日本のSI業界でこそ、専門の技術者の必要性がもっと見直されるべきではないのか? - 達人プログラマーを目指してを拝読しました。この手の議論は定期的に出てくる根の深い問題でありまして、1億年と2000年前から多くの方に言及されています。しかし、それほど大きい問題であるということです。一概にああしろこうしろで片付く問題ではありません。
色々論点はありますが、「技術を売って社会貢献している業態なのに、一番重要な技術者を軽視するってどういうこと?」という1点に集約でき、上記エントリの主題も同じです。技術onlyの専門家の存在が認められないのが問題だと。しかしですね、「技術者そのものを売ってるんだから、軽視云々を言ってもどうしようも出来ない」という果てしない平行線を辿っていることが見えているでしょうか?ブルーハーツの「弱いものたちが夕暮れ 更に弱い者を叩く」というフレーズが思い起こされます。
技術者が軽視されていると感じるならば、その最大の要因は技術者自体を売りに出して労働力提供の形でビジネスを行っていることだと感じています。これは何度かブログで申し上げています。建築業界も同様の問題を抱えています。わかりやすく言いましょうか。技術者軽視的な何かを避けたいなら、そもそも技術者を売ってはいけないのです。自動車を売るのであって、自動車を作る人を売ってはいけません。でも、自動車作れる人に値札をつけてお金にすることができちゃうんですね。売り物に対して軽視もクソもないんですよ。
派遣がすべて問題なのではない。現に欧米でも派遣に相当する契約はある。それは、開発規模を決めるビジネスモデルをコンサルタントが作る場合や、不確定要 素の大きい革新的なプロジェクトでリスクを避けるために使われる。また、成果物の品質責任を問われない事務的な仕事では、派遣は便利な形態である。しかし、品質に関して重大責任を負うに至ったソフトウエア開発ビジネスで、成果責任を負わない派遣形態がかくも横行しているのは日本だけである。
真髄を語る - 日本のソフトウエア産業、衰退の真因:ITpro
こちらの松原氏の記事は、この問題に興味がある方は良く読まれた方が良いと思います。
企業組織は売り上げが全てを癒します。逆に言えば、売り上げに勝るものは皆無です。自動車を作る人を売るのは元手がかからず、在庫も保有せず、すぐに売り上げにつながり、翌月には入金されるという、これほどナイスなビジネスはそうあるものでありません。語弊がありますが、誰でも出来ます。自動車作ったら原材料費はかかるし、いつリリースできるかわからないし、競合に先を越されるかもしれないし、売れるかどうかもわかりませんので、資金繰りの目処が立たず、リスクばかり目立ちます。
このようなことを踏まえますと、人月というのは実に会社にとってありがたいビジネス形態なのですね。人月で資金繰りしてる会社がプロダクト作って売って人月時代と同様の売り上げを得て人月商売を辞める・・・なんてことができるわけがない。無理です。99%無理。
かといって売られた側はたまったもんじゃなく、大きく言えば業界の未来が暗くなる一方です。特に、人月派遣は優秀な人ほど弊害が大きい。イチローもアマチュアも同じ天秤ではかったら、イチローは日の目を見られません。メジャーリーグへ行くべきなのは誰にでもわかるでしょう。
エンジニアの未来を考える際には、顧客の利益と我々の利益をどう折り合いつけるのかが肝要です。誰に技術onlyの専門家の価値を認めて欲しいのか?黒船に折り合いつけられる前に、他に出来ることはないのかを考えていきましょう。