この作品、小説新潮に連載されていたときから、気になっていたのです。
「花宵道中」で「女による女のためのR-18文学賞」の大賞と読者賞を同時受賞し、デビューした宮木あや子。
宮木あや子作品のテーマは一貫して「閉塞された世界での恋」かと思います。
なので、細川ガラシャは宮木あや子作品にぴったしではないか!とわくわくしておりました。
「逆臣の娘」「味土野での幽閉生活」「忠興の執着」「宗教の弾圧」
この閉塞っぷり!うひょー!萌える!!
という、萌え重視で読んだ作品なので、多少の歴史的矛盾は気にしない。
気にしないというか、気にならない。
歴史的矛盾が気にならないっていうことは、著者が優れた筆力を持っているからです。
大事なのは、読者に
「そういうこともあるかもね~」
と、思わせてしまうことです。
わたしのような、日本史を専門に学んだことの無いド素人でさえ「無い無い無い」と思ってしまう、今年の大河とかおととしの大河とかは、
三角コーナーにポイッですわwww
しかしながら、宮木あや子作品はあくまでも「恋」がテーマですので、歴史上の人物の生き様を真面目に読みたい方にはオススメしません。
恋を知らぬまま細川忠興に嫁いだ玉子。
男たちが戦いを重ねる間、玉子はただ年を重ね、二人の子の母となった。
忠興の自分への執着は恋なのか?
自分が抱く忠興への愛しさは恋なのか?
わからぬままに、やがて運命の日は訪れ、玉子は山深い未開の地へと幽閉された。
そこで、玉子は胸が潰れるほどの思いをする。
結ばれることのない恋。
ならば、何故出会わせた?
玉子、玉子に仕える侍女・清原マリア、父・明智光秀、夫・細川忠興、舅・細川幽斎、義弟・細川興元、そしてもうひとり・・・。
男女七人の恋は、決して叶うことはない。
「恋愛小説」です。
なので、「とんでも設定」があります。
でも、感情の揺れとしては、あるかもしれないのよ。
だって、誰も知らないことなんだから。
細川ガラシャは幽閉された味土野でどんな生活を送っていたのだろう?と考えたことがありました。
某大河で、侍女と二人きりの生活描写とかありましたが、それはありえないし。
奥深い山の中と言っても、ひとは住んでいただろうし。
そういう細かい描写がこの作品にはあるので、「とんでも設定」が受け入れられるのです。
さて、細川ガラシャという女性は、玲瓏玉の如き美女で、そのうえ聡明というのが通説です。
で、歴史的資料によりますと、大変気位が高く、激しやすかったらしい。
彼女が穏やかで包容力のある女性になったのは、改宗後ということです。
この作品のガラシャは、とても自己中心的に感じます。
美人で聡明なんですから、自己中心的で許されるのです
さて、この時代の女性といえば、相手の顔も知らず嫁ぐのは当たり前です。
なんか、今年の大河なんて、戦国時代なのに想う相手と結ばれる恋愛至上主義とかアホか?と思います。
顔も知らない相手に嫁ぎ、その相手に妻として尽くし、大きなものを築きあげた女性が大勢いる時代なんですよ。
その女性たちに、まったく敬意を払っていない、今年の大河「江」はダサクです。
ガラシャこと玉さんだって同じことで、旦那に恋していたかというと違う。
しかし、一緒に暮らし、子まで生せば、それなりに思慕の情というのは湧いてくるもの。
しかも旦那は自分にぞっこんなんですから。
彼女が恋を知らずに結婚したからって、当時の価値観からすれば、不幸じゃない。
不幸なのは、彼女の父・光秀が主殺しという大罪を犯したからですよ。
その時、彼女は悲哀よりも混乱のなかにいたはずです。
アイデンティティーの崩壊です。
そのまま、幽閉生活へと。
混乱から絶望へ。
その生活の末、彼女に「決定的な出来事」が起きた、とすると?
それが「恋」だったとすると?
「恋」から「信仰」へのシフトチェンジも、なかなか納得できるように描かれています。
味土野から細川家に戻った玉と、彼女と離れているのが耐えがたかった忠興との間の亀裂が、さらなる絶望を生みます。
「植木職人を斬った」「侍女の鼻を削いだ」などと、残酷な逸話の残る忠興ですからね。
この夫婦、ベクトル違いで似たもの夫婦だったんですな。
つくづく思いますわ。
二人とも激しすぎる。
芸術に造形深く、利休七哲にも数えられる趣味人でありながら、戦場においては勇猛果敢と名高い細川忠興。
その忠興が異様なまでの執着で愛した、明智光秀の娘。
夫をどこか冷ややかに見つめ、当てつけるように信仰に入り込んでいく玉。
その玉を見守る男。
その男を想う女。
この小説は数人の男女が抱え込む感情を読むものであって、深い設定とか突っ込んじゃだめです。
でも、今年の大河よりはずっとしっかりした歴史背景を持ってますよ。
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そしてここへのコメントではお久しぶりです。
>なんか、今年の大河なんて、戦国時代なのに想う相手と結ばれる恋愛至上主義とかアホか?と思います。
あーもうホントですね。
現代とは異なる価値観でも、視聴者を納得させられる説得力のある大河ドラマって
もう見られないんですかね…。
「とんでも設定」が何なのか気になりますが、私も内容がしっかりある小説なら細かいことは気にしないので、また今度読みますね。
その頃までには自分のブログも復活させたいのですが…。
今年の大河はですね~
せっかく江を描くなら、もっと、もっとこう~~~!!!
わたしも細かいことはわりと気にしないのですが(小説やドラマ)、今年ばかりは腹に据えかねています。
今年の大河は、ガラシャの死の場面にも江がでしゃばってきそうでイヤんです。
師匠のブログ復活、待ってます。