2025/01/06
資料紹介 ― 学校文集・1
2023年8月20日に書いた「学校文集の続き物【古書目録15】」という記事において、私は以下のように述べた。
古書市において、各学校が発行していた文集の類をよく拾う。
特に1937年~1945年頃に刊行されたもの。主な目的は戦争絡みの消息や文章であるが、それに加えて戦時中の児童・生徒が日常をどのように過ごし、また世界を見ているか伺い知れるのがよい。
最近、このあたりの嗜好が変わりつつある。
もちろん戦中刊行の文集も面白い。だが切り取られる社会の多様さ、文章の多彩さという意味で、戦後のものもまた格別ではなかろうか、と。
まずは以前古本小ネタ集でも載せたこちら。
興安丸
ソ連から興安丸が
帰つてくる
パチンコも
パンパンも
てつきんアパートも
まだ見たことのない人を
のせた船があした
まいづるにつく
実はパンパンを扱った詩が他にも載っている。
パンパン
パンパンが前を歩いている。
私はパンパンを見て歩いた
パンパンは
乞食にお金をやった。
乞食で繋げるとこういう詩も。
できた家
てつきんコンクリートができる
こじきの人 家がないのに
はいつたらええのに
思つたけど
お金のぎようさんある人が
はいる。
安立小学校の所在地は大阪湾に面した大阪市住之江区、1945年の大阪大空襲で被災した地域らしい。終戦から8年が過ぎているが、まだ街には「パンパン」や「乞食」が多く目についたのだろう。
そう言えば小学生だか中学校の時の遠足で行った上野公園において、軒を連ねたブルーシートハウスを見た時は衝撃を受けたなあと思い出すなど。学校行事だから作文的なのを書かされたと思うけど、誰かあのブルーシートについて書いた子はいたのだろうか。
学校での作文には教員による”検閲”が入る。
その”検閲”のレベルに関しては時代・地域・学校・担当教員個人の匙加減など、様々な要素が絡んでくる。
このあたりのあれこれは題材として面白いと思うのだが、論文・論考まで高めるのは至難の業だろうなあ。教員にアンケートを取るにせよ、文集を収集して具体例を挙げるにせよ、恣意的な選択に陥りそう。
どなたか上手い事なんとかしてくれんだろうか、というINT3丸出しな願望を書いてみる。
今後も学校文集は面白そうなものを見つけ次第紹介できればと思っている。もちろん思っているだけなので、実行するかは未来の古書ニザワにご期待ください。