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 御家人 美馬清史郎 小普請組裏夫役⑤

#7  寺

八丁堀 参千院

墓所。一つの墓の前に若者たちが集まっている。
辰之進と志乃、他にも三浦道場の門弟たちだ。
その中に清史郎もいる。
辰之進、悲しそうな表情を浮かべ、墓を見ながら清史郎に

辰之進
「皆殺しだったからな…せめて宗助の家族だけにでも墓をと
亡骸を引き取ったら…宗助だけ殴り殺されたらしくてそりゃあ惨い(むごい)ものだったよ…」
    
思い出したように泣き始める門弟たち。
清史郎も言葉にならない表情。
弟子の中の一人の青年が

門弟A
「両の手のひらには穴が穿って、顔も身体も紫色でぶよぶよに膨れ上がって…
おそらく自分の木刀で死ぬまで殴り続けられたんだろうって……」
    
沈痛な表情でうなだれる辰之進。袴姿で侍の子らしきの門弟が泣きながら

門弟B
「しかも、あんなひどい事件なのにお調べが沙汰止みだなんて…」
清史郎
「なんだって? まことかッ?」
門弟
「父上が言ってたもん。町方じゃ取扱えないって…もっと偉い人が
調べてくれるって言ってたけど、そんなの出鱈目に決まってら…」
    
愕然とする清史郎。裏の夫役が脳裏をよぎる。

清史郎
「…………」
    
フラフラと歩きはじめる清史郎。
志乃が涙を拭きながら

志乃
「清史郎様どちらへ…」
    
まるで聞こえてないように歩き続ける清史郎。
見ている志乃の顔に雨粒。

志乃
「あら雨……」

#8  番所

日も暮れ、雨が降り続けている。
番所の中には机之介、甲子郎、伝兵衛の3人。
重苦しい雰囲気。誰も口をきかない。
傘を閉じながら左門が入ってくる。裏の顔になっている。

左門
「小普請です」
    
キリッとした表情の3人。

時間経過。
    
土間の中央には血で汚れた「葵怨候」の書付と見取り図とが広げられている。

左門
「的(まと)は旧肥後加藤藩重臣・居木井又左衛門と
旧藩士の12名。小塚原近くの廃寺を根城にしているようです」
甲子郎
「カーッ 上からのお達しがもう少し早ければ、例の伊勢屋の件だって
未然に防げたかもしれないってえのに…聞いただろ、伊勢屋の倅の殺され…」
    
ガラッと引き戸が開く。
そちらを見る一座。口を押える甲子郎。
清史郎が濡れそぼった姿で立っている。
左門が引き入れながら

左門
「美馬殿、一体どうされたのです傘もささずに…」
清史郎
「(ポソリと)……ください…」
左門
「エ?」
清史郎
「(左門をまっすぐ見て)私にも裏の夫役をやらせてください!」
左門
「しかし…」
    
チラと机之介を見る左門。机之介が近づき

机之介
「まっぴらな死に損になるかもしれねえんだぜ? 
それに例え上手くいっても仇討成りとは誰にも言えねえんだぞ」
清史郎
「構いません!」
    
強い意志で机之介を見る清史郎。
見返す机之介。ふいと背を向け

机之介
「一人頭三人。意外と楽な仕事かもしれねえな」
清史郎
「ありがとうございます!」
    
嬉しそうな清史郎。
左門、甲子郎、伝兵衛も口の端に笑みを浮かべている。

                   つづく





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あまみわつき

漫画原作というかシナリオというか・・・
とりあえずそんな感じのものをアップして
いきます。読んでやってください。
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