「Downwell」クリエイターズインタビュー”前例があまりないから、開発を通して理解していった感じですね”
「Downwell」で鮮烈なデビューを飾った麓旺二郎さんこと、もっぴん(@moppppin)さんに2015年の11月末にインタビューさせていただきました。発売後の反響やゲームデザイン、これからのことについてお聞きさせていただきました。
リリース後のメディアやプレイヤーの反応
ー「DOWNWELL」の国内外の評価などの手ごたえはどうでしょうか?
もっぴん そうですね、みんな楽しんでくれてるっぽいですね。恥ずかしいんですけど、ほんともう毎日エゴサーチばっかかけまくっていて。。もちろん、やっぱり「ムズすぎ!」とかそういう否定的な意見もちらほら見えるっちゃ見えるんですけど、でも大体はおもしろいみたいに言っていただいていて、Steamのユーザーレビューもわりと好評で、ちゃんとしたゲームサイトのレビューも高評価なものが多くて。
正直なんか、ここまで評価されるとは思ってなかったんですよ。自分的には、まあなんだろう?metacriticで70~80くらいかなって思ってたんですよ。で、実際今80ちょいなんですけど、いくつかのレビューで90点とか満点とかそれはマジでビビりましたね。
ー本作の仕上がり方は凄いので、かなりのテストプレイを重ねられてるというのが想像されるんですがいかがですか。
もっぴん そうですねー、まあまあやったのかな?僕の初めての作品なんで、テストプレイの相場というか、大体ほかの人がどんだけしてるのかも全然知らないんですけど。
ー開発室Pixelさんの「洞窟物語」は知り合った方とやり取りして、1年くらい調整していたってログが公開されてますね。凄い意見をやり取りしてたんだなあっていう。
もっぴん ああーありましたね。実際、僕も知り合いには10人15人くらいには(製作中のゲームを)送ってて。
ーそれは昔からの知り合いや、IGFの学生部門の賞にノミネートされて以降に知り合った方なども含めてですか?
もっぴん そうですね。IGFで人脈とか増えて、海外の開発者の方にも送ることができてというのはもちろんありましたね。あとは日本の普通の知り合いとか。
バックグラウンドは海外のゲームシーン
ー「Downwell」にたどり着くまでの話もお聞きしたいんですけど、ほかのインタビューなどでも語られてる通り、大学卒業後の進路をどうしようという中でだいぶ前に買ったGame maker studioでゲームを作り始めたとのことですが、スタートするのにオランダの二人組のインディーゲームデベロッパーであるVlambeerの方法を選んだあたりが洒脱な印象があります。普段から海外情報漁ってる感じなんですか?
「Vlambeer」
Rami Ismail とJan Willem Nijmanの
二人組のデベロッパー。
オランダのユトレヒト芸術大学のゲームデザイン科を
退学してデベロッパーを立ち上げた経歴も見ると
もっぴんさんと重なる感じはある。
もっぴん 僕、帰国子女(※10歳から15歳までニュージーランドに在住)なんですよ。海外にいたころにゲームにはまったので、正直、日本のゲームをあまりやってなくて。Twitterもゲーム作り始めたときは英語のアカウントしか作ってなかった くらいなんですよ。
ーあっ英語のアカウントのほうが先だったんですか?あちらのほうが「DOWNWELL」の核心に迫る情報が流れてますね。
もっぴん (笑)インディーゲームはXBOX LIVE ARCADEで流行り始めた「BRAID」らへんからハマりはじめて。
前からかなりゲームは好きで。AAAのゲームをずっとやってたんですけど、「BRAID」らへんからインディーゲームにハマっていって、必然的にVLAMBEERの「Ridiculous fishing」が発売されて、プレイしてみて「やっば」と思って。そしたら彼らなんか「Ridiculous fishing」を発売するにあたってクローンされたみたいなことがあったじゃないですか。ご存知ですか?
海底の奥底まで様々な魚を何十匹と釣り上げ、 空中に放り投げたのちに銃撃で破壊する。 英語のタイトル通りバカゲー。 スマホの縦画面を生かした構成で釣りは多くの人が考えるだろうが そこにVLAMBEERの得意なショットアクション要素を混ぜ込む無茶が見もの。 ーそれはちょっと存じてないなかったです。VLAMBEERが「Ridiculas Fishing」でアプリ市場に殴り込んでる感は知ってるんですけど。クローンゲームの話は知らなかったです。 もっぴん 彼らがiphoneで発売する前にflashゲームでとして小さいのを出してたんですよ。で、その時は「Radical Fishing」という名前だったんですけど、その時からめちゃめちゃ人気だったらしいんですが、「iphoneに出そうか」って開発してる最中に、先に「Ninja Fishing」ていうのをまったく別のところからiosで出されて。 仕様が完全に一緒なんですよ。ただ、魚を撃つんじゃなくて斬るんですけど。それで「Ninja Fishing」がかなり稼いじゃって、VLAMBEERの二人がめちゃめちゃ絶望してたらしくて。自分たちが本家なのに、後出しになっちゃうから。 ーありますね。最近でも「THREES!」のクローンのアプリのほうがDLが上回ってしまうとか。 もっぴん それで「クローンされた!」ってニュースがでっかくなったんですよ。その記事を見て、「うわあ、大変だな」とか思っての「Ridiculas fishing」を買ったんだったんですよ。 ーそうだったんですか。インタビューやお話し聞いてるとVlambeerの影響って相当にすごいなって思うんですけど。 もっぴん そうですねー。あっ、でも言ってもミーハーで、たぶん彼ら、最初にビッグになったのは「Super crate box」だと思うんですけど、でもそれは僕知らなかったんですよ。で「Ridiculas Fishing」からVLAMBEERの存在を知って、それからずっとフォローしていって、「Nuclear Throne」とかも出てきてやって、この人たちやっばみたいになって。
ローグライクアクションにツインスティックシューターを組み合わせた VLAMBEERの最新作。 「Downwell」への影響が計り知れないゲームの一つ。 ー「Nuclear Throne」とか「LUFTRAUSERS」は相当凄いんですよね。 もっぴん そうそうそう!(笑)そうなんですよ! ー「Nuclear Throne」はFPSやTPSの理屈でこんなローグライクを面白く出来るんだ、みたいな。 もっぴん 素晴らしいですよねぇ…それでVlambeer以外にも海外のインディーゲームをメインにずっとやっていて、「Super Meat Boy」とかもちろんだし、有名どころとか大方やりました。やっぱり海外の影響の方がデカいとは思いますね。 ー以前の元スクエニのシシララ代表の安藤武博さんとの対談 で「まるで海外の少年の話を聞いているみたい」って発言が出てきてましたが、ぼくも調べれば調べるほど日本国内のセンセーショナルな取り上げ方と比べて、実際は海外のシーンの方に軸足があることの印象のデカい差を感じたんですよ。 もっぴん そうかもしれないですね。 ーやっぱバックグラウンドを見るにその辺の方の名前出ることが多くて。「half-life2」や「unreal tournament」をお母さんから買ってもらったとか。ぼくがざっと見たところ日本のゲームで言及されたのが「スーパーメトロイド」とか「洞窟物語」くらいで。いずれも海外の方で著名なタイトルですね。 もっぴん そうですね、日本のものでやってるのは大体海外でも人気になったゲームとかくらいで。 「洞窟物語」は大好きですね。 ゲーム制作者としてスキルアップに大きく役立ったVlambeerのゲーム製作メソッド ーそれからVlambeerが提示している「一週間でゲームを一本作る」というゲーム製作メソッドを行いますよね。あれは確か48時間でゲームを作る「LUDUM DARE」など、一週間や2週間と短期間で作るゲームジャムからの発想ですよね。 もっぴん まあ系統と言うか、本質は一緒かもしれないですね。 ーやっぱりゲームを作って、完成させることがゲーム製作スキルを上げると言うのは色々言われてますし、割と万物に通じることだよなあ…とけっこうこっちも猛省しながら読んだ記憶があります。一週間ゲーム制作というのを自分に課して、実際あれは期限を守ってらしたんですよね? もっぴん そうですね。 「1週間1ゲーム」(game-a-week)ていう、オランダの開発者の方が提案したゲーム制作練習法(?)をやり始めて1週目で作ったのがこの「ジョウハンシンの冒険」 でした、重力とか2段ジャンプ、壁キックとかの作り方をこのゲームで学んだ pic.twitter.com/ZqJ3QXhOyK 5週目?くらいに飛行機撃ち落とすゲーム作りました pic.twitter.com/EAOO48GZ4T — もっぴん (@moppppin) 2015, 3月 12
— もっぴん (@moppppin) 2015, 3月 12 ーけっこういくつかtwitterで上げられている「ジョウハンシンの冒険」や「じゃんけん」など、もの凄く一作ずつゲーム制作の方法を学んでいるんだなというのを思いまして。 もっぴん いや、めちゃ勉強になりましたね! ー単純に考えて、一週間でゲームを作るというのはスケジューリングなども含めゲーム制作スキルの力がついたんだろうか?って考えるんですけども、この辺をちょっと初期のことを思い出していただいてお伺いしたいんですけど。 もっぴん プログラミングとか何にもわからなくて、とりあえずGame maker studioしか持ってないという状況で。で、「GAME A WEEK」 っていう(Vlambeerの代表の一人の)Rami Ismailさんの記事を読んで、とりあえず作り始めようって思って、簡単なところから入っていって。 まずはその、2Dジャンプアクション「ジョウハンシンの冒険」になったわけですけど…2Ⅾジャンプアクションってチュートリアルが腐るほどネットにあるんで、全然作れて。 ーGAME maker studioはチュートリアルが充実しているんですか? もっぴん 英語のものが多いですが、かなり充実してますね。 ー確かにTwitterでも「この解説がすごくわかりやすい!」って言って動画をあげられていましたね。ヒアリングができるからスムーズに理解できててすげえなあと思ってました。 もっぴん あれはめちゃめちゃ役に立って。そんでまあひたすらチュートリアル観ては作って、入れたいけど入れ方が分かんない要素とかが生じたらまたそのチュートリアルを探して、みたいな形でやってって。 出来ることが多くなっていって、それで最終的に13週目で「DOWNWELL」のプロトタイプが作れて、まあ今まで学んできたことをとりあえず全部試して、これを大きいプロジェクトにしてみようかなと思った感じですね。 スマートフォンとPCの敷居の高さの差 ーたしかに一連の作品でとても学ばれてますね。「ジョウハンシンの冒険」から「じゃんけん」や「にゃんこ戦争」のにせものはじめ、だんだん「DOWNWELL」に近づいている感じあるんですよ。飛行機撃墜シューターあたりからVlambeerっぽく段々なってるなと思いました。 もっぴん あーっそれは、はい。影響は絶対受けてますね。 ー気になるのは、一週間ゲーム制作で「THREES!」みたいなパズルゲームやにゃんこ戦争みたいなゲームが見当たるので、このあたりからゲームをリリースするプラットフォームにスマートフォンを想定していたのかな?と思っていました。 もっぴん いや、にゃんこは別にスマホは考えてなかったですけど、「THREES!」もどきみたいなのは…考えてたのかな?まあなんせ、スマホの方が敷居は絶対低いとは思ったんですよ。 ーそうですね、「Ridiculas Fishing」のあたりで個人ゲーム開発者を目指そうとしたって話もありましたし。 もっぴん STEAMとかのインディーゲームって今やもうめちゃめちゃクオリティ高いじゃないですか。インディーなのに。 ―ああ、PCをプラットフォームにしてるから情報量が半端ない作品多い印象あります。 もっぴん そうですよね。前から「BRAID」であれ「Super meat boy」であれかなりクオリティは高かったんですけど。 ー最近ぼくが遊んだなかで「Evoland2」などあるんですけど、それに限らず様々な情報量のある作品が多いから、まったくの個人が挑むには敷居が高く見えたんでしょうか? もっぴん そうなんですよ。STEAMに挑むのはしばらく無謀だって思って。でもスマホだったらまだ割とシンプルでリプレイ性が高いものがウケる感じがあったんで。 ー割とカジュアルなスマホを選んだのは、自分の当時のゲーム制作などの実力も考えてってものあったのでしょうか? もっぴん そうですね、まあカジュアルっていうか、スマホでも…あのースマホのインディーゲームとかされます?Michael Broughさんとかご存知ですか? ーあっMichael Broughは存じていないです。どんな作家なんですか? もっぴん あっほんとですか。スマホでローグライク作ってる人なんですけど、かなりコアなゲームなんですよ。その人が作るやつ。めっちゃめちゃ面白いんですけど、あまりにもコア過ぎて万人受けはしないんですが…
インタビュー後に急遽調べた作家Michael Brough。 往年のPCゲームの頃のような 原色に近い色彩の、荒いピクセルアートの禍々しさをそのままにした ローグライクなどを複数制作。iosでリリース。 本人の身なりもヒッピーぽく、妙な納得感がある ーゲーム制作への影響はどれくらいありましたか。 もっぴん 「Downwell」に関しては影響はそんなに受けてないですね。 ースマートフォンでもこんなにハードコアに作っていけるんだ、みたいなスタンスの影響でしょうか。 もっぴん そうですね、スタンスの影響としてはありますね。別にそのなんか、マジでこんなに(「Downwell」が)ヒットするとは思ってなくて、ヒットっていうかまあ…なんだろう? ーああ、こんなにレスポンスがよかったとは思ってなかったんですか? もっぴん そう!こんなに反響があるとは思ってなくて。Michael Broughさんのやつとかって、ゲーム開発者に超人気なんですよ。ゲーム開発者がやると「めっちゃ凝ってんな~」みたいに感じるゲームデザインなんですよMichael Broughさんのゲームって。 だからこそ万人受けはしなくて。ほんとそういう超コアな存在で、ゲーム開発者とかにしか売れないから、あんまり生計とか立てれてないみたいなことを、前にどっかで書いていた覚えがあるんですけど、でも僕は自身がそうなったとして、ほんとそれでよくて。 そこまでガッポガッポ稼げなくても別に、誰かが(自分のゲームを)やって、同じような考えを持った人間がやってくれて、その人にウケたらいいなっていう考えでやってたんで。そういうスタンスはMichael Broughさんのゲームから受けましたね。 もちろんあわよくばっていうのはありましたね。あわよくば「Super Hexagon」みたいに、激ムズで万人ウケはしないけど、人気になるケースになればいいなとは思ってましたけど。そんな感じのスタンスでしたね。 Michael Broughさんみたいな人もいるから、おれもこんな感じでいいやって思ってたんですよ。別にみんなにウケなくても、ある一定のゲーム好きの層にめちゃめちゃハマってもらえればいいなーみたいな感じで始めて。別になんかカジュアル向けで、みんなにウケたいみたいな意味でスマホを選んだわけではなくて。 ー結果的にSTEAMにてPC版もリリースされましたが、やはりこれはパブリッシャーのDevolber Degitalとの契約が大きいですか? もっぴん それはもちろんですね!彼らはもはやけっこうなブランドじゃないですか。PC向けだったらもちろん一番売れるSTEAMのプラットフォームで出すのが筋が通ってるから出したのかなあって感じですね。 ーやっぱり「DOWNWELL」のゲームデザインは当初からスマートフォンの縦型といった構成を意識した形になっていると思いまして。 もっぴん そうですね、元々スマホでしか出さないつもりだったんですけど、デバッグとかは全然PC上でやってて。自分でデバッグしてるうちに「別にこれPCでもプレイできるやん」って思って(笑)。ほんでDevolverにも「これPCでもリリースできるかも」て言ったら「じゃ、リリースすれば?」みたいに言われてっていう流れですね。 スマートフォンでUIを入れるデザインの難しさと「ケロブラスター」 ー最初「敷居高いぞ・・・」と思っていたPCにそんなあっさり!。結果的に「PC版のがやりやすい、PCでやるべき」みたいな意見けっこう見かけました。 もっぴん そうですねー。ちょっと悲しいところでもあるんですけど…(笑) ーぼくも正直に言うとスマホで操作してるとき、下に降りていくデザインだから親指で画面隠れちゃって、下からの敵の動きとかわかり辛いなっていうのはちょっとあったんですよ。 もっぴん そう!絶対みんな感じますよね…最初はゲームが見える画面はもうちょっと小さかったんですよ。ボタンが表示されている部分は全部真っ暗で、そのちょっと上からゲーム画面があってみたいな感じだったんですね。 ースマートフォンに移植されたアーケードのシューティングなんかは親指で隠れないようにゲーム画面を縮小して、UI部分を作ってますね。それに近かったんですか?
スマートフォンで例えばシューティングを移植する際 指で画面が隠れるためこうした形で タッチするスペースにデザインされているケースは多い もっぴん そう、そういう風にしてたんですけど…指で全部隠れちゃうけど、黒で全部(ゲーム画面を)隠さなくてもいいんじゃないかみたいに思ってきて、それで今みたいなデザインにしたんですよ。そしたらなんかもどかしさが生じたらしくて… 最初から画面小さめにしてたら、指で隠れてるっていうこともなかったから、そうすればよかったのかなって反省はあるっちゃあるんですけど。 ー難しそうですよね。スマートフォンのシューティングはそのあたりのもどかしさを解消するのに弾もオートで出て、スワイプ操作にしていますし、「Ridiculas Fishing」も全て片手で出来る形になってますね。プラットフォームに最適化したデザインはそういう形になるのかなと。 もっぴん もちろんスマホだとスワイプ操作だとかティルト操作っていうのが、デバイスとして特化しているというのはわかってはいるんですけど、個人的にはこういうジャンプアクション、しかも結構反射神経を必要とするようなゲームはボタン操作が一番操作しやすいなって思ったんですよ。 「ケロブラスター」も操作しにくいとか、言う人は言うっぽいですけど、ぼく個人的には全く問題はないと思っていて。 ーぼくもそれは思いました。「ケロブラスター」はショットを撃つとき左右上方向にスイッチ切り替えてオートで発射するというのは上手いなと思っていて。 もっぴん そうそう!だからああいうジャンプアクションっていうか、アクションゲーム系はもうボタン操作で行けるんだなってその時思って作り始めた感じですね。 ー「ケロブラスター」はUI部分は完全にゲーム画面と切り分けた形になってますね。
もっぴん PCはそこをヘッドアップディスプレイにしてるから、スマホ版と画面表示のサイズは変わりないし。 ー「ケロブラスター」はこうして考えるとすごいですね。 もっぴん いやあー、すごいです。「ケロブラスター」大好きです。 Downwellのモデル、Spelunkyの影響 ーやっぱり「Downwell」ができるきっかけとして「Spelunky」は大きいじゃないですか。 もっぴん あ、めちゃでかいですね。
「Spelunky」 2009年のクラシック版がフリーでリリースされて以降 2012年のHD版を経た、 ローグライクアクションを代表する一作。 ーどちらかっていうとVlambeerの方法論やゲームデザインの影響などがインタビューなどを読んでも感じられるんですけど、そんな中で「Spelunky」ってどんな形で知ったんですか? もっぴん えーっと、発売されてから結構経ってから知ったんですよ。 ーHD版が出てからってことですか?初期のGame maker studio製のではなく? もっぴん HD版出てもっと後です。なんか、(YouTube観ていたら)スーパープレイ動画が上がっていて、「Spelunky」のこと何も知らずにスーパープレイ動画を観たんですね。 ーもういきなり膨大な敵や罠があってもお構いなしにバンバン言ってクリアしちゃう動画ですかね? もっぴん ああーそうそう、そんな感じ。5分とかじゃなかったかな…5分以下かも。2分とかでクリアしてたかも。まあなんせテレポーター(※アイテムの一つ。進むのに厄介な壁や床などをすり抜けられるため、ものすごく使える)使って、ピュンピュン行って、すぐ終わるみたいなプレイしてて。 ーテレポーターいいですよね!ぼくもよく使って誤爆して死んでた気が(笑)。テレポーターが店に売ってたらすぐ取って、即逃げるんですよね。それが面白くてすぐ店員にやられちゃうんですけど(笑) もっぴん そう、すぐ壁にめり込んで死ぬんですよ(笑)あれめっちゃ面白い。そのスーパープレイ動画を観て興味出て、買ってみたらすごく面白くてっていう感じですね。だから最初から知ってたってわけでは全然なくて。 ー「Spelunky」は相当すごいですよね。ぼくも確かその動画見たんですが、極端な話ハイテンポな感じが「Downwell」ぽい気がしなくもなかったんですよ。「Spelunky」と「Downwell」って基本的な構成がものすごく似てるってのはあるんですよね。 もっぴん ああ、それはめっちゃ意識したんで(笑)。 ー「Downwell」へのデザインの影響をお聞きしたいんですけど、やっぱり上から下に降りて進んでいく構成とか、コウモリやカエルの敵も含めて影響は大きかったんですか?クラシック版は「Downwell」と同じGame maker studio製ですし、ソースコードも公開されています。 もっぴん あっでも僕、クラシック版そんな触ってないんすよ。で、あれもソースコードも見たっちゃ見たんですけど、あまり参考にはならなかったんですよ。 ーあー、そうだったんですか。 もっぴん ランダム生成に関してだけは「Indie game:the movie」(2012年当時のインディーゲーム界のドキュメンタリー映画) の本編じゃなくてEXTRAの所で「Spelunky」の作者のDerek yuさんのしゃべってるところがあるんですけど、それで彼が「Spelunky」のランダム生成がどうやって成されているかを説明してた部分があったんですよ。で、それを見て「うわっ、こんなやり方あるんや!」って真似た感じですね。
「Indie game:the movie」で レベルのランダム生成を解説するDerek yu で、コウモリとかカエルとかになったってのは…あっコウモリの動きのデザインはまんま「Spelunky」ですね。ぶら下がっててプレイヤーがそいつより下に行くと飛んでくるってのは完全「Spelunky」の影響出てますけど。 ー英語版のTwitterのほうであげられてましたけど、完全に初期のころって下のほうに降りると放たれる矢だとか赤いとげだらけの所を下りる死にゲーでしたよね。 もっぴん そうそう!あれはめっちゃ「Spelunky」意識してました。まだガンブーツも考えてなかった時期で、あれは。 ー当時は「Spelunky」型で、井戸の横穴入ってアイテムやショップに入る形じゃなくて道中に宝箱があったりとかショップがある形だったんですかね? もっぴん 武器ゲットするのは、宝箱開けたら出てくるみたいなシステムだったんですよ。でも別に「宝箱開けるワンステップいらなくね?」って思って、単純に除けた感じですね。ひたすら不要な部分を削っていって。 ーデザインの変換を見ていてそれは思いましたね。最初はスマホで遊べる「Spelunky」みたいな形から、コンボでガンガン倒して進むような、「Spelunky」のスーパープレイ動画を恒常的にやるようなゲームデザインに変わっていったってのが面白いと思ったんですよ。 もっぴん そうですね、ガンブーツのギミックをどういうゲームにしたら一番活用出来るかなって考えた時に、やっぱ撃ってるのが楽しいわけだから出来るだけ撃つ機会を与えたほうがいいし、なおかつガンブーツを使うと空中で滞空できるわけじゃないですが。だから滞空もゲームに絡めて…っていう風に考えていったら、常に落ちている状態にする、常に落ちているプレイを促すゲームにしたんですね。 「Downwell」のゲームデザインの変遷 ー「DOWNWELL」は制作の初期から後期までパッと見の画面は一緒のように見えるんですけど、そのゲームの構成やコアな部分はかなりの変換を辿ってると思います。どんな形でいまのデザインになっていったのでしょうか?最初リーゼントの主人公が井戸を降りていくみたいな…
もっぴん あっ、これはリーゼントじゃなくて、アップグレードアイテムで「ガンブーツを頭にかぶる」っていうやつだったんですよ(笑)アップグレードとったらああなったという状態で。でもあれはぶっ壊れ性能だったので、すぐに除けたんです。 ーああ、上方向に攻撃するっていうのは後の完成版のアップグレードの「ジェムを取ると上に弾」や「箱を壊すと上に弾」、それからハートの風船に変更した形ですか? もっぴん そうですねー。あまりにも簡単に上方向の攻撃が可能になるのは、上から迫ってくる敵への緊張感がなくなるので。 ー開発当初だとそこまでガンガン下に降りられずに、コンボも組みづらいレベルデザインになっていましたけど、だんだん今の形になっていったんですね。 もっぴん 全然ガンブーツに関して理解もしてなくて、理解っていうか前例がそんな無いからどういうゲームにしたらいいのかってのも無くて。でも開発を通して理解していった感じですね。 ーそのあたりの話がとても面白いです。開発の変換に関してが興味深いと思ったんですが、頭に偽ガンブーツを被っていた時期のころは、ステージクリア型ではなく、「flappy birds」的なカジュアルな「どこまで下に潜れるか」みたいなチャレンジのような構成だったように見えました。 もっぴん あっそうですね、なんもまだレベルとかも作ってなくて、単純に同じような空間をひたすら降りてくって感じで。まあでもまだあれは開発途中だったから、もちろん変えていこうとその時から思っていたんです。 ー当初の予定から「何メートル下りれた」みたいなチャレンジ系だったのか、それともステージクリア型を考えていたかって興味はあるんですけどいかがですか。 もっぴん 一番最初は何メートル降りれたか?って感じだったんですよ。 ー変な話「flappy birds」みたいな感じだったんでしょうか? もっぴん そうそうそう、無限ランナーみたいな感じだったんですよ。ステージクリアみたいな感じで区切らずに、どれだけ行けるかみたいなゲームがいいのかなあって思って作ってったんですけど…つまんなかったし、なおかつ…えーっと、単純に区切りつけたほうが快感があるなって思って。 ーステージクリア型に変えた完成品を遊んでいて、ぼくは「Nuclear Throne」を想起したんですよ。 もっぴん あーっそれはもちろんめちゃめちゃ影響受けてたんで…で、彼らの(レベルアップ後にステージクリアすると出る)アップグレードシステムの「4つランダムでパワーアップできる能力が出てきて選ぶ」って、めちゃめちゃ天才的だなって思って。
「Nuclear Throne」ではステージ内で敵を倒した後に出る EXPジェムを集めてレベルアップしたのちに ステージクリアするとアップグレードがある。 ーそうですね。あのランダムで選ばれる選択肢の選ばせ方は面白いなっていう。 もっぴん そう!ほんと影響受けましたね!で、4択にすんのはこちらのアップグレード数的に難しかったから3択にして、経験値でレベルアップしてからアップグレードってシステムじゃなくて、毎回ステージクリアするたびにアップグレードっていう風にして。ちょっとだけ差を入れて。 実は最初は経験値システムだったんですよ。ジェムを集めて、経験値バーみたいのがあって。それでレベルアップした状態でクリアするとアップグレードする、みたいなシステムだったんですけど…それはあまりにもパクり過ぎだなあと思って(笑) ー(笑)でも下に降りていくデザインですから、EXP欲しさでもっさり敵を倒していくとコンボの流れも途切れてしまうし、このゲームの本質から離れてしまうのではっていうのはありますね。 もっぴん そうそう、そういうのでうまくかみ合って。 ーぼくがゲームデザインの変換ですげえなあと思ったのは、開発の中ごろくらいではショップから泥棒できるシステムあったじゃないですか。でも完成品で削ってあったことなんです。残念がる声もいくつかあったんですけど、逆にこの仕様を切ることができる割り切りがすごいと思いましたよ。 もっぴん あっマジっすか(笑)
ー個人ゲーム制作で、面白いなって思う要素を足し算でガンガン足していっちゃう傾向あると思うし、思いついたアイディアやアクセントにこだわり過ぎるあまり完成に至らないというケース、よく聞きますので…… もっぴん 本当、シンプルにしていきたかったんで。必要不可欠なものだけを残していう感じにしていきましたね。お店の泥棒システムはほんとは入れたかったんですよ。「Spelunky」大好きなんで。 ー「Spelunky」はステージを攻略するための多彩な選択肢や要素の一つとしてお店が機能してるから、「Downwell」のデザインの中では難しかったでしょうね。 もっぴん そうだったんですよ!そんなこと何も考えてなくて。開発初期の時点で泥棒システムだけ入れて、「まったく機能しねえな」って思いながらもずっと入れてたんですよ。でも、開発まあまあ終盤になってきて、「泥棒システム、まったく噛みあわんな…」と思い始めて。すっげー入れたいけどめっちゃ入れたいけどこう、全然噛みあわない!って思ったから除けて。 ー本当に経験値システムとか泥棒システムとか、どうしても入れたくてしょうがない仕様をかなり切っている印象有りますね。 もっぴん そう、めっちゃ入れたかったんですけどね(笑) ー開発過程を見ているとどんどん本質に近づいてる感じが面白くて。ぼくもレビューで書いたんですが、Gamesturaの「Downwell」のゲームデザインのアナライズを読んでいても、やっぱりコンボシステムがコアにあるよなと考えられてるんですよ。これのある無しでかなり差があるというか。いつ頃思いついたんですか? もっぴん 実はコンボは、なかなかちょっと変な変遷を辿ってるんですけど…めっちゃ最初、ガンブーツ思いつく前にコンボシステムを思いついてたんですよ。ガンブーツ無いから単純に踏みつけていくゲームで、コウモリの大群がいるからポンポンポンポン跳ねていくみたいなゲームだったんですよ。 まあまあ楽しかったけど、大してすごくもなかったからそれはやめて、その後でガンブーツやってったんですけど、「Downwell」作っていく中でコンボはあんま…なんだろう?えーっと…だいぶコアのシステム作りこんだあとで、開発終わる5カ月4カ月まえくらいになって、開発まあまあ終盤らへんかな?で、「めっちゃ最初に入れてたコンボシステム、これ、噛みあうんじゃね?」と思って、入れてって。 ーたぶんショップの泥棒システムは「噛みあわんな」と思ったあたりですかね。 もっぴん そうですねー。その後コンボこれ行けるんじゃないかと思って入れてみたら、行けて(笑)「めっちゃオモロいやん」とか思って。それで、急遽レベルデザインとかもちゃんとコンボできるようなレベルデザインにしていって。 ―それまで武器も下に降りる道中で宝箱であけたりしていて、完成版のように横穴入る形じゃなかったんですよね。コンボが途切れる部分、全部修正した形ですよね。 もっぴん そう。それで噛みあわせていった感じですね。そしたらなんか深みが出て。よかったなあ、みたいな(笑) ーコンボで倒して、たくさんジェムを集めて起きるジェムハイの時の赤い残像も他の作品の影響を受けてるんですよね。あれは「Samurai gunn」のキルストリークじゃなかったですか? もっぴん あの残像は完全に「Samurai gunn」の残像エフェクトがかっこいいから入れたかっただけで、ジェムハイぶっちゃけそんなにゲーム性変えてないのかなと思うんですけど。 センセーショナルな注目を集めた中のゲーム制作 ーやっぱりゲーム開発が長期に渡るとよく聞くんですけど、「自分でデザインして全てわかっているがゆえに、開発している自分のゲームの何が面白いのかわからなくなる」ということはありませんでしたか。 もっぴん あー!ぼくそれ、ずっとでしたよ。発売するまでずっと…「これ、あんまり面白くなくない?」みたいなのをずっと思ってて。コンボシステムとかも入れた時は「これめっちゃオモロくない?」と思ったは思ったけど、でもずっとやっていくうちになんか、ただの作業じゃんみたいな感じがして(笑)。いやなんか、ネガティブになったりはしてて。 ただひたすらプレイテスターとかが、「いや、これはわりとオモロいよ」みたいな感じに励ましてくれたから、まあ面白いのかなあとか思って。ひたすら自分に言い聞かせてやってった感じではありますね。ずっとだから、否定的ではありましたね。 ーテスターさんが周りにいてくれるのは本当にありがたい感じですね。 開発者自身はもうずば抜けて慣れている人間になっちゃっているから、何が楽しくて何が楽しくないとか何が快感かとかかなり麻痺してるんで。そこら辺の情報はテスト以外では得られないですよね。だから、必要不可欠ですね。 ーもっぴんさんはIGF学生部門にノミネートされて以降、個人ゲーム開発者の中でもセンセーショナルな注目を集めることになりました。そんな中で開発を行うことに怖さはありませんでしたか。 もっぴん めっちゃ怖かったっすよ。こんな取り上げられて「ハードル高っ!」みたいな。 ーいきなり厳しいのは想像できます。 もっぴん そう!期待に応えられない…とかめっちゃ思ってて。日本では「学生が~」みたいな感じで取り上げやすいじゃないですか? ーちょっとセンセーショナルすぎるのはありますね。IGFノミネートならず、「実はゲームを作り始めて半年程度だった」って背景もあって、天才が現れた!みたいな。 もっぴん 自分でもまあなんか、そうやって取り上げやすい話なんだろうな~ってのはあって。でもそれでやたら取り上げられたから、ハードル半端なくてプレッシャーがヤバかったですね。本当に。 ーまさか、生活を崩してしまうくらいのことでしたか? もっぴん えっとねー、えーっと…鬱っぽくなった時はありましたよ、正直。リリースして、大したことなくて、みんな「なんだよ。大したことないじゃん」とか言われたらヤベーなとかめっちゃ考えて。…超…超怖かったですね…リリースしたくないとか思いましたね(笑) ーやっぱりそういうときにテスターさんたちの意見とか、Twitterなどを見ると東京インディーズ(月1回で開催される個人ゲーム開発者で交流する会)などで同じ開発者と交流されていたりは大きいですか?ひとりで開発してるというのはヤバそうだと感じますし。 もっぴん やっぱり完全一人で開発してるというのは孤独なんで、Twitterで同じ開発者と喋ったりだの、イベントに行って同じ境遇の人と喋ったりだのというのは、精神状態的に必要だと思いましたね。後はもちろん、そこにいる人にプレイしてもらってフィードバックを得れるっていう点でもかなり意味があるんで。積極的に参加はしてましたね。 これからのこと ー次回作を考えてはいますか? もっぴん 漠然としか考えてないですね。今は(「Downwell」の)android版とかそういうのの作業してるんですけど、とりあえず全部ひと段落ついたらまたGAME A WEEK、一週間でゲーム作るやつ始めようかなって思ってます。 ー次回もまたプラットフォームはスマホを主に考えていますか?それともPCで行くことを考えていますか? もっぴん いやぁー…多分スマホかなあ?個人的にスマホゲーム好きなんですよ。手ごろにできるじゃないですか。いつでもパッて起動できて、ちょちょいとできるのってなんか。 で、なおかつ、スマホでいいのを作れたら、多くの人が持ってるプラットフォームなので、広まりやすいという利点はあるかなと思っています。まだ確定ではないですが!なんにせよがんばります。
VLAMBEERのios買いきりゲーム「Ridiculas fishing」。
もっぴん いや!テスターは必要不可欠ですね。マジで。絶対に必要だと思います。結局は人間にプレイさせるものだから、やっぱ慣れている人間、慣れてない人間両方にとって楽しいっていうものが理想的じゃないですか。
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