以下だと健康上の問題があるかもしれないという俗説があるという。
本書の翻訳者の松田さんの【注】では、コレステロール値が低い人に対して数値を上げるために動物性食品を積極的にとるよう勧める公的健康機関や医師・栄養士がかなりある、という実態が語られている。
最近やたら大宣伝されている「高齢者は肉を食え」の一端をここに読み取ることができる。今は亡き瀬戸内寂聴や日野原重明がステーキを頬ばる写真も氾濫していたが、その理由がこれだったのだ。
「肉類など脂肪やコレステロールを多く含む食事をしている人は、脳の血管壁に脂肪やコレステロールが付着していくため、血圧が高くなっても血管が破れにくくなる。そのため肉は脳の血管強化に役立つ」というわけだ。
それに対して松田さんは「しかしそれは同時に全身の血管にも付着する」から、あえてコレステロール値を高める必要はないと書いていて納得できる。
コレステロール値が低いとなぜガンのリスクが高まるのか、の議論は私にはよく分からなかったが、アメリカ人の最低値を下回るコレステロール値の中国人にはガンがめったになかったことを知るだけで、この疫学調査の意味は巨大なのではないか。
しかし「ついでですが」と書かれている塩分摂取に関する松田さんの見解には疑問を禁じ得ない。「塩分とりすぎ」食習慣が、発ガンや胃がんの最大リスク因子「ピロリ菌」感染を促進する…というくだりである。
キャンベル博士は(マクガバン報告も)塩分は3%以内にすべきと書いているので、松田さんもそれに従っているのだと思うが、主食の米には塩分がゼロなので、塩分は減らせない。
というのは、菜食にすると、陰陽でいえば、肉食よりも陰に傾きがちになるので陽の塩分はしっかりとるべき、というのが桜沢如一「マクロビオティック」や、森下敬一医博、石原結實医博、石塚左玄、若杉友子、東城百合子らの教えだからである。
ただし、塩は塩でも精製塩は厳禁で、自然塩、海塩、岩塩でなければならない。
ひょとしてこれが松田さんの早死にの原因なのか、あるいは彼女の死にはもっと別の謎があるのか。
しかし、松田さんが日本に来たときの御用達のお店がネットで紹介されていて生野菜中心のバイキング店だったのを見て、これでは身体が冷えてしまい、これが彼女の早死にの一因かもしれないとも思わされた。
8.血中コレステロール値の改善により回復していく病気
「血中コレステロール値が高かったら心臓の心配をすべきだ、とアメリカ人は知っているのに、ガンも心配した方がいいということをほとんどの人が知らない」と書かれていることには驚きを隠せなかった。
アメリカ人男性の冠状動脈性心疾患(CHD)による死亡率は中国農村部の男性より17倍も高い、乳ガンの死亡率は5倍だそうだ。
「血中コレステロール値が150以下の患者に心臓病で死んだ人は1人もいなかった」という心臓病研究で著名な3人の医師のデータは、驚くべきもの。
9.血中コレステロール値を改善する食習慣
動物性タンパク質を摂取すると、血中コレステロール値を上昇させる
→ 悪玉コレステロールの数値を上昇させる
植物性食品はコレステロールを全く含まず、体内でつくられるコレステロールを減少させる
→ 悪玉コレステロールの数値を減少させる
ここ数十年、食物繊維の多い食品によるコレステロール減少効果を語る医師も出てきたとはいうものの、圧倒的多数の医師は「動物性タンパク質は血中コレステロール値に関与している」とは、「ほとんど言わない」というのである。
もうこうなると、固定観念などという代物ではない。心臓手術やガン手術でメスを振るえば巨額の報酬が手に入るのに、食事ごときで患者を減らされてたまるものか、ということだろうか。
10.脂肪にかんする多くの疑問
かつて1994年頃、アメリカに行くとスーパーは「NO FAT, NO SUGAR」の文言で溢れかえっていた(多分いまでもそうでしょう)。そんな環境にいると、脂肪と砂糖さえ減らせば健康になれると信じ込まされてしまう。
脂肪には、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸があり、前者は悪玉(LDL)コレステロールを増加させ、後者はそれを低下させる善玉(HDL)コレステロールを増加させるというが、では一体何を摂取すればいいのかが非常にわかりにくい。専門家でさえも答えに窮するというのだから。
いろいろ調べても本当によく分からないので私は、料理には圧搾の胡麻油と、洋食にはたまにオリーブオイルしか使わなくなった。サラダ油は怖いから。
私は天ぷら大好き人間なので、かつては胡麻油を大量に使って、毎朝・毎晩、天ぷらを作っていたが、いまでは油は天ぷらでもほんの少量だけ出して、1回で使い切るようにしている。
しかし菜食では良質の油の摂取はとくに重要。「油断大敵」という言は石塚左玄のものだ。
アメリカ人の脂肪摂取量は、総摂取カロリーの35~40%
「30%以下にすべき」と数十年間いわれてきたが、最近では人気ダイエット本の著者で、脂肪摂取を増やすよう提唱する人さえ出てきたそうだ。(アトキンス博士のこと?)
「脂肪摂取=動物性タンパク質摂取」であることは明らかなのにもかかわらず(表8で)。
私がとても疑問に思うのは、「NO FAT, NO SUGAR」の表記にもあるように、なぜ皆が(キャンベル博士を含めて)ストレートに「動物性タンパク質摂取量を減らせ」と言わないで、「食脂肪」「脂肪摂取」ということばをつかうのかということだ。このあたりにまやかしがある?
この脂肪と、動物性食品・動物性タンパク質の使い分けについてや、なぜ動物性タンパク質と言わないのかの理由が不明だったので、初めて本書を読んだとき私は、この第4章だけ頭がゴチャゴチャしてサッパリ理解できず、さっと読み飛ばしてしまっていた。どうも「NO FAT」が重要のようだ。
11.遺伝子リスクよりも優先すべきもの
マクガバン報告:「ガン予防のために脂肪摂取量の上限を30%にすること」(ここも脂肪)
この報告書は心臓病ではなくガンに焦点が当てられていたため、国民の関心と不安を助長させた。こんななかで「チャイナ・プロジェクト」がスタートした。
ケン・キャロル教授の、右肩上がりの「図17:食脂肪と乳ガンとの関係」(1986年)は衝撃的。
また、移住者研究「ひとは移住した地域の病気リスクを担う」は、「遺伝子は必ずしも重要ではない」ことを示唆し、「ガンが動物性脂肪の摂取と関与していた」と述べている。
12.中国農村部で乳ガンが少ない理由
チャイナ・プロジェクトの1983年当時、脂肪摂取は、アメリカ:36%、中国:14.5%だった
「脂肪の摂取=動物性食品の摂取」について、キャロル教授の「図18:動物性脂肪の摂取量と乳ガン死亡率」と「図19:植物性脂肪の摂取量と乳ガン死亡率」をみると、同じ脂肪でも動物性食品の摂取量が増えると乳ガンも増えることが一目瞭然だ。
「食脂肪(=動物性食品)」が多くなると、初潮年齢が早い、血中コレステロール値が高い、更年期が遅い、女性ホルモンのレベルが高い、などの乳ガンリスクが高まるという。
中国農村部の初潮年齢は15~17歳、アメリカは11歳。
「初潮年齢が早いと乳ガンリスクが高まる」ということに驚愕した。
父の一言で私は4年生のときから肉は食べられなくなったが、初潮が11歳だったということはアメリカ人と同じ。それまでの肉食や、魚食の多食の害を多分にうけているということだ。
とはいえ更年期障害は、子宮筋腫からの逃げ切り作戦(再手術回避)のために、一切、不都合を感じなかったことだけは幸いしたのだが。
13.「乳ガンと動物性食品」の深い関係
乳ガンと動物性食品との深い関係はわかったが、この項目のそれ以下の説明はよく分からなかった。
14.食物繊維はなぜ必要なのか
バーキット博士「食物繊維は、たとえ消化されなくても極めて重要」
「食物繊維は植物性食品のなかだけに含まれている」
中国:33.3g、アメリカ:11.1g、日本:18.8g
アメリカの一部専門家は、「食物繊維にはマイナス側面がある。鉄などのミネラルの吸収を妨げる」と主張する。しかしそんな証拠はなかった、という。アメリカの「専門家」らしいではないか。
15.食物繊維をたくさんとれば、コレステロールは減っていく
バーキット博士のアフリカでの調査や、イギリスで18世紀末から19世紀はじめ、著名医師たちの「嵩(かさ)の低い食事(食物繊維の少ない食事)はガンリスクを高める」との主張があった。
にもかかわらず、1982年の全米科学アカデミーの「食物・栄養とガン委員会」報告書では、そのような証拠はなかった、とされた!!
アメリカという国は、全く逆さまの結論を導きだして平気な国、嘘の帝国なのだ。
しかし「チャイナ・プロジェクト」の結果、食物繊維の大量摂取は、血中コレステロール値を低下させることをしめしていた。植物性食品はすべて食物繊維が豊富だからだ。当然のことだ。
16.抗酸化物質は自然界からの美しき贈りもの
抗酸化物質(ファイトケミカル)は植物のなかだけに存在する。
植物の、その色鮮やかさと健康との関係は、何物にも代えがたい。
植物は、太陽エネルギーをとりこみ、光合成のプロセスを経て、これを「命」に変える。
この光合成をうみだす、人間にとって、植物にとって、地球にとって、必要不可欠で大切なCO2を、「地球温暖化」という偽の持続可能性という情報で悪魔化し、太陽をさえ遮ってしまおうと画策するビル・ゲイツにはなんとしても対決していきたい。最近の翻訳NEWSには次のものがある。
*気候変動とCO2:偽の持続可能性と真の持続可能性
http://tmmethod.blog.fc2.com/blog-entry-2609.html(『翻訳NEWS』20240805)
*太陽光は必須栄養素である
http://tmmethod.blog.fc2.com/blog-entry-2628.html(『翻訳NEWS』20240815)
17.サプリメントより、丸ごとの果物・野菜
サプリメントではなく、丸ごとを。
たとえば、ビワ種のアミグダリンは抗がん作用が素晴らしいので、アメリカでその単一成分だけを抽出し錠剤化して大々的に販売された。しかし結局は効果がなかった、と東城百合子は語っていた。種をそのままかじりなさいと。
また緑の革命による「品種改良」(じつは遺伝子組換えGMOとモンサントの除草剤)で、植物は微量栄養素欠乏症になっているからとメルコラ氏は、自然で良質な牛肉やチーズ、プロバイオテックス等々をとるべきだと書き、販売もしている。
単一食品・単一成分をとれば簡単に健康になれるという甘言に人はだまされやすいとキャンベル博士が警告しているとおりのことを未だに宣伝しているわけだ。好きだったメルコラ氏がセールスマンで「体制協調的左翼」(偽左翼)だったとは!
*CIAのもうひとつの戦術――ベネズエラ攻撃で示された「偽左翼」の仕事
http://tmmethod.blog.fc2.com/blog-entry-2801.html (『翻訳NEWS』20241118)
(緑の革命のほかに、白の革命、ピンク革命もある。主にインドを標的としたもの)
18.アトキンス・ダイエットの致命的欠陥
日本でも有名な糖質制限ダイエット、低炭水化物ダイエットのことで、タンパク質や肉や脂肪は無制限に食べてもいいが、炭水化物類は控えろ、というもの。
日本での提唱者、江部康二医師と出会って20キロ減量した桐山秀樹氏が急死したことでも有名。
じつはここ数十年、炭水化物の摂取総量を極端に減らす食事法を提唱する本が増えている。訳本だけでも相当な数にのぼる。これらはすべてアトキンス式ダイエットを推奨している。
これらは炭水化物を総カロリーの15~20%に押さえる、つまり残りの80~85%を脂肪とタンパク質で取るとしている。
標準的なアメリカ人の食事はすでにカロリーの50%が脂肪とタンパク質になっているのだが、その割合をもっと増やすことがこれらの本の目的。
「アメリカは過去20年、低脂肪ダイエット・ブームにとらわれてきたにもかかわらず、人々は以前にもまして太っているから」というもの。
矛盾だらけの理論だが、この手の本は非常に人気がある。少なくとも短期的には痩せられるからであるが、実は、ダイエット参加者の1日平均摂取カロリーが平均的アメリカ人より35%も少なかったからだったとキャンベル博士は暴露している。
大山先生(仮名)が糖質制限ダイエットをやられていると聞いて、腎臓の片方を失っているのにと、居ても立っても居られず買った石原結實『「糖質制限」は危険』という本では、糖質制限は多臓器不全、とくにひどい腎臓疾患をおこしやすいと述べていたし、いまでは日本腎臓学会でもそのダイエットの危険性を警告している。
また2019年の欧州心臓学会誌でも、糖質制限食を続けると、心血管系の合併症(心筋梗塞などの血管が詰まる病気)が増えて死亡リスクが上がるという研究結果が報告されるなどしている。
しかし日本では、「糖質制限」の危険性が広く知られるようになっているとはまだいえない。
マクガバン報告やマクロビでは、総カロリーの60%程度を炭水化物でとるよう提唱している。
ちなみに、マクロビの治病食である「7号食」は100%炭水化物(玄米、全粒粉等)である。
しかし、60%を炭水化物でとるというのは「言うは易く行うは難し」で、私たち2人で1日2合の玄米すら、なかなか消化できない。私が副食を作りすぎるからだが、これは、かつて父が毎晩5時から9時まで酒とお喋りで、酒の肴ばかり食べ、ご飯は最後に一寸というのが普通だったからだ。
当時は高校教員でも5時には家に帰れた、そんな豊かなゆったりした時代だったということだ。
それにひきかえ近年は、夫婦共働き、長時間労働で、調理済み食品を買わざるを得ないほど忙しい。これでは健康的な食事を用意する余裕もないではないか。
RTニュースによれば、ロシアは、出生率の劇的減少を受けて、かつてのような大家族制を応援するいくつかの施策が検討されているという。①早期に結婚し出産した女性が大学教育を受ける場合、学費を無料にする、②子どもの多い家庭には大きな家やアパートを無料で提供する、③子どもの多い家庭には課税率を低くする、など。
日本もロシアよりも更に出生率が劇的に減少しているのに、このような、あっと驚くような施策が全く検討されていないのはどうしたことか。
19.「販売戦略ヘの貢献」が支えるダイエット法
「長期間にわたる糖質制限は、心臓不整脈、心臓収縮機能障害、突然死、骨粗鬆症、腎臓疾患、ガンリスクの増加、身体活動障害、脂質異常などといったすべての合併症と関連している」と、オーストラリアの研究者は論評している。
が、糖質制限ダイエットとWFPB(全体食の植物性食品)の食習慣を直接比較した研究はないそうだ。
これらの糖質制限本は「食べ物と健康に関する巨大産業」の宣伝媒体だ。アトキンス博士自身が「多くの患者たちは栄養サプリメントが必要で・・・1日30錠余りのビタミン剤を服用している」と述べているとおりだ、
「心臓病で高血圧の肥満の男」が「痩せて心臓を健康に保ち、血圧の正常化を約束するダイエット法」を売り込むことで、史上最も金持ちのインチキ・セールスマンの1人になったことは、近代的なマーケティング手腕があったことの証である、
・・・以上のキャンベル博士の言は、真実味がありすぎて怖い。
松田さんの【注】によれば、2004年に急死したアトキンス博士について、オタワ・シチズン紙は「ダイエット医のアトキンスは“肥満”で心臓障害があった」という検死官の言を報じたそうだ。
20.「炭水化物の健康価値」を正しく学ぶ
複合(=粗製)炭水化物←→単純(=精製)炭水化物
玄米←→白米、全粒粉パン←→白パン、などなど。
21.体重はこうして増えていく
チャイナ・プロジェクトを開始したとき、キャンベル博士の認識は「中国人は生きていくのに十分なカロリーを摂取していない」というものだったという。しかし実は、最も身体を動かしていない中国人でさえ、アメリカ人以上にカロリーをとっていたのに、太りすぎの問題は起きていなかった。だから、その秘訣は何かを考えている。
高脂肪・高タンパクの食事をしている人は、不要なカロリーを体内に体脂肪として蓄える。だから、いくらカロリー制限をしようとしても、長続きせず失敗する。
22.人体の複雑なメカニズムが教える「正しい減量法」
高脂肪・高タンパクの食事は、カロリーを体温に転換せずに貯蔵用(=体脂肪)に変える。
それにひきかえ、低脂肪・低タンパクの食事は、カロリーを体温への転換に費やす。
これが「チャイナ・プロジェクト」のデータが証明していることだ、と。
23.「動物性タンパクでなければ大きくなれない」という嘘
たいていの人が、タンパク質の豊富な動物性食品中心の食事をすれば、強く大きくカッコ良くなれると、考えている。そのかわり、心臓病やガン、糖尿病になるリスクが最も高くなる。
しかし実際、より大きな身体サイズと関連していたのは、植物性タンパク質だった、という。
発展途上国の人々が欧米人より小柄で貧相なのは、WFPB(全体食の植物性食品)の種類が不十分で量と質が足りず、公衆衛生状態も劣悪であるから。
朝日大学の運動部で私の授業をとっていた学生が、マッチョで強くなるために、やたらとプロテイン(大豆由来やホエイのタンパク質粉末)をシャカシャカして飲んでいるのをみて、それは不必要なだけでなく、過剰摂取は肝機能を害するよと忠告したが、やめてはくれなかった。
素人と思われている人間の忠告はなかなか聞いてもらえないものだと諦めた。
調べてみたらNHK「読むらじお」でも、プロテインについて過剰摂取を警告していた。
https://www.nhk.or.jp/radio/magazine/article/nhkjournal/iry20231011.html
昔の、といっても江戸時代のことだが、日本人はみな小柄でガリガリだった。
外国人たちは、こんな貧相な体格の車夫たちが、江戸から箱根まで休みなく走り続けられることに驚愕したという。だから、必ずしも大きいことはいいことだ、とは言えないとは思うのだが・・・
24.植物性食品のすばらしさ
公衆衛生状態が「貧しさが原因の病気」を効果的にコントロールできれば、身体は「低脂肪の植物性食品」で十分に成長できる、ということを「チャイナ・プロジェクト」は立証した。
そして「豊かさが招く病気」(心臓病、ガン、糖尿病など)を最小限にとどめることができると。
25.動物実験と人を対象とした研究データの一致
肝臓ガンを引き起こすアフラトキシン(1Aクラスの発ガン物質)の数十年にわたる実験動物の研究が、「チャイナ・プロジェクト」で人間にも当てはまることが実証された。
<実験動物による研究> 牛乳タンパクの「カゼイン」と、すべての動物性タンパク質は、私たちが口にする物のなかで、ガンを引き起こすのに最も深く関係している物質
<ヒトを対象とした研究> B型肝炎ウイルスに感染している人々で、動物性食品を多く食べている人はコレステロール値が高く、植物性食品を食べている感染者より、肝臓ガンになることが多い
疑問に思ったのは、キャンベル博士は「肝臓ガンは中国農村部に多く、平均して被験者の12~13%がB型肝炎ウイルスに感染、またある地域では人口の半分が慢性的に感染している」と書いているが、これは一体どの地域なのだろうか?ということだ。
それに反してネット上では、ガンは東南に行くにつれて多く、都市部はとくに多いと書かれている。やはり上海近郊のことなのか?本書には具体的記述がないので分からないが、とても疑問に思った。
また、B型肝炎ウイルスの感染は「箸先についた肝炎ウイルスによる」とか、「中国はガン大国だ」などという中傷めいた記述が、あまりにも氾濫していて驚いた。
アフラトキシンによる肝臓ガンは経口によるものだが(フィリピンの例)、B型肝炎ウイルス感染はもちろん経口によるものではない。
日本でのB型肝炎ウイルスの感染は、小中学校での集団予防接種で、ひとつの注射器で連続して接種されたために起きた。そのため、昭和16年~63年生まれで集団予防接種を受け、肝臓ガンや肝硬変になった人には最大3600万円が給付されるという。
本書に記述はないが、ひょっとして中国も同じような事情があるのだろうか?
26.「チャイナ・プロジェクト」の成果を阻害するもの
正しい食べ物を食べることによって、致命的な病気になるリスクを最小限に抑えられる、ということを、科学がぶれることなく証明してくれた。
しかし、「科学界の主流」に沿った意見や、自称「科学者」たちから、ひどい妨害を受けた。
「食事パターンではダメだ」「単一の化学物質の研究を」「多数の未知の栄養要因を」「乳ガンに対するセレニウム」等々・・・
27.明日への道を照らすもの
コレステロール値:欧米では200~300mg/dlが普通。中国では70~170mg/dlの範囲
われわれの「普通」「標準値」は、欧米風の食事をしている欧米人だけに当てはまるもの
このようななかで「チャイナ・プロジェクト」は一筋の光のような存在だ。
・健康にとってWFPB(全体食の植物性食品)は有益で、動物性食品は有益ではない
・ほかの食事選択肢があったとしても、有益ではないだろう
28.自らの人生を一変させた「真実」の力
キャンベル博士:32年前に肉食をやめ、25年前に乳製品もやめ、89歳のいま、ますます元気。
しかし、本書の結論は「チャイナ・プロジェクト」の調査結果だけから導き出されたものではない。
基礎研究から応用研究、ほかの多くの研究グループから得られた幅広い知見に基づくものだ。
29.「チャイナ・プロジェクト」の調査方法について
282頁(表I)米国の、ベジタリアン食と非ベジタリアン食の違いはごくわずか
中国にはアメリカとは著しく異なる「食習慣」が存在していた。
米国:総摂取カロリーの15~17%がタンパク質(そのうち80%以上が動物性)
中国:総摂取カロリーの9~10%がタンパク質(そのうちわずか10%が動物性)
日本:総摂取カロリーの15%がタンパク質(そのうち56%が動物性)【注】
284頁(表II)米中日の栄養摂取比較表はとてもおもしろい
中国は、以下の点が特異である。
カロリーの多さ、脂肪の少なさ、食物繊維の多さ、動蛋の少なさ(魚を除く)、鉄摂取量の多さ
中国は「鉄摂取量の多さ」がダントツだが、鉄含有食品というと私がレバーや肉ばかり思いつくのは、もはやかなり毒されているということ。非ヘム鉄は吸収が悪いという宣伝が余りに激しいからだ。
しかし非ヘム鉄は、色の濃い野菜、大豆製品、アサリ、果物に豊富に含まれていて、吸収も非常にいいそうだ。勉強し直しました。 (報告者:美子=仮名)
コリン・キャンベル(T. Colin Campbell、コーネル大学栄養学教授、名著CHINA STUDYの著者)
酪農家に生まれたが32年前に肉食をやめ、25年前に乳製品もやめ、90歳を越えた今もますます元気
CHINA STUDY 「疫学研究のグランプリ」
英国オックスフォード大学、米国コーネル大学、中国がん研究所によって、中国全土で行われた壮大な共同研究。1983ー1990
中国全域65郡、成人6500人に、「中国農村部の食習慣」を徹底分析する
→ 米国:総摂取カロリーの15~16%はタンパク質で、そのうちの81%が動物性食品
→ 中国:総摂取カロリーの9~10%がタンパク質で、そのうちのわずか10%が動物性食品
「乳ガン」と動物性食品の深い関係
肉食 →「初潮年齢が」早い → 乳ガンリスクが高まる
「貧しさが招く病気」←→「豊かさが招く病気」
「食脂肪」と「体脂肪」、「食事コレステロール」と「血中コレステロール」
サプリメントより、丸ごとの食物を、
アトキンス・ダイエット(糖質制限ダイエット)の致命的欠陥
「動物性タンパクでなければ大きくなれない」という嘘
抗酸化物質(ファイトケミカル)は植物のなかだけに存在する。
非ヘム鉄は、色の濃い野菜、大豆製品、アサリ、果物に豊富に含まれていて、吸収も非常にいい
1.幸運がもたらした「ガン分布図」の入手
1970年代初め、周恩来首相がガンで死にかけていた。
そこでガン情報を収集するため、2400余りの郡と住民8億8000万人を対象として「12種にわたるガン死亡率」の調査が開始された。
その結果の1枚が188~9頁の「女性の結腸・直腸ガンの死亡率」。
ガン集中地域は、上記地図と見比べれば、上海市を中心とした地域であることがわかる。
上海は「世界的な金融勢力が集まっており、HSBCなどの大手多国籍投資銀行や多国籍企業の本社・支店があり、国内の他地域と寄生関係にある世界資本の中心地として100年以上の歴史をもつ」ところ(パストリッチの言。出典は以下の翻訳NEWS)。
*2年前の上海のCOVID封鎖。背後にいたのは誰だったのか?
http://tmmethod.blog.fc2.com/blog-entry-2788.html(『翻訳NEWS』20241020)
ガンが主に遺伝によるものではなく、環境やライフスタイルによる可能性が大きいという仮説を、キャンベル博士は「もしかしたら」という但し書きをつけて慎重に展開している。
もうすでに1981年には「遺伝は、ガンのリスク全体のわずか2~3%を決定するに過ぎない」という連邦議会向けの報告書が出ていたにもかかわらずだ。
こういう慎重な論の進め方が、重要というか、動物性タンパク質摂取とガンの関係というような(畜産業界全体を敵に回す)リスクの大きい主張を展開していくときには必要なことなのだと、この本を読んでいて何度も感じるところがあった。
2.アメリカと中国では何が違うのか
中国のガン罹患率の最も高い地域は、最も低い地域の100倍もあった。
それに対して、米国 NY州ロングアイランド内では、乳ガン罹患率が10~20%違うというだけで、新聞の1面を賑わし、人々を怖がらせ、政治家を動かし、その研究に33億円もの巨費と長い年月が費やされたという。この認識の違いはどこからくるのか?メディアのせいか?
・なぜ、ガンが中国の一部農村地域に多いのか
(とキャンベル博士は書いているが、上記地図と見比べれば、ガンが集中しているのは上海近郊。
ただの農村地域ではなく、100年以上も世界資本の中心地だった上海市近郊)
・なぜ、中国では地域によってガンの罹患率が100倍も違うのか
・とはいえ、なぜ、中国ではガンが米国より一般的ではないのか。これが本章のテーマである。
3.大型研究プロジェクトのスタート
それで中国全域65郡、成人6500人に、アンケートと血液検査、尿サンプル、「3日間にわたって家族が食べているものすべてを直接調査する」ことになった。
この模様は、ネット上で動く映像として直接見ることができる。内モンゴルの人々の生活様式なども垣間見られる貴重映像。ニューヨークタイムズ紙さえも「疫学研究のグランプリ」と評した。
「疫学研究のグランプリ」であるのはもちろんだが、キャンベル博士にとってはこれまでの研究室での成果を実証するまたとないチャンスでもあったということだ。それはつまり・・・
・動物を使った研究室での研究結果は、実際の人間と一致するか
・アフラトキシンによる肝臓ガンにたいするタンパク質の研究は、他のガンにも当てはまるか
4.「中国農村部の食習慣」を徹底分析する
米国:総摂取カロリーの15~16%はタンパク質で、そのうちの81%が動物性食品
中国:総摂取カロリーの9~10%がタンパク質で、そのうちのわずか10%が動物性食品
体重77キロの米国成人男性のカロリー摂取量は1日2400カロリー
体重77キロの中国農村地帯成人男性のカロリー摂取量は1日3000カロリー
体重?キロ(多分同程度)の日本人成人男性のカロリー摂取量は1日2141カロリー
中国農村地帯成人男性のカロリー摂取量の多さには目を奪われてしまった。なのに痩せている!!
5.「貧しさが原因の病気」か「豊かさが招く病気」か
病気の分類は、はっきり分けられる
栄養過多:ガン、糖尿病、心臓病・・・「欧米風の病気」
栄養不足と劣悪な衛生環境:肺炎、腸閉塞、消化性潰瘍、消化器疾患、肺結核(?)、寄生虫病、リュウマチ性心疾患、糖尿病以外の代謝・内分泌腺の疾患、妊娠(?)その他に関する病気
肺結核に(?)をつけたのは、ひとつには父の例があったから。9人兄弟の末っ子で、戦中ひもじい思いをしていたのが、ハイカラ好みで料理好きの母と結婚し、肺結核になって丸3年間の入院療養生活を送った。(当時の教員は3年間の病休が許されたので、手術で命も失わず、職をつないで私たちを育てることができた。が、最近は、その期間も短縮されていると聞く)
なお、松岡史郎氏によれば、昭和33年頃の農村の病気の70%が結核だったという。そのころ農村も急激な食生活の変化を来たしていたのではなかろうか。(父の結核発症は29年頃)
また別の例は「あなたと健康社」の東城百合子である。生い立ちまでは詳しくは知らないが、西洋栄養学を学んで実践し、重度の肺結核になり、そののち玄米菜食になった。
宮沢賢治の妹トシも肺結核で早死にした。日本女子大学を卒業後、花巻女学校の教員を務めていた。戦前にバイオリンまで習うほどの豪農の家庭だったから、貧しさが原因とは考えられない。
また、不妊も、豊かさが招く病の筆頭ではなかろうか(私の場合もそうかもしれない)。豊かな国ほど出生率は低く、金持ち階級ほど子どもがおらず養子縁組が盛ん。
6.コレステロールはどのようにして病気を招くのか
「食脂肪」と「体脂肪」
「食事コレステロール」と「血中コレステロール」
この2つは似て非なるもの。「血中コレステロール値」が上昇すると、「欧米風の病気」が増加。
中国人の血中コレステロール値は、予想以上に低く平均127mg/dl。米国人は215mg/dl。
中国は地域によっては94や80などの平均値もあった。(日本人の平均値は200mg/dl)
7.「コレステロール値が低いとガンのリスクが高くなる」というまやかし
アメリカではコレステロール値が150mg/dl以下だと健康上の問題があるかもしれないという俗説があるという。
本書の翻訳者の松田さんの【注】では、コレステロール値が低い人に対して数値を上げるために動物性食品を積極的にとるよう勧める公的健康機関や医師・栄養士がかなりある、という実態が語られている。
最近やたら大宣伝されている「高齢者は肉を食え」の一端をここに読み取ることができる。今は亡き瀬戸内寂聴や日野原重明がステーキを頬ばる写真も氾濫していたが、その理由がこれだったのだ。
「肉類など脂肪やコレステロールを多く含む食事をしている人は、脳の血管壁に脂肪やコレステロールが付着していくため、血圧が高くなっても血管が破れにくくなる。そのため肉は脳の血管強化に役立つ」というわけだ。
それに対して松田さんは「しかしそれは同時に全身の血管にも付着する」から、あえてコレステロール値を高める必要はないと書いていて納得できる。
コレステロール値が低いとなぜガンのリスクが高まるのか、の議論は私にはよく分からなかったが、アメリカ人の最低値を下回るコレステロール値の中国人にはガンがめったになかったことを知るだけで、この疫学調査の意味は巨大なのではないか。
しかし「ついでですが」と書かれている塩分摂取に関する松田さんの見解には疑問を禁じ得ない。「塩分とりすぎ」食習慣が、発ガンや胃がんの最大リスク因子「ピロリ菌」感染を促進する…というくだりである。
キャンベル博士は(マクガバン報告も)塩分は3%以内にすべきと書いているので、松田さんもそれに従っているのだと思うが、主食の米には塩分がゼロなので、塩分は減らせない。
というのは、菜食にすると、陰陽でいえば、肉食よりも陰に傾きがちになるので陽の塩分はしっかりとるべき、というのが桜沢如一「マクロビオティック」や、森下敬一医博、石原結實医博、石塚左玄、若杉友子、東城百合子らの教えだからである。
ただし、塩は塩でも精製塩は厳禁で、自然塩、海塩、岩塩でなければならない。
ひょとしてこれが松田さんの早死にの原因なのか、あるいは彼女の死にはもっと別の謎があるのか。
しかし、松田さんが日本に来たときの御用達のお店がネットで紹介されていて生野菜中心のバイキング店だったのを見て、これでは身体が冷えてしまい、これが彼女の早死にの一因かもしれないとも思わされた。
8.血中コレステロール値の改善により回復していく病気
「血中コレステロール値が高かったら心臓の心配をすべきだ、とアメリカ人は知っているのに、ガンも心配した方がいいということをほとんどの人が知らない」と書かれていることには驚きを隠せなかった。
アメリカ人男性の冠状動脈性心疾患(CHD)による死亡率は中国農村部の男性より17倍も高い、乳ガンの死亡率は5倍だそうだ。
「血中コレステロール値が150以下の患者に心臓病で死んだ人は1人もいなかった」という心臓病研究で著名な3人の医師のデータは、驚くべきもの。
9.血中コレステロール値を改善する食習慣
動物性タンパク質を摂取すると、血中コレステロール値を上昇させる
→ 悪玉コレステロールの数値を上昇させる
植物性食品はコレステロールを全く含まず、体内でつくられるコレステロールを減少させる
→ 悪玉コレステロールの数値を減少させる
ここ数十年、食物繊維の多い食品によるコレステロール減少効果を語る医師も出てきたとはいうものの、圧倒的多数の医師は「動物性タンパク質は血中コレステロール値に関与している」とは、「ほとんど言わない」というのである。
もうこうなると、固定観念などという代物ではない。心臓手術やガン手術でメスを振るえば巨額の報酬が手に入るのに、食事ごときで患者を減らされてたまるものか、ということだろうか。
10.脂肪にかんする多くの疑問
かつて1994年頃、アメリカに行くとスーパーは「NO FAT, NO SUGAR」の文言で溢れかえっていた(多分いまでもそうでしょう)。そんな環境にいると、脂肪と砂糖さえ減らせば健康になれると信じ込まされてしまう。
脂肪には、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸があり、前者は悪玉(LDL)コレステロールを増加させ、後者はそれを低下させる善玉(HDL)コレステロールを増加させるというが、では一体何を摂取すればいいのかが非常にわかりにくい。専門家でさえも答えに窮するというのだから。
いろいろ調べても本当によく分からないので私は、料理には圧搾の胡麻油と、洋食にはたまにオリーブオイルしか使わなくなった。サラダ油は怖いから。
私は天ぷら大好き人間なので、かつては胡麻油を大量に使って、毎朝・毎晩、天ぷらを作っていたが、いまでは油は天ぷらでもほんの少量だけ出して、1回で使い切るようにしている。
しかし菜食では良質の油の摂取はとくに重要。「油断大敵」という言は石塚左玄のものだ。
アメリカ人の脂肪摂取量は、総摂取カロリーの35~40%
「30%以下にすべき」と数十年間いわれてきたが、最近では人気ダイエット本の著者で、脂肪摂取を増やすよう提唱する人さえ出てきたそうだ。(アトキンス博士のこと?)
「脂肪摂取=動物性タンパク質摂取」であることは明らかなのにもかかわらず(表8で)。
私がとても疑問に思うのは、「NO FAT, NO SUGAR」の表記にもあるように、なぜ皆が(キャンベル博士を含めて)ストレートに「動物性タンパク質摂取量を減らせ」と言わないで、「食脂肪」「脂肪摂取」ということばをつかうのかということだ。このあたりにまやかしがある?
この脂肪と、動物性食品・動物性タンパク質の使い分けについてや、なぜ動物性タンパク質と言わないのかの理由が不明だったので、初めて本書を読んだとき私は、この第4章だけ頭がゴチャゴチャしてサッパリ理解できず、さっと読み飛ばしてしまっていた。どうも「NO FAT」が重要のようだ。
11.遺伝子リスクよりも優先すべきもの
マクガバン報告:「ガン予防のために脂肪摂取量の上限を30%にすること」(ここも脂肪)
この報告書は心臓病ではなくガンに焦点が当てられていたため、国民の関心と不安を助長させた。こんななかで「チャイナ・プロジェクト」がスタートした。
ケン・キャロル教授の、右肩上がりの「図17:食脂肪と乳ガンとの関係」(1986年)は衝撃的。
また、移住者研究「ひとは移住した地域の病気リスクを担う」は、「遺伝子は必ずしも重要ではない」ことを示唆し、「ガンが動物性脂肪の摂取と関与していた」と述べている。
12.中国農村部で乳ガンが少ない理由
チャイナ・プロジェクトの1983年当時、脂肪摂取は、アメリカ:36%、中国:14.5%だった
「脂肪の摂取=動物性食品の摂取」について、キャロル教授の「図18:動物性脂肪の摂取量と乳ガン死亡率」と「図19:植物性脂肪の摂取量と乳ガン死亡率」をみると、同じ脂肪でも動物性食品の摂取量が増えると乳ガンも増えることが一目瞭然だ。
「食脂肪(=動物性食品)」が多くなると、初潮年齢が早い、血中コレステロール値が高い、更年期が遅い、女性ホルモンのレベルが高い、などの乳ガンリスクが高まるという。
中国農村部の初潮年齢は15~17歳、アメリカは11歳。
「初潮年齢が早いと乳ガンリスクが高まる」ということに驚愕した。
父の一言で私は4年生のときから肉は食べられなくなったが、初潮が11歳だったということはアメリカ人と同じ。それまでの肉食や、魚食の多食の害を多分にうけているということだ。
とはいえ更年期障害は、子宮筋腫からの逃げ切り作戦(再手術回避)のために、一切、不都合を感じなかったことだけは幸いしたのだが。
13.「乳ガンと動物性食品」の深い関係
乳ガンと動物性食品との深い関係はわかったが、この項目のそれ以下の説明はよく分からなかった。
14.食物繊維はなぜ必要なのか
バーキット博士「食物繊維は、たとえ消化されなくても極めて重要」
「食物繊維は植物性食品のなかだけに含まれている」
中国:33.3g、アメリカ:11.1g、日本:18.8g
アメリカの一部専門家は、「食物繊維にはマイナス側面がある。鉄などのミネラルの吸収を妨げる」と主張する。しかしそんな証拠はなかった、という。アメリカの「専門家」らしいではないか。
15.食物繊維をたくさんとれば、コレステロールは減っていく
バーキット博士のアフリカでの調査や、イギリスで18世紀末から19世紀はじめ、著名医師たちの「嵩(かさ)の低い食事(食物繊維の少ない食事)はガンリスクを高める」との主張があった。
にもかかわらず、1982年の全米科学アカデミーの「食物・栄養とガン委員会」報告書では、そのような証拠はなかった、とされた!!
アメリカという国は、全く逆さまの結論を導きだして平気な国、嘘の帝国なのだ。
しかし「チャイナ・プロジェクト」の結果、食物繊維の大量摂取は、血中コレステロール値を低下させることをしめしていた。植物性食品はすべて食物繊維が豊富だからだ。当然のことだ。
16.抗酸化物質は自然界からの美しき贈りもの
抗酸化物質(ファイトケミカル)は植物のなかだけに存在する。
植物の、その色鮮やかさと健康との関係は、何物にも代えがたい。
植物は、太陽エネルギーをとりこみ、光合成のプロセスを経て、これを「命」に変える。
この光合成をうみだす、人間にとって、植物にとって、地球にとって、必要不可欠で大切なCO2を、「地球温暖化」という偽の持続可能性という情報で悪魔化し、太陽をさえ遮ってしまおうと画策するビル・ゲイツにはなんとしても対決していきたい。最近の翻訳NEWSには次のものがある。
*気候変動とCO2:偽の持続可能性と真の持続可能性
http://tmmethod.blog.fc2.com/blog-entry-2609.html(『翻訳NEWS』20240805)
*太陽光は必須栄養素である
http://tmmethod.blog.fc2.com/blog-entry-2628.html(『翻訳NEWS』20240815)
17.サプリメントより、丸ごとの果物・野菜
サプリメントではなく、丸ごとを。
たとえば、ビワ種のアミグダリンは抗がん作用が素晴らしいので、アメリカでその単一成分だけを抽出し錠剤化して大々的に販売された。しかし結局は効果がなかった、と東城百合子は語っていた。種をそのままかじりなさいと。
また緑の革命による「品種改良」(じつは遺伝子組換えGMOとモンサントの除草剤)で、植物は微量栄養素欠乏症になっているからとメルコラ氏は、自然で良質な牛肉やチーズ、プロバイオテックス等々をとるべきだと書き、販売もしている。
単一食品・単一成分をとれば簡単に健康になれるという甘言に人はだまされやすいとキャンベル博士が警告しているとおりのことを未だに宣伝しているわけだ。好きだったメルコラ氏がセールスマンで「体制協調的左翼」(偽左翼)だったとは!
*CIAのもうひとつの戦術――ベネズエラ攻撃で示された「偽左翼」の仕事
http://tmmethod.blog.fc2.com/blog-entry-2801.html (『翻訳NEWS』20241118)
(緑の革命のほかに、白の革命、ピンク革命もある。主にインドを標的としたもの)
18.アトキンス・ダイエットの致命的欠陥
日本でも有名な糖質制限ダイエット、低炭水化物ダイエットのことで、タンパク質や肉や脂肪は無制限に食べてもいいが、炭水化物類は控えろ、というもの。
日本での提唱者、江部康二医師と出会って20キロ減量した桐山秀樹氏が急死したことでも有名。
じつはここ数十年、炭水化物の摂取総量を極端に減らす食事法を提唱する本が増えている。訳本だけでも相当な数にのぼる。これらはすべてアトキンス式ダイエットを推奨している。
これらは炭水化物を総カロリーの15~20%に押さえる、つまり残りの80~85%を脂肪とタンパク質で取るとしている。
標準的なアメリカ人の食事はすでにカロリーの50%が脂肪とタンパク質になっているのだが、その割合をもっと増やすことがこれらの本の目的。
「アメリカは過去20年、低脂肪ダイエット・ブームにとらわれてきたにもかかわらず、人々は以前にもまして太っているから」というもの。
矛盾だらけの理論だが、この手の本は非常に人気がある。少なくとも短期的には痩せられるからであるが、実は、ダイエット参加者の1日平均摂取カロリーが平均的アメリカ人より35%も少なかったからだったとキャンベル博士は暴露している。
大山先生(仮名)が糖質制限ダイエットをやられていると聞いて、腎臓の片方を失っているのにと、居ても立っても居られず買った石原結實『「糖質制限」は危険』という本では、糖質制限は多臓器不全、とくにひどい腎臓疾患をおこしやすいと述べていたし、いまでは日本腎臓学会でもそのダイエットの危険性を警告している。
また2019年の欧州心臓学会誌でも、糖質制限食を続けると、心血管系の合併症(心筋梗塞などの血管が詰まる病気)が増えて死亡リスクが上がるという研究結果が報告されるなどしている。
しかし日本では、「糖質制限」の危険性が広く知られるようになっているとはまだいえない。
マクガバン報告やマクロビでは、総カロリーの60%程度を炭水化物でとるよう提唱している。
ちなみに、マクロビの治病食である「7号食」は100%炭水化物(玄米、全粒粉等)である。
しかし、60%を炭水化物でとるというのは「言うは易く行うは難し」で、私たち2人で1日2合の玄米すら、なかなか消化できない。私が副食を作りすぎるからだが、これは、かつて父が毎晩5時から9時まで酒とお喋りで、酒の肴ばかり食べ、ご飯は最後に一寸というのが普通だったからだ。
当時は高校教員でも5時には家に帰れた、そんな豊かなゆったりした時代だったということだ。
それにひきかえ近年は、夫婦共働き、長時間労働で、調理済み食品を買わざるを得ないほど忙しい。これでは健康的な食事を用意する余裕もないではないか。
RTニュースによれば、ロシアは、出生率の劇的減少を受けて、かつてのような大家族制を応援するいくつかの施策が検討されているという。①早期に結婚し出産した女性が大学教育を受ける場合、学費を無料にする、②子どもの多い家庭には大きな家やアパートを無料で提供する、③子どもの多い家庭には課税率を低くする、など。
日本もロシアよりも更に出生率が劇的に減少しているのに、このような、あっと驚くような施策が全く検討されていないのはどうしたことか。
19.「販売戦略ヘの貢献」が支えるダイエット法
「長期間にわたる糖質制限は、心臓不整脈、心臓収縮機能障害、突然死、骨粗鬆症、腎臓疾患、ガンリスクの増加、身体活動障害、脂質異常などといったすべての合併症と関連している」と、オーストラリアの研究者は論評している。
が、糖質制限ダイエットとWFPB(全体食の植物性食品)の食習慣を直接比較した研究はないそうだ。
これらの糖質制限本は「食べ物と健康に関する巨大産業」の宣伝媒体だ。アトキンス博士自身が「多くの患者たちは栄養サプリメントが必要で・・・1日30錠余りのビタミン剤を服用している」と述べているとおりだ、
「心臓病で高血圧の肥満の男」が「痩せて心臓を健康に保ち、血圧の正常化を約束するダイエット法」を売り込むことで、史上最も金持ちのインチキ・セールスマンの1人になったことは、近代的なマーケティング手腕があったことの証である、
・・・以上のキャンベル博士の言は、真実味がありすぎて怖い。
松田さんの【注】によれば、2004年に急死したアトキンス博士について、オタワ・シチズン紙は「ダイエット医のアトキンスは“肥満”で心臓障害があった」という検死官の言を報じたそうだ。
20.「炭水化物の健康価値」を正しく学ぶ
複合(=粗製)炭水化物←→単純(=精製)炭水化物
玄米←→白米、全粒粉パン←→白パン、などなど。
21.体重はこうして増えていく
チャイナ・プロジェクトを開始したとき、キャンベル博士の認識は「中国人は生きていくのに十分なカロリーを摂取していない」というものだったという。しかし実は、最も身体を動かしていない中国人でさえ、アメリカ人以上にカロリーをとっていたのに、太りすぎの問題は起きていなかった。だから、その秘訣は何かを考えている。
高脂肪・高タンパクの食事をしている人は、不要なカロリーを体内に体脂肪として蓄える。だから、いくらカロリー制限をしようとしても、長続きせず失敗する。
22.人体の複雑なメカニズムが教える「正しい減量法」
高脂肪・高タンパクの食事は、カロリーを体温に転換せずに貯蔵用(=体脂肪)に変える。
それにひきかえ、低脂肪・低タンパクの食事は、カロリーを体温への転換に費やす。
これが「チャイナ・プロジェクト」のデータが証明していることだ、と。
23.「動物性タンパクでなければ大きくなれない」という嘘
たいていの人が、タンパク質の豊富な動物性食品中心の食事をすれば、強く大きくカッコ良くなれると、考えている。そのかわり、心臓病やガン、糖尿病になるリスクが最も高くなる。
しかし実際、より大きな身体サイズと関連していたのは、植物性タンパク質だった、という。
発展途上国の人々が欧米人より小柄で貧相なのは、WFPB(全体食の植物性食品)の種類が不十分で量と質が足りず、公衆衛生状態も劣悪であるから。
朝日大学の運動部で私の授業をとっていた学生が、マッチョで強くなるために、やたらとプロテイン(大豆由来やホエイのタンパク質粉末)をシャカシャカして飲んでいるのをみて、それは不必要なだけでなく、過剰摂取は肝機能を害するよと忠告したが、やめてはくれなかった。
素人と思われている人間の忠告はなかなか聞いてもらえないものだと諦めた。
調べてみたらNHK「読むらじお」でも、プロテインについて過剰摂取を警告していた。
https://www.nhk.or.jp/radio/magazine/article/nhkjournal/iry20231011.html
昔の、といっても江戸時代のことだが、日本人はみな小柄でガリガリだった。
外国人たちは、こんな貧相な体格の車夫たちが、江戸から箱根まで休みなく走り続けられることに驚愕したという。だから、必ずしも大きいことはいいことだ、とは言えないとは思うのだが・・・
24.植物性食品のすばらしさ
公衆衛生状態が「貧しさが原因の病気」を効果的にコントロールできれば、身体は「低脂肪の植物性食品」で十分に成長できる、ということを「チャイナ・プロジェクト」は立証した。
そして「豊かさが招く病気」(心臓病、ガン、糖尿病など)を最小限にとどめることができると。
25.動物実験と人を対象とした研究データの一致
肝臓ガンを引き起こすアフラトキシン(1Aクラスの発ガン物質)の数十年にわたる実験動物の研究が、「チャイナ・プロジェクト」で人間にも当てはまることが実証された。
<実験動物による研究> 牛乳タンパクの「カゼイン」と、すべての動物性タンパク質は、私たちが口にする物のなかで、ガンを引き起こすのに最も深く関係している物質
<ヒトを対象とした研究> B型肝炎ウイルスに感染している人々で、動物性食品を多く食べている人はコレステロール値が高く、植物性食品を食べている感染者より、肝臓ガンになることが多い
疑問に思ったのは、キャンベル博士は「肝臓ガンは中国農村部に多く、平均して被験者の12~13%がB型肝炎ウイルスに感染、またある地域では人口の半分が慢性的に感染している」と書いているが、これは一体どの地域なのだろうか?ということだ。
それに反してネット上では、ガンは東南に行くにつれて多く、都市部はとくに多いと書かれている。やはり上海近郊のことなのか?本書には具体的記述がないので分からないが、とても疑問に思った。
また、B型肝炎ウイルスの感染は「箸先についた肝炎ウイルスによる」とか、「中国はガン大国だ」などという中傷めいた記述が、あまりにも氾濫していて驚いた。
アフラトキシンによる肝臓ガンは経口によるものだが(フィリピンの例)、B型肝炎ウイルス感染はもちろん経口によるものではない。
日本でのB型肝炎ウイルスの感染は、小中学校での集団予防接種で、ひとつの注射器で連続して接種されたために起きた。そのため、昭和16年~63年生まれで集団予防接種を受け、肝臓ガンや肝硬変になった人には最大3600万円が給付されるという。
本書に記述はないが、ひょっとして中国も同じような事情があるのだろうか?
26.「チャイナ・プロジェクト」の成果を阻害するもの
正しい食べ物を食べることによって、致命的な病気になるリスクを最小限に抑えられる、ということを、科学がぶれることなく証明してくれた。
しかし、「科学界の主流」に沿った意見や、自称「科学者」たちから、ひどい妨害を受けた。
「食事パターンではダメだ」「単一の化学物質の研究を」「多数の未知の栄養要因を」「乳ガンに対するセレニウム」等々・・・
27.明日への道を照らすもの
コレステロール値:欧米では200~300mg/dlが普通。中国では70~170mg/dlの範囲
われわれの「普通」「標準値」は、欧米風の食事をしている欧米人だけに当てはまるもの
このようななかで「チャイナ・プロジェクト」は一筋の光のような存在だ。
・健康にとってWFPB(全体食の植物性食品)は有益で、動物性食品は有益ではない
・ほかの食事選択肢があったとしても、有益ではないだろう
28.自らの人生を一変させた「真実」の力
キャンベル博士:32年前に肉食をやめ、25年前に乳製品もやめ、89歳のいま、ますます元気。
しかし、本書の結論は「チャイナ・プロジェクト」の調査結果だけから導き出されたものではない。
基礎研究から応用研究、ほかの多くの研究グループから得られた幅広い知見に基づくものだ。
29.「チャイナ・プロジェクト」の調査方法について
282頁(表I)米国の、ベジタリアン食と非ベジタリアン食の違いはごくわずか
中国にはアメリカとは著しく異なる「食習慣」が存在していた。
米国:総摂取カロリーの15~17%がタンパク質(そのうち80%以上が動物性)
中国:総摂取カロリーの9~10%がタンパク質(そのうちわずか10%が動物性)
日本:総摂取カロリーの15%がタンパク質(そのうち56%が動物性)【注】
284頁(表II)米中日の栄養摂取比較表はとてもおもしろい
中国は、以下の点が特異である。
カロリーの多さ、脂肪の少なさ、食物繊維の多さ、動蛋の少なさ(魚を除く)、鉄摂取量の多さ
中国は「鉄摂取量の多さ」がダントツだが、鉄含有食品というと私がレバーや肉ばかり思いつくのは、もはやかなり毒されているということ。非ヘム鉄は吸収が悪いという宣伝が余りに激しいからだ。
しかし非ヘム鉄は、色の濃い野菜、大豆製品、アサリ、果物に豊富に含まれていて、吸収も非常にいいそうだ。勉強し直しました。 (報告者:美子=仮名)
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