大手スーパー株式会社Beisia 多忙にあたいする労働環境の整備を求めて

 組合員の働く大手スーパーの株式会社 Beisiaとは2022年9月時点で過去2度団体交渉を行っています。組合員は2021年4月から学生アルバイトとして、シフト制で現在まで働き続けています。業務内容はスーパーのレジ業務がほとんどで、人手に余りが出た場合は売り場の商品の整理や補充、夕方時の値引き作業などを行います。


◇争議に至った経緯
 当該店舗では年末年始の期間は1月1日が休みになるだけで、その他の期間は364日営業されます。組合員は2021年の年末年始期間のシフトを提出する際に「毎年、親戚と旅行に行くのが恒例なので、休みにしてほしい」とお願いし、副店長に希望シフト表を手渡しました。これまで希望の休みが通らなかったということは無かったので、当然今回も何ら問題なく受理されるだろうと思っていると副店長から「一日も働けないの?それは困るな」と反応されました。

・以下、会話の一部切り抜き

組合員「もうホテルとかも予約してて、キャンセルするとお金がかかってしまうんですけど」

副店長「なんでみんな働くのに自分だけ休もうとするの?このままのシフトなら受け取れないよ」

組合員「年末年始以外も働かせないってことですか?」

副店長「そうだね。年末年始の期間はみんな(レジ従業員)にシフトに入るように協力してもらってるから」

組合員「協力なら働きたくないです」

副店長「働かなかったら他に人に示しが付かないでしょ」

 このようにシフトに入ることはあくまでも協力だと言いながら、書き換えないならシフトを「受け取らない」と伝えられます。結局、組合員はこのとき旅行をキャンセルして、年末年始の約1週間半の間に3日分の勤務を入れることとなりました。
 この翌日、首都圏青年ユニオンに加盟し、加盟当日に「組合加入通知書及び団体交渉申し入れ書」を当該店舗の本社に送付しました。

◇団体交渉申し入れ書の中身
 申し入れ書では争議の発端となった年末年始の期間の勤務をすぐに撤回することを第一に要求し、付随して多忙期の待遇改善やシフト強要が起こる背景にある人手不足の解消を要求しました。
 この他にも、加盟する以前から不満を抱いていた身体負担の軽減のためにレジの椅子設置、多忙期以外の期間での賃上げ、制服の支給化、有給休暇消化の10割支給を要求しました。以下、それぞれ説明いたします。

Ⅰ多忙期の待遇改善
 上記のように多忙期とりわけ年末年始においてシフト強要をする背景には、慢性的な人手不足があります。これに加えて、年末年始という世間がお休みムードになる中で、人手が集まるはずもありません。また、当該店舗ではこうした多忙期において人手不足を解消しようという努力も見られないのが現状です。
 当該店舗では普段から、レジは混雑を極め、レジに列ができない日はありません。そのため当然多忙期では、普段以上に混雑します。それに加えて人手不足によって仕事が過密化し、他の勤務と変わらない待遇ならば、労働者は「働きたくない・可能な限り休みたい」と考えます。こうならないように年末年始に営業する企業では、臨時的な賃上げがされるのが一般的です。しかし当該店舗ではこのような対策は取られていません。
 よって申し入れ書では、組合員がシフト強要を受けた年末年始期間のシフトを取り消すこと、多忙期の人手不足を解消するため、多忙期の時給を200円以上、引き上げることを要求しました。

Ⅱ椅子の設置
 日本の小売店では、レジに従業員のための椅子が設置されているという例は極端に少ないですが、IKEAなどの外資系では椅子が設置されていることもあります。また海外では椅子だけではなく商品がベルトコンベアで流れてきて、従業員はバーコードに通すだけと言う国も少なくありません。隣国の韓国を見ると椅子の設置は以前からされていましたが、最近は座り心地が悪いということから、クッション性の高い椅子に交換されたと報じられました。このように海外ではレジに椅子が設置されているのは、労働者保護の観点からも当たり前とされています。
 当該店舗ではまず、レジに非対応中に座るための椅子設置を求めました。レジの仕事は地味ではありますが、2Lのペットボトルや重い野菜などを中腰になって、持ち上げなければいけないため、腰に大きな負担がかかります。非対応中に立っていなくてはいけない理由は、どんなものであっても合理性は無いと思われます。
 団体交渉での会社の回答は「非対応中であっても、レジ台の掃除やレジ前の商品の整理業務がある」「セルフレジの導入により負担軽減を目指している店舗の立地(田舎)からお客さんが変化することを拒むのではないか」といったことを理由に断りました。しかし、レジ台の清掃や商品の整理などは時間もかからず、ひと手間で終わってしまいます。
 利用客の理解についても組合員の知る限り、椅子に座っているからといって、クレームを入れられるとは考えられません。むしろ現在の人手不足による列や閉店間近の疲れ切った接客の方が失礼に感じ取られてしまいそうです。セルフレジの導入については、既に組合員の働く当該店舗ではセルフレジが8台ほど、使われており常に混雑している状況です。この8台を管理するのは、比較的歴の長いパート従業員が1名で監視し、全て管理しています。組合員が感じるに、これ以上セルフレジを増やすと従業員の負担を考えても難しいです。さらにどうしても1人で監視するには限界があり、すべてに目が届かなことから万引きのリスクが増加すると考えられます。
 上記しているように慢性的な人手不足の中で、新たに従業員を必要とするセルフレジを導入するのは現在の状況に適していないと主張します。
 ベイシアには消極的に組合の主張を退けるのではなく、労働者の身体の負担を守るためにも「働きやすい環境づくり」に着手してもらいたいと思います。

Ⅲ平時での賃上げ
 組合員の働く当該店舗の時給は埼玉県の定める最低賃金956円にわずかに上乗せした960円でした。2022年10月からは埼玉県の最低賃金引き上げに伴い、987円となりました。10月からは数円の上乗せも無く、987円となります。仕事内容はレジ業務が基本なので単純で覚えやすく流動可能な内容です。しかし、慢性的な人手不足により、仕事は過密化し最低限の範疇を越えています。仕事の対価は最低限レベルですが、労働者に求める内容は仕事の過密に加え、細分化されたマニュアルにより負担が増すという状況もあります。
 当該店舗のレジ従業員マニュアルには、非対応中の立ち姿勢は手を体の前に組み、背筋を伸ばした姿勢に命令されます。少し一息を付いて、かごに手を付き楽な姿勢をとれば、すぐに姿勢を正すように指摘されます。また、少しの時間を隣のレジの従業員と話しているのが見つかれば、これも同様に指摘されます。場合によってはレジを移動して、孤立させられます。
 マニュアルにより、細かく業務が指示されたお店では利用客は「接客が丁寧で気持ちが良い」と楽しく買い物ができます。しかし、そうしたサービスの良さの背景には、労働者を最低賃金程度しか対価を支払わず、使い捨てしている状況があります。こうしたレジの細分化は最賃労働者の待遇には釣り合わないと主張します。
 団体交渉の場では「人手不足はセルフレジを活用することで、業務を分散させるよう取り組む」と答えて、頑なに賃上げを実現しようとはしません。またこの回答があったのは第1回の2月ですが、2022年9月時点でセルフレジは増えていませんし、列も分散されたとは感じられません。

Ⅳ制服の支給化
 当該店舗では決まったユニフォームがあり、ポロシャツと冬用の上着、エプロンが支給されますが、ズボンと靴は黒に限定したもので実費負担となっています。ズボンに関しては、スラックスの型に限定され、デニムの生地は禁止されています。ズボンと靴の2点を合わせれば、5,000円は超えてしまいます。現金が必要となって仕事を始めたにもかかわらず、入社してから働き始めるためにいきなり5,000円もかかるというのは酷な話です。特に学生にとって5,000円は安易に出せる額ではありません。
 会社は特定のデザインが決まっているトップスなどは支給して、どこでも買える黒のズボンや靴は実費にしようと考えているのかもしれません。しかし労働者からすれば働くために用意したズボン・靴は勤務時にしか着用せず、プライベートで使おうとは考えません。つまり、従業員からすると特定のデザインがなされたトップスも黒のズボン・靴も扱いは何ら変わらないものです。
 そして生地についても学生が入社前からスラックスを持っているというのは、あまり考えにくく事前に持っているというケースは考えにくいです。持っているにしても、フォーマルなスラックスを汚れる作業服として使いたいとも思わないでしょう。加えてデニム生地を禁止するという規則も合理性をあまり感じられません。デニム生地であれば、スラックスよりかは一般的になるので持っているという人も多くなります。デニムとは元来、作業用の服として生み出され、この上なくレジ業務に適していますが「店舗の顔となるレジ従業員がデニムを履くというのは認められない」と当該店舗は対抗し、デニム生地は接客に適さないとしました。ただ売り場に出てる品出し従業員には現在、デニム生地の着用が認められています。レジ従業員からすると、利用客と接触する点、作業として汚れが伴うことを考えれば、レジ従業員か否かで判断するのは不合理であると考えます。

Ⅴ有給休暇消化時の10割保障
 組合員は入社から6カ月たったころ7日分の有給休暇を所持していました。翌月11月には組合員の私情により、7日分すべてを消化しました。翌月に支給額を確認すると組合員の計算と半額ほど差がついていることに気付き、店長に問い合わせをしました。
 組合員の契約書の所定労働時間は17~21時となっていますが、シフト制の働き方なので、実際の勤務時間は自由に選べます。そのため、組合員は入社当初から13~21時で勤務をしていました。すると1日あたり約7,000円稼いでいるはずだったのが4,000円弱となっています。これについて団体交渉の場で確かめると、契約書に記載している時間帯で支給額が決定していました。つまり13~17時分が支払われていませんでした。
 この未払い分を支払うよう要求し、団体交渉で支払うと回答されました。

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