フランク・ペーター・ツィンマーマン ~ バッハ/無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ Vol.1
2022, 01. 25 (Tue) 00:00
BISサイトの試聴ファイルで全曲聴いた感触が凄く良かったので、すぐに購入したフランク・ペーター・ツィンマーマンの新譜『バッハ/無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ Vol.1』。
CDを買う気になった最大の理由は、ツィンマーマンの弾くヴァイオリンの音の美しさと軽快ながらも起伏に富んだ歌い回しがとても心地良いこと、それに「アンダンテ」と「シャコンヌ」の演奏に惹かれたから。
ちょっと気になっているカヴァコスのバッハ無伴奏(2月発売予定)の「ルーレ」と諏訪内晶子の新譜を試聴ファイルで聴き比べたら、ヴァイオリンの音色・ソノリティの要素(線の太さ、力感、弾力、柔らかさ、減衰、色彩感、軽やかさ、切れ)とアーティキュレーションの両方で、一番好きなのが「レディ・インチクイン」を弾いているツィンマーマンだった。
※プラケースではなく見開き2面の紙ケースで、CDは薄い白紙カバーに入っている。紙ケースの厚みが薄く、糊付けも不十分で一部剥がれている。装丁はシックなのは良いけど、薄くて出来の悪い紙ケースよりも、普通のプラケースかデジパックにして欲しかった。
録音場所は、《ソナタ第2番》と《パルティータ第2番》が独ホンラート福音主義教会(2020年6月8-12日)、《パルティータ第3番》がストックホルム・コンサートホール(2021年3月27&28日)。
教会とコンサートホールでは音響が大きく違う。教会録音は響きがまろやかで、残響が短く、フレーズ末尾の減衰音が絹糸のように細く軽やです~っと空間に溶けていくような感じ。コンサートホール録音は、残響が長めで伸びやかに鳴り響き、音の弾力と力感が強く、艶と輝きがある。コンチェルトならこちらの方が聴きやすい音になると思う。
バッハの無伴奏なら教会録音の方が落ち着いた深みと色彩感が感じられて、ヴァイオリンの音(と演奏)が美しい。
普通は3曲とも同じ教会で録音すると思うけど、《パルティータ第3番》だけストックホルムのコンサートホールで録音した理由がわからない(ブックレットには特に言及なし)。日程的に元々そういう計画だったのか、それとも、3曲目の録音時にドイツ国内で外出規制や教会の使用規制がかかってしまい、規制の緩いスウェーデンで録音することにしたのだろうか。
教会で録音した「レディ・インチクイン」の音色は色彩感も美しく音もまろやかで上品。シルクのような品の良い光沢ときりっと引き締まった張りもあり、尖りが少なくまろやかで、特に中音~低音域に深みがある。音が単線的ではなく複数の糸を編んだような膨らみが感じられ、低音と中~高音の音色の質感がかなり違うのでくっきりとした立体感のあるのがとても好き、太目の低音には重心の低い安定感があり、フレージングが曲線のように滑らか。
緩徐系楽章は(普通に)ゆったりしたテンポで、急速系の楽章のテンポはかなり速いので、緩徐系楽章とのコントラストが強く、テンポの速さと軽快で切れの良い音が颯爽として目が覚めるように鮮やか。曲中の強弱の落差も大きくてメリハリついて、音色の色彩感の違いも加わって、表情の彫も深い。短調の悲愴感や緊張感は抑え気味で、全体的に包容力のある懐の深さが感じられるところが、私の好みに合っているのかもしれない。
ツィンマーマンが演奏会のアルコールによく弾いている《パルティータ第2番》第3楽章アンダンテ。やや速めのテンポでリズミカル。アンコールで弾く時はリピートでも装飾せずにシンプルに弾いているけど、この録音ではかなり込み入った装飾音で弾いている。装飾音というよりは旋律そのものの音を増やしていると言った方が良いかも。シンプルな演奏も好きだけど、リピートが何度かあるので単調さを感じなくもなかったので、このオリジナルな装飾音の演奏はとっても面白くて聴き飽きない。
Violin Sonata No. 2 in A Minor, BWV 1003: III. Andante
シャコンヌはいつもブゾーニ編曲版の荘重華麗なピアノの響きで聴いているので、静謐な教会のなかに響きわたるヴァイオリンで聴くのは全く別の曲だと改めてよくわかった。昔はスークを聴いていて、さっきハーンと諏訪内晶子(コンクール時と新譜)のシャコンヌを聴いたけど、ツィンマーマンの音と歌いし回しは粘りが少なく、軽やかさと切れの良さもあり、力感・圧力感・情感が強すぎず私にはちょうど良い。透明感のある音色が明るく清々しい。中盤以降の長調に移ると軽やかで明るい響きが和やかで明るく、オリジナルな装飾音も加えた自由な伸びやかさのある開放感が爽やか。
演奏時間は若い頃のライブ映像とあまり変わらない。でも、ヴァイオリンが違うので音色が違うのはのはもちろん、今回の録音では力を込めすぎず軽やかで、フレージングもしなやか。強弱と硬軟の落差も大きく、表情も細やかになっている。ルバートを多用して音を引き伸ばしたり、時々オリジナルな装飾音(というか違う旋律)を弾いたり(気が付いたのは、5:02、10:06、10:13、10:26)、昔よりも自由で開放感のある演奏になっていると思う。Vol.1の演奏がとっても気に入ったので、未録音の3曲(Vol.2)も早く聴きたい。
Violin Partita No. 2 in D Minor, BWV 1004: V. Chaconne
他に好きな楽章は、《ソナタ第2番》「フーガ」と《パルティータ第2番》「クーラント」と「ジーグ」、次いで、《ソナタ第2番》「アレグロ」と《パルティータ第3番》《プレリュード》。(ジャンルや作曲家に関係なく、もともとテンポの速い曲(とフーガ)が好きなので)
Violin Sonata No. 2 in A Minor, BWV 1003: II. Fuga
Violin Partita No. 2 in D Minor, BWV 1004: II. Courante
Violin Partita No. 2 in D Minor, BWV 1004: IV. Gigue
※右カラム中段の「タグリスト」でタグ検索できます。
CDを買う気になった最大の理由は、ツィンマーマンの弾くヴァイオリンの音の美しさと軽快ながらも起伏に富んだ歌い回しがとても心地良いこと、それに「アンダンテ」と「シャコンヌ」の演奏に惹かれたから。
ちょっと気になっているカヴァコスのバッハ無伴奏(2月発売予定)の「ルーレ」と諏訪内晶子の新譜を試聴ファイルで聴き比べたら、ヴァイオリンの音色・ソノリティの要素(線の太さ、力感、弾力、柔らかさ、減衰、色彩感、軽やかさ、切れ)とアーティキュレーションの両方で、一番好きなのが「レディ・インチクイン」を弾いているツィンマーマンだった。
バッハ : 無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第2番、パルティータ第2番&第3番 (2021年12月28日) フランク・ペーター・ツィンマーマン 試聴ファイル(BIS) |
録音場所は、《ソナタ第2番》と《パルティータ第2番》が独ホンラート福音主義教会(2020年6月8-12日)、《パルティータ第3番》がストックホルム・コンサートホール(2021年3月27&28日)。
教会とコンサートホールでは音響が大きく違う。教会録音は響きがまろやかで、残響が短く、フレーズ末尾の減衰音が絹糸のように細く軽やです~っと空間に溶けていくような感じ。コンサートホール録音は、残響が長めで伸びやかに鳴り響き、音の弾力と力感が強く、艶と輝きがある。コンチェルトならこちらの方が聴きやすい音になると思う。
バッハの無伴奏なら教会録音の方が落ち着いた深みと色彩感が感じられて、ヴァイオリンの音(と演奏)が美しい。
普通は3曲とも同じ教会で録音すると思うけど、《パルティータ第3番》だけストックホルムのコンサートホールで録音した理由がわからない(ブックレットには特に言及なし)。日程的に元々そういう計画だったのか、それとも、3曲目の録音時にドイツ国内で外出規制や教会の使用規制がかかってしまい、規制の緩いスウェーデンで録音することにしたのだろうか。
教会で録音した「レディ・インチクイン」の音色は色彩感も美しく音もまろやかで上品。シルクのような品の良い光沢ときりっと引き締まった張りもあり、尖りが少なくまろやかで、特に中音~低音域に深みがある。音が単線的ではなく複数の糸を編んだような膨らみが感じられ、低音と中~高音の音色の質感がかなり違うのでくっきりとした立体感のあるのがとても好き、太目の低音には重心の低い安定感があり、フレージングが曲線のように滑らか。
緩徐系楽章は(普通に)ゆったりしたテンポで、急速系の楽章のテンポはかなり速いので、緩徐系楽章とのコントラストが強く、テンポの速さと軽快で切れの良い音が颯爽として目が覚めるように鮮やか。曲中の強弱の落差も大きくてメリハリついて、音色の色彩感の違いも加わって、表情の彫も深い。短調の悲愴感や緊張感は抑え気味で、全体的に包容力のある懐の深さが感じられるところが、私の好みに合っているのかもしれない。
ツィンマーマンが演奏会のアルコールによく弾いている《パルティータ第2番》第3楽章アンダンテ。やや速めのテンポでリズミカル。アンコールで弾く時はリピートでも装飾せずにシンプルに弾いているけど、この録音ではかなり込み入った装飾音で弾いている。装飾音というよりは旋律そのものの音を増やしていると言った方が良いかも。シンプルな演奏も好きだけど、リピートが何度かあるので単調さを感じなくもなかったので、このオリジナルな装飾音の演奏はとっても面白くて聴き飽きない。
Violin Sonata No. 2 in A Minor, BWV 1003: III. Andante
シャコンヌはいつもブゾーニ編曲版の荘重華麗なピアノの響きで聴いているので、静謐な教会のなかに響きわたるヴァイオリンで聴くのは全く別の曲だと改めてよくわかった。昔はスークを聴いていて、さっきハーンと諏訪内晶子(コンクール時と新譜)のシャコンヌを聴いたけど、ツィンマーマンの音と歌いし回しは粘りが少なく、軽やかさと切れの良さもあり、力感・圧力感・情感が強すぎず私にはちょうど良い。透明感のある音色が明るく清々しい。中盤以降の長調に移ると軽やかで明るい響きが和やかで明るく、オリジナルな装飾音も加えた自由な伸びやかさのある開放感が爽やか。
演奏時間は若い頃のライブ映像とあまり変わらない。でも、ヴァイオリンが違うので音色が違うのはのはもちろん、今回の録音では力を込めすぎず軽やかで、フレージングもしなやか。強弱と硬軟の落差も大きく、表情も細やかになっている。ルバートを多用して音を引き伸ばしたり、時々オリジナルな装飾音(というか違う旋律)を弾いたり(気が付いたのは、5:02、10:06、10:13、10:26)、昔よりも自由で開放感のある演奏になっていると思う。Vol.1の演奏がとっても気に入ったので、未録音の3曲(Vol.2)も早く聴きたい。
Violin Partita No. 2 in D Minor, BWV 1004: V. Chaconne
他に好きな楽章は、《ソナタ第2番》「フーガ」と《パルティータ第2番》「クーラント」と「ジーグ」、次いで、《ソナタ第2番》「アレグロ」と《パルティータ第3番》《プレリュード》。(ジャンルや作曲家に関係なく、もともとテンポの速い曲(とフーガ)が好きなので)
Violin Sonata No. 2 in A Minor, BWV 1003: II. Fuga
Violin Partita No. 2 in D Minor, BWV 1004: II. Courante
Violin Partita No. 2 in D Minor, BWV 1004: IV. Gigue