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Archive for the ‘Internet’ Category

3つの「中国版LinkedIn」 – 優士網(Ushi)、経緯(Jingwei)、恒知網(Hengzhi)

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Bloomberg の記事によると、LinkedIn の国際事業担当副社長 Arvind Rajan 氏は、先日北京で行われたテクノロジー関連のカンファレンスで、「魅力的な中国市場への進出は慎重に行いたい。果敢に飛び込むが成功できない、というようなことは避けたい」と話しています。一方で、この中国市場には、LinkedIn の全世界での現ユーザー数に匹敵する約1億人の潜在ターゲットがいるということも Rajan 氏は語っています。LinkedIn は、Facebook や Twitter など他のサービスと比べると珍しく、中国で禁止されていないサービスですが、いまのところ慎重な姿勢をとろうという判断のようです。

そうしたなか、中国では同様のローカルなサービスが続々と出ています。そこで、Technode の記事をもとに見てみると、これまでに聯絡家(Linklist)、天際網(Tianji)、Xing などいくつものサービスが立ち上がったり海外から参入しては、収縮・撤退しているようです。そうした状況は、中国の文化的背景にもよるようです。

LinkedIn のコピーや Xing といったサービスが中国で流行らない理由は簡単だ。人人網(RenRen)や開心網(Kaixin001)が比較的たやすく成長しているのは、中国人は、写真のアップロードや、リンクの共有、友人にちょっかいを出したりソーシャルゲームで遊ぶのが好きだからだが、ことビジネスとなると中国人は慎重になり、伝統的な方法を好むのだ。それは、個人的な面会や会食といったもので、もちろん酒席も含まれる。話し合いをするならサービス内のメッセージのやりとりを使うよりも、いまだ電話の方が好まれる。オンラインでビジネス上の「関係(Guanxi)」をうまく維持する方法はいまのところほとんどない。

現時点では、以下の3つのサービスが「中国版LinkedIn」としてまずまずうまくやっているようです。

  1. 優士網(优士网, Ushi)
    2010年2月にベータ版ローンチ、同年10月に正式ローンチ。20万ユーザーには、12,000名のCEOと5,000名のCTOを含む。 (優士網については こちらの記事 で詳しく解説されています)
  2. 経緯(经纬, Jingwei)
    今年3月にベータ版ローンチ。中国のSNS最大手「人人網」が運営。 Q&Aを充実させることで、LinkedIn + Quoraのようなサービスを目指している。
  3. 恒知網(恒知网, Hengzhi)
    2010年2月にローンチ。現在はまだ招待制であるものの、すでに60万ユーザーを持つ。大半のユーザーが28~40歳で、5年以上の勤務歴を持ち、60%以上のユーザーがVP以上のタイトルを持っている。

先行サービスの収縮・撤退などを見たうえでこれらのサービスは、急拡大によるユーザーの質的低下などを防ぎながら、ひとまずは慎重に進めているように見えます。優士網の共同創業者 Dominic Penaloza 氏は以下のように語っています。

天際網の失敗は急速なユーザー拡大によるものだ。優士網ではユーザーをグレード分けしたうえで、そのグレードによってできることに制限を設けている。例えば、アカウントを新規開設したばかりのユーザーは、1日あたり100以上のコンタクト申請をすることができなかったり、コンタクト申請が拒まれれがちなユーザーについてはコンタクト申請を送ること自体が難しくなる、といったことだ。

しかし、Penaloza 氏自身「LinkedIn もそうやっているようにね」と言い添えているように、各サービスとも中国の文化的背景に適合させた機能を付けているといった感じではありません。潜在ターゲット数1億の大きなパイを少しずつ切り取っていくゲームはまだ始まったばかりのようです。

†参照記事:Technode #1, #2, #3, #4, #5


[Summary]
LinkedIn, the most famous and successful professional network in the world, is now seeking for Chinese market which has 100M potential targets, but it will be cautious to go into the Chinese market where many foreign web services such as Google, Twitter and Facebook has been banned. On the other hand, there have already been a several domestic professional networking services in China market, and successful 3 services out of them at present seems to be Ushi, Jingwei and Hengzhi. The competition among these services seems to have just started recently.

Written by shungoarai

6月 11th, 2011 at 8:00 am

新興市場で広がりはじめるファッション通販

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コンサルティングファームのA.T. カーニーから昨年9月に「世界の新興市場 小売企業の参入魅力度 – グローバル小売成長指数2010年版リポート」(日本語訳, 2010年9月, PDF文書)というレポートが出ていますが、このレポートの興味深い点は冒頭に掲げられた参入魅力度のランキングよりも、その先で掲げられた「機会の窓」(各市場の事業機会の大きさ)分析のように思います。

Opportunity curve

GRDI 「機会の窓」(事業機会の大きさ)に関する分析(A.T. カーニー, 2010年)

参入魅力度上位の中国(2010年 1位)やインド(同 3位)は、この中では成熟した市場として位置づけられていますが、一方で、いずれの国についても中間所得層の拡大による小売の継続的成長の見込みや、「より高質なショッピング環境とより強力なブランド」のニーズが述べられています。

約1ヶ月前、ファッションECモール「ZOZOTOWN」を運営するスタートトゥデイが、ソフトバンクと合弁で香港に法人を設立し、ソフトバンク子会社のアリババのサポートを受けて中国国内でもサービスを展開するという発表がありました(参考:MarkeZine記事)。また先週も、中国・インドにおけるファッション通販に関する記事がいくつか見られましたが、これは中間所得層による高質な消費へのニーズのあらわれと言えるでしょう。

  1. China’s E-Commerce Giant Taobao Launches Women Apparel Aggregator Site (Penn Olson)
  2. The Gilt for Indian Fashion Exclusively.in Raises $16 Million (TechCrunch)

ひとつめは淘宝(Taobao)が女性向け衣料品専門のサイト「淘宝女装」を新たに立ち上げたニュース、ふたつめはインドのファッションブランド品のファミリーセールサイト「Exclusively.in」(インド版Gilt)が1,600万ドルを調達したニュースです。

インターネットの普及と経済発展が同時に起きている国々においては、あるカテゴリのインターネットサービスの成長を、単にサービスのオンライン化としてのみでなく、消費社会化のバロメータとしても見ることができるような気がします。


[Summary]
There were several news articles about fashion EC services in China and India recently. Emergence and rise of such services surely indicate growing needs for higher quality consumption by middle class as also written in an A.T. Kearney’s report “Expanding Opportunities for Global Retailers”. Especially in countries where internet popularization and economic growth proceed at the same time, a growth of web services in a certain category seems to show not only the extent that category goes online but also the extent of consumer society progress.

Written by shungoarai

5月 30th, 2011 at 5:00 pm

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ソーシャルサービスの進むインドネシア

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アジア圏のインターネット関連ニュースを扱う Penn Olson にまとめて目を通していたところ、今週のニュースとしてインドネシア関連のものが散見されたので整理しておきます。

Indonesia Map & Flag

  1. Every District in Indonesia Will Be On the Net By June 2011 (2011/05/23)
  2. Social Media in Asia [INFOGRAPHIC] (2011/05/24)
  3. Social Commerce, Indonesia and India (2011/05/23)

最初の記事は、インドネシア全域に光基幹網を整備する「パパラリング計画(Papala Ring Project)」の進捗について、同国の通信情報相のコメントを紹介したものです。コメントによれば、未整備の地域は東部の10,000平方キロメートルを残すばかりで80%が完了、今年6月までには国内全域での整備が完了するという見込みです。

2つめは、先頃PRファームの Edelman Digital が発表したアジア太平洋地域(APAC)でのソーシャルメディアの利用状況をまとめたインフォグラフィックを紹介した記事です(参考:Edelman Digital)。インフォグラフィックには Edelman Digital の発表情報を引用して説明が補われています。

  • 欧州と同様、APAC地域においてもFacebookが他を圧倒しており、域内13カ国のうち9カ国で最も有力なネットワークとなっている。
  • 一方、北アジアの国々では、中国における人人網(RenRen)、韓国におけるCyWorld、台湾における無名小站(Wretch)、そして日本におけるTwitterのように、その地域で強いソーシャルメディアが存在している。
  • 域内でインターネット普及率が最も高いのはニュージーランド(85.4%)、次いで韓国(81.1%)。しかし、4,800万人の国民のうち3,900万人がインターネットを利用している韓国の数字の方が [人口が500万人足らずのニュージーランドの高い普及率よりも] 重要だ。
  • 地域別に利用方法を見ると、北部では動画閲覧のためにインターネットが使われる傾向が強い一方で、南部では主にソーシャルネットワーキングに用いられているといえる。

インフォグラフィックを見ると、2点目・4点目にあるように、南部APAC地域ではおしなべてSNSがほぼ8割以上のインターネットユーザーに使われていて、最も使われているサービスはFacebookという状況が一目瞭然です。

さて、この2つの記事を確認した後に3つめの記事に目を通すと、状況がより理解できるように思います。この記事では、インドネシアにおけるソーシャルコマース市場はポテンシャルが大きく、オンラインでの消費がいまだ低水準であるこの国に多くの企業が資源を投下しているということがレポートされています。

2億4,000万人のインドネシア人口のうち、インターネットユーザーはまだ4,500万人にとどまる。しかし、そのうち3,500万人はFacebookのユーザーだ。政府が強力に推進するインターネット普及政策によって、インドネシアの人々のインターネットリテラシーが高まっていくのは間違いないだろう。

上記の引用箇所の数字を用いるとインドネシアにおけるインターネット普及率は20%未満(Internet World Stats では2010年の数値を12.3%としています)、この普及率は単純に比較すると1998〜99年頃の日本の水準です(総務省「情報通信白書」によれば、98年のインターネットの人口普及率は13.4%、翌99年は21.4%)。

しかし、この比較はさほど意味を持たないということを常に意識しておくことが必要だと思っています。人口普及率こそ日本の10年前の状況だとはいえ、インドネシアのインターネット利用者が見ているオンラインの世界はすでに、Facebookが主要プレイヤーとなった2011年の世界です。先日書いた「インターネットの普及フェーズと技術フェーズの差」というエントリーはサービス事業者の目線について考えたものですが、これはサービス利用者の目線から捉えると、「インターネットの普及フェーズと利用サービスのトレンドの差」とも言い換えることができるでしょう。


[Summary]
“Penn Olson” news article reports a huge potential of social commerce and many foreign companies are aiming to enjoy the growth. This situation is much understandable when glancing over a likelihood that Indonesian nationwide fibre-optic network project, Papala Ring Project, will be successfully completed by June 2011 as the authority’s announcement, and over quite a high penetration rate of Facebook against a still low rate of internet penetration as Edelman Digital recently reported. All that matters is that we must think users in emerging markets are naturally using up-to-date services, the same as users in developed markets do.

Written by shungoarai

5月 28th, 2011 at 2:00 pm

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検索はもっとプッシュ型に?

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無線通信と電気通信分野の標準化や規制を司る国際連合の専門機関・国際電機連合組合(ITU)の統計によれば、2010年の世界のインターネット普及率は30.1%と試算されています(ITU統計サイト)。

100人あたりインターネット利用者数の推移(ITU)

やはり同様に、Internet World Stats (インターネット市場調査会社の Maniwatts 社が運営)でも、2010年末の世界のインターネット普及率を28.7%と試算しているので、だいたい全世界ではいまだ3割くらいの普及に留まっているというのがホール・ピクチャーと言えそうです。そして、ざっくりと分けると先進国では普及率が約7割、新興国では約2割といった具合のようです。

先日の TechCrunch の記事 “A New Era Of Search Is About The Answers, Not Just The Links” は、上記のような事実も踏まえて考えると、よりリアルさが伝わってきます。
米国 Yahoo! の検索サービス関連の上級副社長 Shashi Seth 氏によるこの投稿記事で語られている内容は、「インターネットユーザーの消費するコンテンツの種類は変わったというのに、検索エンジンはいまだほとんどWebページにフォーカスしている。しかし検索エンジンはかなりラディカルに変わろうとしている」というのが主旨ですが、ではどのように変わっていくのだろうかということで触れられているのが、今回の投稿のタイトルに書いたことです。

これまでの検索は、情報やコンテンツをプル型で引き出すメカニズムだったが、Facebook や Twitter のようなソーシャルサイトではプッシュ型で情報やコンテンツを届けてくれる。今日の世界で検索が成功を収めるには、よりプッシュ型になる必要がある。

「検索」という言葉は能動的・主体的なニュアンスを持ちますが、これが「プル型」から「プッシュ型」になるというのは、検索する主体がユーザーから検索エンジンになっていくということを示しているのでしょう。

過去10年以上にわたって、インターネットで何か情報を得るときには、検索ボックスにキーワードをタイプすることが私たちにとって標準的な検索行動でした。しかしこの行動は、これまでインターネットを使ってきたたかだか3割程度の人にとっての「標準的な検索行動」だったと言えるでしょう。
一方、新興国においていまだ2割程度のインターネット普及率が、今後、先進国並みの7割近くまで徐々に引き上げられていくと仮定したとき、それらの差分である人口比5割程度の人々にとっての「標準的な検索行動」は、これまでの私たちにとっての「標準的な検索行動」とはまったく別のものである可能性もあるでしょう。別の機会で詳述しようと思っていますが、これからやってくる新しいインターネットユーザーは、はじめから Facebook や Twitter の存在しているインターネット世界に入ってくるわけです。

このとき、「検索」と「プッシュ型」という両者のニュアンスにいささかの違和感も持ちながら、しかし、これからの検索が Seth 氏の言うようにプッシュ型の情報提供をしてくれるようになっていくことは自然と感じられます。


[Summary]
Yahoo SVP of Search product Shashi Seth’s recent post on TechCrunch said search engine have to change radically along with the change of people’s information consuming style. Same as social media, Seth thinks search engine should be a more push mechanism.
In developing countries, internet penetration still remains around 30% and is growing. We have to pay attention to the fact that new comers from developing countries comes into this current internet environment, not the one we once encounter at the beginning. The new comers who take social media being for granted may easily find that the present normal searching style is no longer up-to-date.

Written by shungoarai

5月 10th, 2011 at 6:00 am

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インターネットの普及フェーズと技術フェーズの差

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中国のインターネット産業に関するニュースメディア TechNode が今週掲載したインタビュー記事は非常に興味深いものでした。インタビュー相手は、中国で2600万人の会員を抱える婚活サイト珍愛網(Zhenai)や、Foursquareに似たロケーションベースサービス(LBS)の嘀咕網(Digu)の創業者である李松(Dr. Song LI)氏です(インタビュー記事)。

この短いインタビュー記事では、投資銀行勤務から起業家に転じた李松氏のアントレプレナーシップにフォーカスが当てられていますが、途中からは彼の目から見たサービスの展望などが語られます。

「今後10年間ではモバイル領域における機会がさらに増えることでしょう。私は『ソーシャル』、『ローカル』、『モバイル』という3つのキーワードにフォーカスをしています」

「『チェックイン』は、標準的な機能になっていくと思います。そこでキーとなるのは、ロケーションをもとにしてソーシャルな交流を強めるような機能を開発することにあり、それは容易なことではありません。近くにいる人とソーシャルな関係を築く理由を与えられるかどうかが問題です」。李氏は、拡張現実がLBSに加えられていくことも確信している。

至極当然のことなのですがあらためてここで気づかされるのは、新規サービスを作るうえで起業家・開発者が念頭に入れているトピックは、各国間のインターネットの普及率の差などといったものとは独立しているという事実です。ある市場において、インターネットの普及がどのフェーズにあるかと、そこで提供されるサービスのテクノロジーがどのフェーズにあるかは、必ずしも一致しません。これは同時に、先進市場において成功をしているサービスをそのまま別の市場にローカライズすることの困難さをも示しているようにも思います。


[Summary]
Interview with the founder of Digu, a leading Chinese LBS, shows us that entrepreneurs and developers are taking notice of same kinds of topics, such as “mobile”, “local”, “social” and etc. , independently of developed countries or developing countries. There must be a gap between the internet penetration phase in certain market and the technological phase in that market.

Written by shungoarai

5月 8th, 2011 at 6:00 pm

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