2016-11-22(Tue)
「活断層で地震が起きる」という神話の上に建つ原子力発電所
今朝は、あわてて避難した人、そうでなくともテレビをつけて青くなった人、日本中がてんやわんやで始まった。
私は大阪だから揺れも感じなかったけれども、テレビのチャンネルを次々回して、1時間ほど釘付けになっていた。
普段、耐震診断やら構造計算やらをしていると、居酒屋のメニューの地鶏すら地震に見えてしまうくらいで、こういうことがあると他のことが考えられなくなる。
今朝の地震は、海底でおきたけれども、大震災のときのようなプレート型ではなく、プレートの内部でおきる直下型のタイプだったようだ。それが、たまたま陸の下ではなく海水の下だった、ということだ。
2005年の福岡県北西沖、2007年の中越沖や能登半島沖の地震もこういうタイプだ。
マグニチュード7.4ということだから、東日本大震災のマグニチュード9.0と比べると、そのエネルギーは約250分の1ということになる。
それでも、柏崎刈羽原発を危機一髪の状況に陥れた中越沖にくらべると、なんと8倍ものエネルギーだから、あと60km陸地に近かったら、日本は破滅していたかもしれない。
本当に薄氷を踏むような、ある意味では幸運だったともいえる。
■■
さて、そもとも原発は活断層の上に建ててはいけない、ということになっていた。
そのために、旧来の原子力安全委員会やらは、なんとかして「これは活断層じゃない」という判定書を作りだし、それ専用の大学教授などもいたりした。
(参考記事 「ようやく「活断層カッター」と呼ばる「衣笠善博」が表舞台に」)
しかし、3.11以降はさすがに活断層カッターであるものを無いと言いくるめるのは難しくなり、いまある原発の下に活断層がないかどうか、再検査することになった。これは破砕帯であって活断層じゃないとか、専門用語をならべてあれやこれやと議論をしている。その結果現段階では、東通(青森)、敦賀(福井)、志賀(石川)には活断層があるという判定になった。
活断層カッターのペテンがバレてしまったのだ。
ところが、実は活断層の真上でした、ということが判明したら、規制委員会はなんと「参考意見」と言い始めた。
原子力村の連中に至っては、
たかがアドバイザーが活断層の「ある」「ない」を判断することで、追加の安全対策に膨大な費用と時間を費やしたり、場合によっては廃炉に追い込まれたりしてしまうことは、法律に根拠がなく、行政権の濫用だ
とまで言い出す始末。
この後に及んで なにが何でも「活断層じゃない」と言い張る電力会社も凄まじいが、活断層であったとしても「補強すればOK」と言う規制委員会もたいした度胸だ。
<東通原発>「活断層」前提に審査
2015年11月28日 河北新報
活断層の真上にあるものを、いくら補強してもダメなんじゃないの、とは誰しも思う。
揺れというよりも、断層をはさんで右と左の地面の位置が何十センチも移動するのだから、股裂きになったり片足だけガクンと低くなったりするわけで、耐震補強でどうにかなるものではない。建物をいくら補強しても、建物ごと転けたらどうするんだ。
例え建物が無事だったとしても、延々とつながれた配管が無事で済むわけがない。
そんなあたりまえのことをすら、専門用語を駆使して誤魔化しきろうとするのが、原子力規制委員会だ。
そして、原子力規制委員会がそこまで無茶を言うのには、ワケがある。
活断層があろうがなかろうが、じつはあまり違いが無いことが、ハッキリしてしまったからだ。
あっても大丈夫なのではなくて、無くても大地震は起きる ということだ。
活断層というのは、過去の大地震による断層が地表面で確認できるもののこと。
つまり、地震の巣があったとしても、そこそこ土に埋もれていたら活断層かどうかは分からない。
ボーリング調査は普通は数10m程度で、頑張っても200mくらい。
バイブロサイスという人工地震装置で測定すると10数kmまでは調査できるらしいが、超固いプレートの中までは無理。
だから、今回のようなプレートの中でバキッといくタイプの地震は、仮に兆候があったとしても人間にはわからない。
こちらのサイトは、産総研の活断層データベース(図をクリックするとリンクします)
凡例の中の「主な被害地震(1923年以降) 」にチェックを入れると、大地震の震源が表示され、地図は移動させて日本中を確認することができる。四角や丸をクリックすると、震源の情報が表示される。
データは2013年まで(四角)と2週間以内(丸)なので、熊本や鳥取は表示されないが、それでもいかに「活断層以外でおきている大地震が多いか」がよくわかる。活断層に近いものの結構ズレていたり、付近にまったく見当たらないのも珍しくない。
ちなみに、海中で深さが数10kmとかあるのはプレート型と考えられるので、今問題にしている活断層とは話が別になる。
だから、もちろん明らかに活断層のうえに原発を建てるのは論外だけれども、無いところでもリスクはあまり変わらないということ。
同じくらい危ない。
それが分かってしまったから、もう規制委員会もやけくそで、活断層の上でも対策をすれば大丈夫、などと言い始めているのだ。
■■
ただし、この信じがたいモラルハザードは、原子力村だけのことではない。
「地球の破滅よりも、会社をクビになることの方が怖い」
これは、この世の真理といっても良いかもしれない。
社長でも雇われだったり株主や社員への責任があったり、重役から平社員までが責任のなすりつけあいで成り立っている会社とか役所という組織では、間接的に「地球の破滅」に手を貸すことよりも、直接的に「会社が倒産する」とか「自分がクビになる」ことのほうが恐ろしい。
このことを理解しないと、原発は止まらないし、脱原発運動は実効性をもたない。
福島第一原発の沖合60キロで直下型地震が起きたことに、ヒヤッとしない人はいない。
けれども、そのことを口にして会社で冷や飯を食うことの方が、背筋が凍る。
その両面を認識して、どうやって進めていくべきなのか、考えなくてはならないだろう。
■■お知らせ
自由党大阪府連大会
11月26日(土)14時から
大阪市立社会福祉センター(上本町)
小沢一郎共同代表も登場
大阪府以外の方や、党員サポーター以外もオブザーバ参加できます
詳しくは → https://www.facebook.com/events/328157494223706/
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私は大阪だから揺れも感じなかったけれども、テレビのチャンネルを次々回して、1時間ほど釘付けになっていた。
普段、耐震診断やら構造計算やらをしていると、居酒屋のメニューの地鶏すら地震に見えてしまうくらいで、こういうことがあると他のことが考えられなくなる。
今朝の地震は、海底でおきたけれども、大震災のときのようなプレート型ではなく、プレートの内部でおきる直下型のタイプだったようだ。それが、たまたま陸の下ではなく海水の下だった、ということだ。
2005年の福岡県北西沖、2007年の中越沖や能登半島沖の地震もこういうタイプだ。
マグニチュード7.4ということだから、東日本大震災のマグニチュード9.0と比べると、そのエネルギーは約250分の1ということになる。
それでも、柏崎刈羽原発を危機一髪の状況に陥れた中越沖にくらべると、なんと8倍ものエネルギーだから、あと60km陸地に近かったら、日本は破滅していたかもしれない。
本当に薄氷を踏むような、ある意味では幸運だったともいえる。
■■
さて、そもとも原発は活断層の上に建ててはいけない、ということになっていた。
そのために、旧来の原子力安全委員会やらは、なんとかして「これは活断層じゃない」という判定書を作りだし、それ専用の大学教授などもいたりした。
(参考記事 「ようやく「活断層カッター」と呼ばる「衣笠善博」が表舞台に」)
しかし、3.11以降はさすがに活断層カッターであるものを無いと言いくるめるのは難しくなり、いまある原発の下に活断層がないかどうか、再検査することになった。これは破砕帯であって活断層じゃないとか、専門用語をならべてあれやこれやと議論をしている。その結果現段階では、東通(青森)、敦賀(福井)、志賀(石川)には活断層があるという判定になった。
活断層カッターのペテンがバレてしまったのだ。
ところが、実は活断層の真上でした、ということが判明したら、規制委員会はなんと「参考意見」と言い始めた。
原子力村の連中に至っては、
たかがアドバイザーが活断層の「ある」「ない」を判断することで、追加の安全対策に膨大な費用と時間を費やしたり、場合によっては廃炉に追い込まれたりしてしまうことは、法律に根拠がなく、行政権の濫用だ
とまで言い出す始末。
この後に及んで なにが何でも「活断層じゃない」と言い張る電力会社も凄まじいが、活断層であったとしても「補強すればOK」と言う規制委員会もたいした度胸だ。
<東通原発>「活断層」前提に審査
2015年11月28日 河北新報
活断層の真上にあるものを、いくら補強してもダメなんじゃないの、とは誰しも思う。
揺れというよりも、断層をはさんで右と左の地面の位置が何十センチも移動するのだから、股裂きになったり片足だけガクンと低くなったりするわけで、耐震補強でどうにかなるものではない。建物をいくら補強しても、建物ごと転けたらどうするんだ。
例え建物が無事だったとしても、延々とつながれた配管が無事で済むわけがない。
そんなあたりまえのことをすら、専門用語を駆使して誤魔化しきろうとするのが、原子力規制委員会だ。
そして、原子力規制委員会がそこまで無茶を言うのには、ワケがある。
活断層があろうがなかろうが、じつはあまり違いが無いことが、ハッキリしてしまったからだ。
あっても大丈夫なのではなくて、無くても大地震は起きる ということだ。
活断層というのは、過去の大地震による断層が地表面で確認できるもののこと。
つまり、地震の巣があったとしても、そこそこ土に埋もれていたら活断層かどうかは分からない。
ボーリング調査は普通は数10m程度で、頑張っても200mくらい。
バイブロサイスという人工地震装置で測定すると10数kmまでは調査できるらしいが、超固いプレートの中までは無理。
だから、今回のようなプレートの中でバキッといくタイプの地震は、仮に兆候があったとしても人間にはわからない。
こちらのサイトは、産総研の活断層データベース(図をクリックするとリンクします)
凡例の中の「主な被害地震(1923年以降) 」にチェックを入れると、大地震の震源が表示され、地図は移動させて日本中を確認することができる。四角や丸をクリックすると、震源の情報が表示される。
データは2013年まで(四角)と2週間以内(丸)なので、熊本や鳥取は表示されないが、それでもいかに「活断層以外でおきている大地震が多いか」がよくわかる。活断層に近いものの結構ズレていたり、付近にまったく見当たらないのも珍しくない。
ちなみに、海中で深さが数10kmとかあるのはプレート型と考えられるので、今問題にしている活断層とは話が別になる。
だから、もちろん明らかに活断層のうえに原発を建てるのは論外だけれども、無いところでもリスクはあまり変わらないということ。
同じくらい危ない。
それが分かってしまったから、もう規制委員会もやけくそで、活断層の上でも対策をすれば大丈夫、などと言い始めているのだ。
■■
ただし、この信じがたいモラルハザードは、原子力村だけのことではない。
「地球の破滅よりも、会社をクビになることの方が怖い」
これは、この世の真理といっても良いかもしれない。
社長でも雇われだったり株主や社員への責任があったり、重役から平社員までが責任のなすりつけあいで成り立っている会社とか役所という組織では、間接的に「地球の破滅」に手を貸すことよりも、直接的に「会社が倒産する」とか「自分がクビになる」ことのほうが恐ろしい。
このことを理解しないと、原発は止まらないし、脱原発運動は実効性をもたない。
福島第一原発の沖合60キロで直下型地震が起きたことに、ヒヤッとしない人はいない。
けれども、そのことを口にして会社で冷や飯を食うことの方が、背筋が凍る。
その両面を認識して、どうやって進めていくべきなのか、考えなくてはならないだろう。
■■お知らせ
自由党大阪府連大会
11月26日(土)14時から
大阪市立社会福祉センター(上本町)
小沢一郎共同代表も登場
大阪府以外の方や、党員サポーター以外もオブザーバ参加できます
詳しくは → https://www.facebook.com/events/328157494223706/
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