ヨゼフ・スークを悼んで
2011, 07. 11 (Mon) 00:00
スークは2002年に引退して、最近は闘病生活を送っていたという。
高齢のせいもあってか、最近ではリイシュー盤以外にスークの新譜を見かけることもほとんどなく、昔の録音を時々聴いていた。
おそらく最後のセッション録音となったのが、アシュケナージのピアノ伴奏で2009年9月(79歳くらい)に録音した『ドヴォルザーク:ヴァイオリン、ヴィオラとピアノのための歌曲編曲集』。
スークの演奏を初めて聴いたのが、カッチェンと録音したブラームスの《ヴァイオリンソナタ全集》。
ピアニストのパネンカと第2番・第3番を1960年代初めに録音しているけれど、全集版はピアノ伴奏がカッチェン(1967年)、バドゥラ=スコダ(1997年)の2種類。
同世代のカッチェンがピアノ伴奏していたブラームスのヴァイオリンソナタは、スーク独特の澄んだ深みのある美音と、自然な趣きのある爽やかな叙情感がとても美しい。
これですっかりスークのヴァイオリンが気に入ってしまい、スークの録音は廃盤も探し回って、30枚以上は集めたものだった。
Josef Suk,J. Katchen,Brahms Violin Sonata G-major 1
スークのレパートリーはドイツ音楽とチェコ音楽を中心に、バッハ、ヘンデル、モーツァルト、ベートーヴェン、ブラームス、チェコの作曲家では、ドヴォルザーク(スークの曽祖父)、ヤナーチェク、スーク(祖父の作曲家)、マルティヌー、フィビヒ、さらには仏のドビュッシー、プーランク、ラヴェルなど。
ソロで有名な録音といえば、バッハの《無伴奏ヴァイオリンソナタ&パルティータ全集》。
どちらかというと地味な演奏なのだろうけれど、スークの深く響く美音が温かく、自然に湧き出るような包容力のある情感が心地良い。
Josef Suk plays Chaconne Bach Ciaccona (1/2)
スークとスークトリオによるドヴォルザーク作品の演奏は特に有名で、ヴァイオリン協奏曲、ピアノ三重奏曲全集や『ヴァイオリンとピアノのための作品集』など名盤が多い。
スークのドヴォルザークはどれも良いと思うけれど、一番好きなのは『ヴァイオリンとピアノのための作品全集』。
それに収録されている《4つのロマンティックな小品》の第1番は、川が悠然と流れるように流麗でとても綺麗な曲。
これは晩年のパネンカとの珍しいライブ映像。
Dvořák Romantické kusy No. 1 and 2 , Josef Suk & Jan Panenka
ベートーヴェンのヴァイオリンソナタ全集録音は、ピアニストのヤン・パネンカが伴奏している。特に好きなのが第4番。
パネンカが手の故障でスーク・トリオを離れてからは、ピアニストがヨゼフ・ハーラに代り、ベートーヴェンのピアノ三重奏曲全集を録音。(それ以前にパネンカがピアノ伴奏して録音した曲があり、別盤でリリースされている)
ハーラとデジタル録音した曲はベートーヴェン以外にもいろいろあり、珍しいレパートリーも入っているけれど、レーベルがマイナーだったりしたこともあって、廃盤になっているものも結構ある。
ヴァイオリン協奏曲の録音は、バッハ、モーツァルト、ベートーヴェン、ブラームス(二重協奏曲)、メンデルスゾーン、ベルク、ドヴォルザーク、ヤナーチェク、マルティヌーなど。
特にメンデルスゾーンやベルクは、張りのある澄んだ音色と清楚な叙情感が美しくて、よく聴いたものだった。
カッチェンと録音したブラームスのヴァイオリンソナタや、シュタルケルを加えて録音したピアノ三重奏曲は、いまでも時々聴きたくなる。ブラームスに関しては、他のヴァイオリニストとピアニストの録音を聴こうという気になれないほど、しっかり記憶に刷り込まれてしまったらしい。
数年前に集めたスークのCDがたくさんあるので、少しずつ聴き直したくなってきた。今日の夜は、バッハのシャコンヌを聴いて眠ることにしましょう。