どうしてもペルソナのほうばかりに気をとられがちですけど、要はいかにユーザーの行動シナリオをリアルに描けるかどうかです。
観察(オブザベーション)
深澤直人さんの著書『デザインの輪郭』のなかに、「without thought」というワークショップで「観察(オブザベーション)」に関する課題の話が出てくるのですが、この例も行動シナリオを描くというデザイン行為の必要性をあらためて感じさせてくれるものです。ゼリーを食べるところを観察する例です。最初はほとんど全員が、1、スプーンを持ち、2、容器の蓋を開け、3、ゼリーをすくい、4、口に運び・・・、というように、まるで頭で想像したかのように単純なプロセスを発表した。深澤直人『デザインの輪郭』
Webサイトの設計の際にも「ユーザー行動シナリオ」と称して、上の引用にあるようなプロセスを描いているものを見かけますが、実はそんなものなら特にシナリオ化するまでもありません。まぁ、まったく役に立たないとはいいませんけど。
「何か問題らしきことはないですか?」と訊ねると、「中身が飛び散らないように、蓋をゆっくりはがす」、「はがした蓋をテーブルに上向きに置く」、「食べ終わったら、ゴミを容器に詰め込む」といった、わりと顕著な視点が発表された。深澤直人『デザインの輪郭』
こうした観察結果が見つかるようになると、デザインすべきものの輪郭がみえるようになります。中身が飛び散ったりしにくかったり、上向きにテーブルに置きやすく、かつ、食べ終わったあとも処理しやすい蓋のデザインとか。
さらに、何の根拠もなく、ただ「もっとおもしろい観察をした人はいませんか?」と訊ねると、「蓋をはがして内側をなめた」、「ゼリーを細かく砕いて容器から直接口に流し込んだ」とか、「口の中で具のフルーツとゼリーを分離させた」というような発見が出始めるようになる。深澤直人『デザインの輪郭』
これこそ、ユーザー行動のシナリオの原型なんだと思うんです。
ユーザー行動シナリオこそ、最初のデザイン
こうした行動の観察をベースに、シナリオを作成すること。例えば「ゼリーを細かく砕いて容器から直接口に流し込んだ」という観察を元に「○○さんは細かく砕けたゼリーを容器から直接口に流し込んだ」というシナリオを描けば、それは「容器から直接口に流し込めるよう最初から砕けた状態のゼリー」をデザインすることにつながります。
また「口の中で具のフルーツとゼリーを分離させた」という観察を元に「○○さんが口の中で具のフルーツとゼリーを分離させた瞬間、えもいわれぬ不思議な感覚が口の中にひろがった」というシナリオを描いて、これまでにないユーザーエクスペリエンスを体験させるゼリーの基本デザインが描けるかもしれません。
このようにペルソナ/シナリオ法でのユーザー行動シナリオは、デザインを行う上での最初の基本デザインになるものだと思います。
それは単に実際の人々のデータを元にペルソナをつくっただけでは生まれてこないものです。ペルソナを動かすシナリオを描いてこそ、新しいデザインは生まれてくる。
デザインとはモノとヒトのインタラクション=相互の動きを描くことだと思います。そして、ペルソナはそのモノとヒトとのインタラクション=動きにエクスペリエンスという色をつけるためにこそ役立つものだと感じます。
その意味でこそ、ペルソナ/シナリオ法というのはエクスペリエンス・デザインの手法たりえるのだと考えます。
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この記事へのコメント
Yoshihiko.N
ユーザエクスペリエンスデザインやペルソナの話をされていたので、ご参考までに。
http://item.rakuten.co.jp/book/1671523/
IBM UEDCでの実例とかあってわかりやすいです。