タケルンバ卿より下記内容についてリクエストをもらったので回答してみる。
ポイントをまとめると、こんな感じです。
人月は流れて西へ - (旧姓)タケルンバ卿日記
- 人月商売をやっている会社は、単価によって大凡のサービス価格が決まる。よって下請けに安い単価で出してマージン抜くと利益率向上に直結する。
- が、下げられる単価にも国内では限界がある。人工商売なら海外に安い労働力を求めるのが合理的なので、海外へ委託するしか無いのではないか?
- 翻ってこういう会社で生き残るには、マネージャ職につくしかないのではないか?ITの場合、プログラマでいたいなら一人親方にならざるをえないのではないか?
結論から言うと、全部同感。ITでも人材派遣(警備業界とか)でも、根っこは一緒。
人月商売は「単価」×「人数」×「期間」のかけ算が基本的な考え方。このモデルで利益率を増やす為には「単価を上げる」か「安い単価の人間を使うか」の2通りしかない。期間短縮や人数削減では利益率は変わらない。単価100万で請けて単価50万の会社に投げれば、それだけで50万儲かる。「最終的な成果物をコミットして受注して、制作工程を外部に投げてマージンを抜く」という利益の出し方はリスクも低いし確実に儲けることが出来るので、建設/IT/メーカー/テレビ/人材派遣など、様々な業界で暗躍してますね。
実際大きなシステム会社は中国、インドあたりに開発工程を発注しています。こういう海外の事業者に開発や運用等を委託することを「オフショア開発」と呼ばれている。2005年〜2006年ぐらいにブームになって、良くメディアで耳にしました。
ただ、ソフトウェアの場合は設計者と実装者が別れるだけで多くのコミュニケーションコストがそこに生じる。同時に、開発行程を投げる為には前段階の要件定義が完璧で仕様書も漏れが無い状態であることが求められる。それでも、自然言語をプログラムに落とし込むのには行間が開く。大量の人間をぶちこむが故に、常に膨大なコミュニケーションを取らないと仕事が進まない。オフショア活用は非常に練られた開発プロセスが無いと破綻するリスクも多分に孕んでおります。
もちろん語学スキルも問題になりまして、ブリッジSEなる単語もあるぐらいです。外国と国内をつなぐエンジニアって意味。
次にマネージャになるしかないんじゃないか、という話。SIerに限って言うと、実はそういうキャリアパスが用意されている会社が多い。「プログラマー→エンジニア→プロジェクトマネージャー」というもの。不人気だけどね。作業者→管理者→監督みたいな感じ。工程を実施する人→工程を管理する人→工程を作り出す人という感じかな。工程という概念で考えれば、作業者が一番下にならざるを得ないんですね。知的労働だけど成果が労働力提供ならば。
良くある拒絶反応としては、
- 知的労働者であるプログラマを単なる作業者として捉えるのは何事か
- このキャリアに乗ったらドロップすることが出来ない。硬直的。
- 元請けのマネジメントって何なのバカなの死ぬの?RTするだけの簡単なお仕事じゃないの?
この3つかなぁ。
人月で商売すると給与とペイさせる為に、より高い単価を稼げる職種に就かざるを得ない。プロジェクトを受注しなくては儲けにならん。生産性が高くても給与が上がらないとか、人月見積もりは生産性の向上との相性が悪いという主張は「りんごが赤いのは何故なんだ?おかしくない?」という話に聞こえる。ルールが嫌なら、変えるか壊すかどっちか選べ。
こういう会社で35歳になって心機一転PGからやり直しますというのは、「腕の良い若くて単価の安いPGがいるけど、ロートルだけど高い給料は維持してもらって育成選手的な感じでPGやりたい」という話とほぼ同じ。誰が他に稼ぐんだよって言われるのは火を見るより明らか。コード書きたいならコードで飯を食ってる会社に行くのが一番素直な道だと思う。技術的関心はあるけどコードをバリバリ書くのではなく、私は顧客やチームを動かして成果を出したいってのもアリ。顧客の顔が見えるポジションなら受託も楽しかったりするし。なので、一概にダメとは言えないのだけれど。
技術を極めたいというタイプの人は研究開発的な立場の仕事に就くか、Webで事業やサービスを展開する会社に移るか、一人親方になるかの3つが多いように感じている。実際ひとりでサービスやプロダクトを作って起業するケースも多くある。一人親方になるのなら、今まで通り単価で稼ぐのは結構難しいと思う。案件(=戦場)を渡り歩く傭兵のような生き方のように感じる。
ただ、一人親方にとって追い風が吹いているのではと思います。生産手段が常に高度化されていく中で、それがインフラとして提供されていく流れが続いているから。ひとりでもクラウドを駆使すれば数百万、数千万PVのサービスを作れちゃう時代。1つのアプリケーションやWebサービスがニッチな市場を席巻できる可能性を秘めている。これはすごく面白いと思う。更に言えば、技術者を雇えば事業会社がITを駆使できる可能性が高いってこと。
蛇足だけど、こういうエントリを書いていて思うのはいくら能力があっても働く会社を間違えたらどうにもならんってことですね。スキルがあってもルールを把握できないと能力は活かせない。
映画『ザ・プロデューサー』の中に、確かこんな内容のセリフがある。「24歳になってもシステムに反抗しないようでは、将来大物にはなれないが、30歳になるまでにシステムの中に入っていなければ、その先マトモなことは何一つできない」
http://gothedistance.tumblr.com/post/24951859/24
その問題意識を元に会員制メルマガで会社選びについて書いたので、興味のある方は是非ご覧下さい。
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