安倍首相 増税先送りの布石
安倍晋三首相が26日の主要国首脳会議で唐突に示した「参考データ」として、2008年のリーマン・ショック前 後と現在の経済指標を比較したグラフをずらりと並べて類似点を指摘、「政策対応を誤ると通常の景気循環を超えて危機に陥るリスクがある」と警告したが違和 感を指摘する声もあがった。
参考データなどは、見方によりどうにでも脚色できる。今回、参考データを持ち出したのは、消費税増税延期をG7国首脳らに理解してもらいたかったと見られる。
安倍首相は、来年4月からの消費税増税については当初から、リーマン・ショックのような事態か、東日本大震災のような天変地変が生じない限り、延期はしないと断言していた。
ところが、4月14日東日本大震災のような熊本大地震が発生し、いまだ余震が続いている。
一方、リーマン・ショックのような世界経済の事態は、参考データを並べ立て、そうした事態だと内外に発信したものと見られる。
ただ、リーマン・ショックは単に信用バブルが大きく弾けただけ、欧米各国はその修復に、銀行規制、ヘッジファンド規制、ファンド規制、タックスへイブンの監視強化など金融問題を取り上げ続けており、その成果も上がってきている。
今の米国を除く世界経済の軟調は、しいて言えば、欧州経済の長期低迷により、輸出が健全に拡大しないまま、中国の内需拡大策により国内がバブル化してしまい、その収拾過程でその成長が鈍化していることにある。
その前兆は欧州とも関係が深いBrics諸国の経済低迷として表れていた。また、欧州経済の低迷=中国経済の成長鈍化が、東南アジア経済の低迷へと連鎖し、経済の拡大規模が超スローになっていることにある。
最近は中国経済が回復してきているという見方もあるが、経済指数には一向に表れていない。株価指数も2800ポイント前後(上海総合指数)と3000ポイントすら割り込んだままとなっている(5月26日:2,822.44P)。金融政策に敏感に反応し先の経済を読み解く中国の投資家たちが買い増ししていないことを示している。
実体経済の面からは上記のとおりであるが、世界経済の低迷、原油価格の暴落、為替問題など、実際の経済ではそうしたことが複雑に絡み合って今日の世界経済がある。
裏を返せば、アメリカが狙っているとおりかもしれない。為替で反米政策の動きの南米を牽制し、経済制裁によりロシア経済を崩壊させた。中国市場も米のヘッジファンドなどにより、国力を調整させているとも捉えられる。
基軸通貨であるドルの為替変動を用いたオバマ政策、軍事的な戦争は忌避しても、金融・経済戦争を好んで仕掛けているとも読める。
安倍首相にとって、消費税増税を延期せざるを得ない状況の2つの出来事が同時に進行しており、増税を延長せざるを得ないと結論付けたものと見られる。
麻生閣下はそうした延期論に対して、その立場上、蔵相サミットにおいて、延期しない方針を打ち出し楔を打ったが、麻生閣下に引き摺られるような安倍首相ではない。
だが、増税を延期したところで、日本経済、特にGDPの6割を占める消費が上向く保証もない。昨年から賃金上昇を首相自らはかったものの、企業利益の源泉であった円安は円高に振れ、利益もピークアウトとしてしまった。そうした発言もトーンダウンしている。実質賃金はほとんど上がらぬまま、円安の弊害である物価高により消費は縮小したままとなっている。その打開策とその効果が今求められている。日本経済が萎縮すれば円高はさらに進行する。
・・・消費減退を招く消費税増税を延期させるものと見られる。
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