この映画を見たきっかけは、たまたま知り合った韓国人の人と映画の話になり、日本の映画だと黒沢清が好きだと言っていて、僕は黒沢清の映画を全然見たことがないから「おすすめは?」と聞いたら「CURE」と言っていた。
近年映画と言えば、というかカルチャーの本流は韓国にあるような気がして、韓国映画のおすすめも聞いてみたかった。僕は韓国映画だとイ・チャンドンの「バーニング」が面白かった。エンタメ映画は「新感染」とか「オールド・ボーイ」ぐらいしか見ていない。そんなにハマらなかったから、シリアスな映画でおすすめはないか聞いた。
「バーニング」が好きなら、イ・チャンドンは全部良い。と勧められた。「どれから見ればいい?」と聞いたら「ペパーミント・キャンディー」と返ってきた。「でも歴史の話だから、わからないかもしれない」ということだった。韓国の近現代史が舞台になっている。
見てみた。歴史、というよりは1980年から1999年にかけての時事ネタに沿って物語が展開していく。僕は韓国の現代史を全く知らないけど、名前だけ聞いたことある光州事件や、最後はアジア通貨危機の影響かなと思う。
時代に翻弄された、一人の人間が壊れていく様子を描いた作品なのかな。時代の流れに打ち勝てなかったというか、流されてしまったというか。きっと当時の現実に則した、かなりリアリスティックな映画なのだろう。韓国社会がいかにハードだったかがわかる。光州事件の周辺は言うまでもないけど、その後も警察がめちゃくちゃ暴力的だったりとか。組織が雑なんだろうや。
人間が壊れていくのは、いろんなトラウマを抱えてということなんだけど、この作品ではそれが暴力だった。ある意味帰還兵モノ、PTSDモノと言っていい。優しかった手は血と糞尿にまみれ、月日とともに人生を失っていく様。例えばそういう人間にも、もし人間同士の愛がうまく作用していたら、失わずに済んだのかもしれない。そういうことを匂わせる作品でもあった。つらいときに支え合える人間がいて、自分がなんとか保っていたところもあるだろうから。
映画のタイトルは「ペパーミント・キャンディー」だけど、「ハッカ飴」でいいんじゃないか。英語タイトルの雰囲気は全然なく、どちらかというといなたい映画だったと思う。