GoTheDistance

ござ先輩と言われています。(株) クオリティスタートという会社をやっています。

炎上プロジェクトでスキルを会得する前にお前は死ぬ

経験の浅いエンジニアが1千万の年収を得る最短ルートが、炎上案件に飛び込んですげぇ修行して界王拳をマスターしろなのか... 社員にそれを言えるのがすごいな。(いわもと様から社員向けではないとコメントを頂いたので、打ち消します)

炎上プロジェクトで心を病んだ人を多かれ少なかれ見てきて、人づてに色んな哀しみを聞いている身としては、危険としか言いようがない。

僕が若い頃にやった、月稼働400時間が2ヶ月続いたプロジェクトは炎上プロジェクトの類に入るだろう。24〜5ぐらいの時。10時〜24時が平日で、休日も同じぐらい潰すと、それぐらいになる。良かった点は1つだけあって、自分の限界がわかったこと。2日てっぺんまでやれば終わる的なKKDに正確性が出ました。自分で仕事を組み立てないと炎上プロジェクトで生きてこれないし、多少の無茶振りでは動じなくなりました。当たり前だよね、限界まで働いているんだから。いい話でもないわ。

炎上プロジェクトをおすすめしてる理由が「すげー働けるからスキルつくし、やり遂げたときの達成感やばい」なんですけど、その前にお前が死ぬ。

炎上プロジェクトは終わらない夏休みの宿題だよ

働ける環境が劣悪だと、やり遂げるもクソもないんだ。やり遂げるっていうより、終わらない夏休みの宿題をずっとやってる感じ。8月31日がループされる感じ。自分のやったことが無駄になるのが一回ならいいけど、2度3度続くと平静を保つのが難しくなる。仕様が変わる or 追加されるのが炎上プロジェクトの常だからね。日々生み出されるうんこを掃除しても、またうん(ry

炎上プロジェクトでは誰もお前を助けない

経験の浅い人間が炎上案件に入っても、何も出来ないの。炎上してる時は各々が自分のタスクが溢れてしまう状態なので、経験の浅い人の教育に裂くコストなんて取れない。だから、誰もキミを助けることはしない。しないっていうか、出来ないよね。自分が泳ぐのが精一杯だから。そういう状況下で、経験の浅い人間がやれることは、手戻りが起きないように縮こまって目の前のことだけやるしかなくなるよ。何を改善できるの?

炎上プロジェクトで身につくのは力技だけ

問われるのは質ではなく、動くこと。あーこれバカロジックだなーって変更入ったら書き直しかもなーっていう予感があっても、とにかく書くの。書いて動かしてテスト回して先に進むことしか求められない。リファクタリングに時間を割く時間はない。もっと良い設計や書き方を感じる時間があったかもしれないけど、それをこの炎上案件に適用する時間は、無いんだ。動いているものを書き直す機会は与えられないし、動いているものが変わっちゃう可能性も高いから。

それに、経験が浅いってことは、誰かが考えた仕様を実装するタスクが多くなると思う。この種の仕事をやりきっても、ほとんど成長しない。実体験だよ。要望をまとめて自分で仕様を考えて実装してバグ出して直すから知見が得られるのであって、与えられた仕様をなぞって書いても漢字の書き取りと変わらない。文章を書かないとね、表現ができない。少なくとも、エンジニアはコードで表現できないと先に進めない。

悪い状況を悪いやり方でやっつけることを学んでも、あなたの開発者としての引き出しが増えるわけじゃないんだ。プロに揉まれるってのは幻想だと思っていいよ。失敗したプロジェクトで自分が沢山手を動かすことで成長できる、なんて言われるかもしれない。稼働すればするほど成長できる理論、バカとしか言いようがない。

終わってるところに入っても、何も残らないよ。炎上プロジェクトは、トライアンドエラー(PDCA)をする場じゃないから。DoDoDoDoDoDoCheckDoDoDoDoDoみたいな感じ。こういう状況だと、やっつけ仕事にならざるを得ない。振り返っている時間がないんだから。

橋が対岸にかかっていて、みんなが渡り始めていると、後ろから火の手が上がる状況なんだって。振り返る余裕ある? 対岸に進むのが先だよね? 対岸に着いたらなにか残るかな〜 橋は燃えているんだけどね〜。 ま、そういう話。

プロジェクトに入って、概ね計画通りに進めて成果物の整合性取って意見調整して進める一連の過程が「成功」するからノウハウがたまり資産が増える。その積み重ねで視座が変わるわけ。視座が変われば発想が変わる。発想が変わらないとレベルアップにならない。成功体験が重要じゃん。火消し体験って成功体験かって言われると、クエスチョンだ。スキルアップって耳障りの良い言葉に囚われちゃダメ。目指すのはレベルアップだよ。

もしかしたら、あの案件きつかったけどやりきったよな俺たち良かったよな〜なんて新橋で戦友と飲めるなんて美談を想像しているかもしれない。バカだな〜。うまく行ってなくて、ずっとうんこ片付けた話で酒がうまいとでも思います? あの案件すげーうんこ降ってきたよな〜 楽しかったな〜って?

炎上プロジェクトにいるだけで落ち着かない

SESで下請けとして入る場合、炎上しようがあなたたちに非は無い。SESだから稼働すれば良く、プロジェクトが成功しようが失敗しようが、お金がもらえるならどうでもいい。でも、プロジェクトがうまく行ってないことはわかるじゃん、普通は。最低でも肌感で。進んでないんだから。糠に釘を打ち続けていると、真綿で首を絞められるような居心地の悪さがすごいんだ。

こういう立場のときにやれることは、自分の被害を最小化しつつ、焦げ臭いと感じてもやぶ蛇にならないよう、決められた稼働時間で指示通りに働いて作業報告書を出すだけ。オレがそう立ち回ってこいってブチョーに言われたからね。ハハハ。もし、あなたが当時の私と同じで炎上プロジェクトの下でSESで入ったとしたら、やることは「このプロジェクト自体が燃えています、こんな兆候があります。我々を早く引き上げて下さい。」と上に伝えること。これで私はちょっと早く生還できた。運もあったけど。

炎上プロジェクトで生き抜ぬいても、貧乏くじが待っている

上の立場からすると、心を病まれちゃ困るじゃん。キツめの案件で。そういうとこだけはディフェンシブなんだよね、他はガバガバなのに。乗り越えちゃうと、多少きつくてもあいつならってなりがちなのよね。よくやりきった!次はもっと良い条件で新しい技術のあるこれだ!なんて話につながらず、その後も焦げ臭い案件に入れられやすくなる。バカみたいだよね〜 やりきったら次にやってくるのが貧乏くじ〜。コレで辞める人多かったな〜。

炎上プロジェクトはステップアップの場ではない

ここまで読んでも、僕は炎上プロジェクトという超神水を飲んで40連勤上等で生き残ってパワーアップしてみせると申されるのであれば、どうぞご自由に。

経験がある人は多かれ少なかれ炎上の匂いを知ってるから、立ち回りもある程度できると思うし、身の処し方もわかってる。でも、経験が浅いヤングな人は、単純に知らないからね、流れ弾に打たれて当たっても、それを自己責任にするのはかわいそうだ。だからこの記事を書いている。

少なくとも、オレの周りにいる炎上経験者の生き残りは、誰も炎上プロジェクトで力がついてよかったとは言ってないよ。

オーバーワークからの立ち直りについては、こちらの記事が詳しいので、あわせて読もう。

逃げるは恥だが、役に立つ。

hase0831.hatenablog.jp

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2021.08.30 14時43分 追記 いわもと様よりコメントを頂きました

最短で(フリーランスになって)イッセンマンITエンジニアを目指している人たちへのネタメッセージで、社員に向けて言っているなど書いてないので訂正をお願いします。

大変失礼しました。元ツイには対社員とはどこにも書かれていません。企業の代表が率先してオススメしてるぐらいだから、社員にも同様の主張を行っているものだと私が拡大解釈してしまいました。取り消し線を打って、修正しました。

・・・ネタメッセージってなんなのよ??

ネタメッセージという日本語の意味がわからない。ネタってことはギャグや冗談ってことですよね。ホントの話じゃないと。あの、どこがネタなの・・・?

炎上案件がオススメという主張そのもの? 炎上案件はオススメだけど、1千万稼ぐ最短ルートではないという話? 炎上案件はおすすめしないっていうのがマジで、オススメするのはネタなの? 1千万稼ぐには炎上案件に入れという主張がネタだとしても、オチがないやん。これ。オチはどこなの。

あと、タレコミで「炎上結果から得た学びを社員に還元して労働時間減らした」という趣旨の発言もあったそうです。じゃ、炎上案件オススメしたのなんで? なんでなの?

開いた口が塞がらないわ。

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