バックハウスの『ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ全集』(モノラル録音)
2014, 10. 08 (Wed) 18:00
今時バックハウスを聴く人は随分少なくなっているだろうけど、古い録音とはいえ、バックハウスのベートーヴェンをいろいろ聴き直していたら、以前よりもはるかに印象が良くなっているし、なぜか昔は聴こえてこなかったものが、聴こえてくる。
バックハウスを聴くときは、ほとんどベートーヴェン。
ステレオ録音のピアノ・ソナタ全集は聴かないので、いつも聴くのはモノラル録音のピアノ・ソナタ全集とライブ録音(こちらはモノラルとステレオの両方)。ステレオ録音のピアノ協奏曲も時たま聴いている。
同じ曲を弾いていても、スタジオ録音とライブ録音ではちょっと違っている。
音質が悪いことを除けばライブ録音の方が勢いと迫力が増して、バックハウスの本領がよく出ていることが多いのでは..という気はする。
度々在庫切れになっているバックハウスのモノラル録音『ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ全集』。
1950年代の古い音源なのに、国内盤なので1万数千円するというお高い価格のまま。
私は分売盤とデジタルファイルで持っていたけれど、また在庫切れにならないうちに購入した。
ステレオ録音の全集は音質もよくて、輸入盤ならモノラル盤の半分以下の価格なので、ステレオ録音の方がよく聴かれているに違いない。
販売元はもうしっかり元はとっただろうから、モノラル盤も廉価盤で出して欲しいものだと思う。
国内盤の分売盤は、「不滅のバックハウス」シリーズとして、何回か再販されている。
直近の再販は2004年版。1997年版もある。
ジャケットは、ブルーの背景にバックハウスの似顔絵が載っているので、すぐわかる。
全2巻で、VOL.1には「悲愴、月光、熱情」。Vol.2には、「ワルトシュタイン、テンペスト、告別」。
輸入盤なら、membranから出ている2枚組がある。
収録曲はピアノ協奏曲第3番(ベーム指揮、1950年録音)、ピアノ・ソナタ6曲(第5・6・12・21・25・30番)。
選曲をみると、初期に発売されたLPレコードと同じらしい。
「ワルトシュタイン」は国内盤の分売盤と重複するけれど、他のピアノ・ソナタは分売盤を探してもなかなか見つからないので、これは結構稀少かも。
スタジオ録音のベートーヴェンには全然惹かれなかったのに、このモノラル録音の輸入盤を聴いて、全集を買う気になったくらい。
モノラル録音の全集盤を買うほどでもなければ、この3種類のCDのうち、聴きたい曲が入っているCDを聴いてみると良いのでは。
バックハウスのモノラル盤ピアノ・ソナタなら、「月光」、「熱情」、「第32番」あたりが有名。
その3曲に加えて、「葬送」、「かっこう」(第25番)、「ワルトシュタイン」は、とても好きな演奏。
標題付きソナタのなかでは、最も有名ではなさそうな「かっこう」は、あのカーネギーホールのリサイタルでも弾いていたから、バックハウスも好きな曲だったのだと思う。
1951年のモノラル録音にしては、かなりクリアな音質。この上なく溌剌とした演奏のなかで、時折弾くアルペジオの響きが思いがけなく綺麗だったのにちょっとびっくり。
Beethoven / Wilhelm Backhaus, 1951: Sonata No. 25 in G Major, Op. 79 - Complete
「ワルトシュタイン」のモノラル録音は、あまり好きな音質ではない。
1959年のライブ録音(Medici Masters盤)の方が音もよく、演奏もライブらしい躍動感と勢いがあるので、こちらを聴くことが多い。
ライブ録音にカップリングされているショパンのエチュードは、ルガーノ・リサイタルのライブ音源。
ショパンらしいかどうかは別として、速いテンポでも一音一音粒立ち良く明瞭で、叙情性に拘ることなく、メカニカル過ぎることもなく、いかにも練習曲らしくて気持ちいい。
今時の技巧派ピアニストの演奏と比べても、技巧的にはそれほど遜色ないのでは。
バックハウスは、SP期の1928年に、世界で初めてエチュード全曲を録音したくらいだし、昔のリサイタルプログラムを見ると、ショパン、ブラームス、リストなどのピアニスティックな曲が並んでいる。
「ハンマークラヴィーア」と第32番は、カーネギーホールのライブ録音がそれぞれ出ている。
両方とも音質はあまり良くない。1956年のライブ録音の方がいくぶんクリアな音はする。
1954年のカーネギー・ホール・リサイタル(DECCA)。「悲愴」「テンペスト」「告別」「かっこう」「第32番ソナタ」を収録。
バックハウスは、アンコールではベートーヴェン以外の曲しか弾かなかったらしい。
1956年のカーネギー・ホール・リサイタル(Profil/Haenssler盤)。「月光」と「ハンマークラヴィーア」のほか、アンコール曲を収録。
音質はそれほど良くないとはいえ(スタジオ録音の方もそんなに良い音ではないし)、「月光」の終楽章は、72歳と言う年齢を感じさせない力強さと勢いがあり、テンション高くて、こちらの方が聴いていてスリリング。
アンコールには、シューベルトの即興曲(これは既発CDには入っていない曲だと思う)、ショパンのエチュード、シューマン「予言の鳥」、それにモーツァルトの「トルコ行進曲」。
和音をいくつか前奏してから、アンコール曲を弾き始めるというバックハウスの流儀がここでも聴ける。
ショパンのエチュードは、とても速いテンポと軽やかなタッチで指回りも非常に良く、技巧的な余裕を感じさせるくらい。
このトルコ行進曲は、音質や弾き方から考えて、たぶんこのライブ録音の音源ではないかと。
スタジオ録音よりも、ライブの方がずっと力強くて勢いも良くて、面白い。
モーツァルトというよりはベートーヴェンみたい。
弾き終わった後、盛大な聴衆の歓声と拍手。当時のリサイタルの雰囲気が伝わってくる。
モーツァルト トルコ行進曲 ヴィルヘルム・バックハウス
※右カラム中段の「タグリスト」でタグ検索できます。
バックハウスを聴くときは、ほとんどベートーヴェン。
ステレオ録音のピアノ・ソナタ全集は聴かないので、いつも聴くのはモノラル録音のピアノ・ソナタ全集とライブ録音(こちらはモノラルとステレオの両方)。ステレオ録音のピアノ協奏曲も時たま聴いている。
同じ曲を弾いていても、スタジオ録音とライブ録音ではちょっと違っている。
音質が悪いことを除けばライブ録音の方が勢いと迫力が増して、バックハウスの本領がよく出ていることが多いのでは..という気はする。
度々在庫切れになっているバックハウスのモノラル録音『ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ全集』。
1950年代の古い音源なのに、国内盤なので1万数千円するというお高い価格のまま。
私は分売盤とデジタルファイルで持っていたけれど、また在庫切れにならないうちに購入した。
ステレオ録音の全集は音質もよくて、輸入盤ならモノラル盤の半分以下の価格なので、ステレオ録音の方がよく聴かれているに違いない。
販売元はもうしっかり元はとっただろうから、モノラル盤も廉価盤で出して欲しいものだと思う。
ベートーヴェン : ピアノ・ソナタ全集 (1994/07/01) バックハウス(ウィルヘルム) 試聴ファイル(曲目リストをクリック) |
国内盤の分売盤は、「不滅のバックハウス」シリーズとして、何回か再販されている。
直近の再販は2004年版。1997年版もある。
ジャケットは、ブルーの背景にバックハウスの似顔絵が載っているので、すぐわかる。
全2巻で、VOL.1には「悲愴、月光、熱情」。Vol.2には、「ワルトシュタイン、テンペスト、告別」。
ベートーヴェン:3大ピアノ・ソナタ集 Vol.1 録音:1952年10月、1954年3月、1952年4月 ジュネーヴ〈モノラル録音〉 (2004/03/24) バックハウス(ヴィルヘルム) 試聴ファイル |
ベートーヴェン:3大ピアノ・ソナタ集 Vol.2 (2004/03/24) バックハウス(ヴィルヘルム) 試聴ファイル |
輸入盤なら、membranから出ている2枚組がある。
収録曲はピアノ協奏曲第3番(ベーム指揮、1950年録音)、ピアノ・ソナタ6曲(第5・6・12・21・25・30番)。
選曲をみると、初期に発売されたLPレコードと同じらしい。
「ワルトシュタイン」は国内盤の分売盤と重複するけれど、他のピアノ・ソナタは分売盤を探してもなかなか見つからないので、これは結構稀少かも。
スタジオ録音のベートーヴェンには全然惹かれなかったのに、このモノラル録音の輸入盤を聴いて、全集を買う気になったくらい。
モノラル録音の全集盤を買うほどでもなければ、この3種類のCDのうち、聴きたい曲が入っているCDを聴いてみると良いのでは。
Beethoven: Piano Concerto 3 () Wilhelm Backhaus 商品詳細を見る |
バックハウスのモノラル盤ピアノ・ソナタなら、「月光」、「熱情」、「第32番」あたりが有名。
その3曲に加えて、「葬送」、「かっこう」(第25番)、「ワルトシュタイン」は、とても好きな演奏。
標題付きソナタのなかでは、最も有名ではなさそうな「かっこう」は、あのカーネギーホールのリサイタルでも弾いていたから、バックハウスも好きな曲だったのだと思う。
1951年のモノラル録音にしては、かなりクリアな音質。この上なく溌剌とした演奏のなかで、時折弾くアルペジオの響きが思いがけなく綺麗だったのにちょっとびっくり。
Beethoven / Wilhelm Backhaus, 1951: Sonata No. 25 in G Major, Op. 79 - Complete
「ワルトシュタイン」のモノラル録音は、あまり好きな音質ではない。
1959年のライブ録音(Medici Masters盤)の方が音もよく、演奏もライブらしい躍動感と勢いがあるので、こちらを聴くことが多い。
ライブ録音にカップリングされているショパンのエチュードは、ルガーノ・リサイタルのライブ音源。
ショパンらしいかどうかは別として、速いテンポでも一音一音粒立ち良く明瞭で、叙情性に拘ることなく、メカニカル過ぎることもなく、いかにも練習曲らしくて気持ちいい。
今時の技巧派ピアニストの演奏と比べても、技巧的にはそれほど遜色ないのでは。
バックハウスは、SP期の1928年に、世界で初めてエチュード全曲を録音したくらいだし、昔のリサイタルプログラムを見ると、ショパン、ブラームス、リストなどのピアニスティックな曲が並んでいる。
バックハウス (2011/03/11) Beethoven、Chopin 他 試聴ファイル(独amazon) |
「ハンマークラヴィーア」と第32番は、カーネギーホールのライブ録音がそれぞれ出ている。
両方とも音質はあまり良くない。1956年のライブ録音の方がいくぶんクリアな音はする。
1954年のカーネギー・ホール・リサイタル(DECCA)。「悲愴」「テンペスト」「告別」「かっこう」「第32番ソナタ」を収録。
バックハウスは、アンコールではベートーヴェン以外の曲しか弾かなかったらしい。
カーネギー・ホール・リサイタル (2004/03/24) バックハウス(ヴィルヘルム) 試聴ファイル |
1956年のカーネギー・ホール・リサイタル(Profil/Haenssler盤)。「月光」と「ハンマークラヴィーア」のほか、アンコール曲を収録。
音質はそれほど良くないとはいえ(スタジオ録音の方もそんなに良い音ではないし)、「月光」の終楽章は、72歳と言う年齢を感じさせない力強さと勢いがあり、テンション高くて、こちらの方が聴いていてスリリング。
アンコールには、シューベルトの即興曲(これは既発CDには入っていない曲だと思う)、ショパンのエチュード、シューマン「予言の鳥」、それにモーツァルトの「トルコ行進曲」。
和音をいくつか前奏してから、アンコール曲を弾き始めるというバックハウスの流儀がここでも聴ける。
ショパンのエチュードは、とても速いテンポと軽やかなタッチで指回りも非常に良く、技巧的な余裕を感じさせるくらい。
Wilhelm Backhaus: Live at Carnegie Hall (2007/10/30) Backhaus 試聴ファイル |
このトルコ行進曲は、音質や弾き方から考えて、たぶんこのライブ録音の音源ではないかと。
スタジオ録音よりも、ライブの方がずっと力強くて勢いも良くて、面白い。
モーツァルトというよりはベートーヴェンみたい。
弾き終わった後、盛大な聴衆の歓声と拍手。当時のリサイタルの雰囲気が伝わってくる。
モーツァルト トルコ行進曲 ヴィルヘルム・バックハウス