出張報告 建設 はた
11月16日 静岡県熱海にて
「第15回建設研究・交流集会」
記念講演:「維持可能な社会と公共事業の未来」
宮本憲一(大阪市立大学名誉教授・滋賀大学名誉教授)
《記念講演の報告まとめ》
① 金融危機と構造改革の破綻について
アメリカのサブプライムローンの破綻が世界的金融危機、世界恐慌に向かっている現実。日本においては小泉構造改革=新自由主義(民営化、規制緩和、福祉切り捨て、所得再分配的税制度による小さな政府づくり)が原因で非正規雇用、貧困層の増大や地域格差うみ、福祉、医療、教育の荒廃へと社会的大問題を抱えています。
1929年の恐慌では資本主義国は戦争によって不況を解決しようとするニューデイール政策で対応していたけれど、今は現実的でなくなった。特に日本は憲法で不戦を宣言していることからして軍事化で景気を回復することは出来ないに等しい。公共事業・公共サービスを拡充せざるえないがでは、どのような対策が必要なのか?1、過去の失敗を明らかにすること。2、福祉国家としての投資のあり方へ転換。例えば、新たな道路整備より住宅整備への政策転換。は今の日本でも可能な対策であることだと先生は指摘しました。
②
戦後の特徴は社会資本充実政策。
問題①、世界一の投資額、しかし公共投資が特に道路に偏重していた660兆の内道路が164兆円(25%)これに対して住宅:43兆円、(6.5%)、厚生福祉:24兆円(3.6%)また、下水道事業をやりすぎ、都市の集積しているところに意味がある事業、市町村の赤字の原因の1位。大きな儲け口となっていた。このような公共投資の偏重が大きな問題の1つ。
問題②、第二に公共工事が公共性を失って環境破壊、公害の原因をつくってこと。公共事業公害裁判となった大阪空港事件以来、空港、新幹線、高速道路で裁判がつづくがいずれも政府の責任が問われ賠償しなければならいとなった。それ以来、公害や環境破壊を未然防止することが公共事業の条件となりました。
問題③、四国三大架橋、空港、港湾、など巨大な費用がかかる割に経済効果が乏しい。さらに、1988年以降異常な形で地方団体の単独事業が増え、工事費の半分近くを地方債でまかなった。国も建設公債の限度いっぱい。財政法の特例措置で赤字公債を発行。異常な公債残高となった。
問題④、公共工事が政権政党の政治基盤の維持に使われ、財政民主主義を失っている。
財政危機のもとで構造改革が行なわれたが、計画の中身が改革なくして一律削減が行なわれた。図3のように公共事業費は1998年14兆円から2008年には6兆7000億円半分以下に削減された。公共投資の対GDP比率からみても05年3.2%にまで減る。十分な検討のないまま節減政策取られた問題。
農業衰退の穴埋めをしていたので事業の縮減は地方経済に大きな影響をあたえた。
* 今後 不況対策として公共工事を求めるこえが高まるが、この際これまでの問題点を明確にし て民主的な公共事業政策の展望を持たなくてはならない。過去の失敗に学ぶべき、転換すべき
政府や自民党の方針はまだ定まっていない。財政経済諮問委員会は公共工事の合理化、削減の一方で国土交通省はグローバル化経済のもとで他国に比べ空港、港湾、高速道路などの大型プロジェクトがいまだに大きく不足としてまた選挙目当ての公共事業補助金の散布をしている。
* 転換策 指摘したような旧態依然の社会資本充実策ではなく、住民の生活の安全・防災・医療・保険・福祉・教育・環境保全に寄与する資するような公共事業政策が求められる。
* ダムはいらないと知事がいっているのにそれを恫喝する国の幹部がいる・・とんでもない!
第2部:国土交通省の考えかた
「建設産業の課題と建設産業政策の方向性」について
国土交通省総合政策局:労働資材対策官 長谷川周夫
1、 建設産業の現状
建設投資・・・・ピークは平成4年の84兆円。平成20年今年の見込みでは50兆円を切る。急激な40%カット。内、公共投資で35兆台が平成20年には17兆、半分になっている。
建設業者・・・・平成11年末で60万社だったのが平成19年3月末では51万社に減った。(実質仕事があると言うところは30万社ぐらい)今年から全国ではローカルゼネコンが潰れだした建築業協会加盟の企業が一日1社のペースで倒産している。
就業者・・・・ピークは平成9年685万人から平成20年で500万人
建設産業を取り巻く状況
社会資本整備の充実と地域の雇用、経済の悪化に大きく関わる
資材費の高騰の影響が大きい。
2、 建設産業の課題
産業構造の転換・・・民間投資、公共投資が減っている中で競争が激化しているので適正さが必要と考えている。(総合評価方式)働きにみあった条件にしていきたいと省としては考えている。
建設生産システムの改革・・・「建築産業政策2007」で国の方針を示す。例えば技術力か経営力が高いところが残ったらよい。(労働者守るところなし)しかし、労働者の働きが品質に大きくかかわるので希望のもてる産業へ転換したい。
また、建設業法19条3項、不当な圧力をもって請負わせる、指値発注などは禁止されているが現実には起きている。国としてはガイドラインをつくり平成19年に地方整備局にチェック体制をつくった。元請のチェック。しかし、約50万社の内、国の管轄は1万社、残りは各都道府県となるので発注者責任としての県の役割は大きい。
3、 今後の建設産業政策の方向性
① 公正な競争の基盤の確立・・・総合評価方式(あくまでも競争であること。中小業者の実態にあっていないので参入できる中身へ)
② 入札契約制度の改革・・・・ダンピング、低入札を止めるための基準を引き上げる。
③ 対等で透明性の高い建設生産システムの構築
積算の内訳を明確にすること。資材+人件費+儲け=価格、儲けの分を公共が一定もつべきで十分な工事単価が必要。
④ ものづくり産業を支える「人づくり」
総合評価方式の中で元請を評価するだけでなく下請けまで評価していく。
労働単価の状況では11年連続下がっている。このことが予定価格が下がる要因となっているので予定価格をどうして行くかが課題。(地方自治体ににおいても課題)
第3分科会:建設生産システム
「重層下請け構造の抜本的改革のために」
辻村 定次 建築政策研究所 副理事(飛島)
1、 今、建設業界はどうなっているか
不動産・建設につき荒れる経営の危機
① 資金繰りの困難
② 低価格受注
③ 現場のリストラ
下請け業者へのつけまわし
① 工事代金の不払い
② 低価格指値発注、諸経費の押し付け
③ 責任施工、自主管理
2、 日本の建設産業の構造の特徴
① 元請業者と下請けの機能区分
国土交通省「建築政策2007」では以下のように区分している。
元請業者(総合工事業者)・・工事の総合管理機能・・(労働者は雇用しなくてよく管理する人がいればそれでいい。)
下請業者(専門工事業者)・・工事の直接施工機能
② 建設業法は下請け施工を前提にしている。(直接雇用に責任はない)
建設業許可は現場従事者を直接雇用し、直接施工機能をもつかは関係ないとされている。
* 直接雇用した業者でないと許可業者としないことがいる。
③ 建設業法第22条では一括下請負のみを禁止している(丸投げ禁止)
3、「建設産業の重層下請構造」に関する調査・研究から
日本における重層下請制の解消は可能か・・・・先生は「可能」
① 建設業者が直接施工機能を持つことを前提にした業者のあり方
② 建設業者が現場労働者を直接雇用できるためのインセンテイブ
③ ひとり親方問題をどうするか
④ 直接雇用に向けた労働組合のたたかい・・民間工事では難しい状況。元請の半分は建退共を渡していない。一方で余ったのか証紙をネットで売っている。・・他にも実態をつかむことがいる。派遣労働の実態、偽装請負が起きている。