2024.12.25

じつは多い「高齢者のうつ」を引き起こす…65歳以上になったら「失ってしまう3つのもの」

日本は今、「人生100年」と言われる長寿国になりましたが、その百年間をずっと幸せに生きることは、必ずしも容易ではありません。特に人生の後半、長生きをすればするほど、さまざまな困難が待ち受けています。

長生きとはすなわち老いることで、老いれば身体は弱り、能力は低下し、外見も衰えます。社会的にも経済的にも不遇になりがちで、病気の心配、介護の心配、さらには死の恐怖も迫ってきます。

そのため、最近ではうつ状態に陥る高齢者が増えており、せっかく長生きをしているのに、鬱々とした余生を送っている人が少なくありません。

実にもったいないことだと思います。

では、その状態を改善するには、どうすればいいのでしょうか。

医師・作家の久坂部羊さんが人生における「悩み」について解説します。

*本記事は、久坂部羊『人はどう悩むのか』(講談社現代新書)を抜粋、編集したものです。

老年期の三大喪失体験その(1) 身体機能の喪失

精神保健学の講義では、各年代(ライフステージ)における「精神の健康」について話していました。

老年期(六十五歳以上)では、まず三大喪失体験というのが問題になります。

PHOTO by Gettyimages

第一は前章にも書いた身体機能の喪失です。

老いればさまざまな機能が衰えます。老眼では細かい文字が読みにくくなるだけでなく、動体視力や暗順応の低下が見られ、夜の運転やトンネルの出入りで車の事故の危険性が高まります。

聴力の低下では、音が聞こえにくくなるだけでなく、気配も感じにくくなり、音は聞こえるけれど、どこから聞こえるのか、あるいは会話でも何を言っているのかが聞き取れなくなったりします。これは脳の認識力が落ちるためで、若者の早口(若者にはふつうの速さ)などが聞き取りにくくなります。音は聞こえているので、この機能低下に補聴器は役に立ちません。

ほかにも歯の脱落、嚥下機能の低下、平衡感覚の低下、筋力低下、性機能低下などで、硬いものが噛めないとか、誤嚥が増え、ふらついたり、つまずいたり、男性は性的不能、尿のチョロッともれ、女性は骨盤底筋群の緩みで腹圧性尿失禁、子宮脱(子宮が膣から股間にはみ出る)になったりします。

免疫機能の低下で病気になりやすく、感冒が悪化して肺炎になり、呼吸機能、心機能の低下で息切れや動悸、脳機能の低下で物忘れや勘ちがい、思考渋滞などが起こり、移動機能の低下でひきこもったり、

骨粗鬆症で骨折しやすくなったり、生活習慣病も悪化して、「病気のデパート」と呼ばれる状態になったりします。

老化は普遍的(だれにでも起こる)ですが、個人差があるので、自分は大丈夫と思いがちです。しかし、老化を免れる人はいません。

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