2010/02/12(Fri)
前回までで、判断材料はすべて出揃いました。本当に以上のような視点の下に投資企業を選択しています。
じゃあボクの投資企業はすべての条件を満たした企業のみに投資しているのかと言われれば、答えはNoです。
どこかが欠けていてもどこかがそれを埋め合わせる形で突出していて、トータルで見たときに魅力的であれば投資は行います。
もちろん、全部満たしてくれている企業もありますので、そこには必ず投資します。
しかし、一部が欠けていても投資はする、と書きましたが「欠けている」と言ってもそれはその事項が「平均並み」という意味です。それが平均以下であればその企業には投資しません。
もちろん、今まで挙げた事項をすべて満たさなくても大きなリターンをもたらしてくれる企業はたくさんあるでしょう。その方法も様々あると思います。
しかし、ボクの目的は「長期にわたって少ない動きで大きなリターンを得続ける」ということなので、それを確実に達成させるためにかなり絞り込んでいるわけです。
「それだけリサーチしてリターンが上がらなかったらどうするの?」とお思いの方もいらっしゃるかもしれませんが、もしそうなればボクの腕が未熟だったというだけのことでしょう。
時にファンダメンタルズ分析は「苦労の割に報われない」と言われます(ボクも昔はそう思っていました)が、今はそうは思いません。
むしろやり方さえ間違わなければ(おそらくここが大事なのでしょう)確実に報われると思っています。
というわけで、ボクはフィッシャー大先生に運命を委ねました(笑)。
正直定性分析さえスカらなきゃ何とかなると思っていますので、数字だけではない部分をしっかり見ていけるようこれからも勉強していきたいと思います。
・・・とはいえ今のところ投資先を増やす気はないので、今保有中の企業の中から大化けしてくれるものが現われることを願いましょう(^^)。
このシリーズ、なんだかんだで予想以上に長々と書いてしまってすいません。
読んでくださった皆様、ありがとうございます。
このシリーズが何かの参考になれば幸いです。
というわけで明日からは以前のようにつぶやいていきますので、よろしくお願いします。
2010/02/11(Thu)
長かったチェック事項、今回がいよいよ最後です。最後は・・・
○その企業は大規模な増資によって一株あたりの価値が薄められてしまう可能性が無いか
要は財務基盤はしっかりしているか、ということです。
えっこれ最後なの?と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
確かにB/S(貸借対照表)やP/L(損益計算書)、C/S(キャッシュフロー計算書)は大事なのですが、これまでの事項を考えれば、この事項が前項までほど大きな意味を持たないことがお分かりいただけると思います。
そもそも優秀な経営陣を抱えていれば、財務基盤はしっかりさせた状態(少なくとも潰れたり、大規模増資をしない範囲内)で成長させてくれる可能性が高いですから、あまり深く考え過ぎる必要はないのです。
もちろん財務は良好なのに越したことはありませんから、しっかりチェックはします。
イメージとしては「B/SとC/Sで下を見て、P/Lと定性で上を見る」と言ったところでしょうか。
ここで投資を敬遠するとしたら、
「営業CFが二期連続でマイナス」
「棚卸資産が異様に多い(又は増えている)」
とかだと思います。
個人的には前者は特にいやです。やっぱ営業CFが黒字って言うのは必要最低限な気が・・・。
ですが、ここまでの事項をクリアしてきて最後のこの事項に引っかかって落とすということはほぼありません(少なくともボクの保有企業では起こりませんでした)。
それに仮に増資を行ったとしてもそれによって希薄以上のものをもたらしてくれるならば長期的には問題ないわけで、まずは急速に経営が悪化しないような状態であることがわかれば十分だと思っています。
とか言いながら、ボクの保有企業は(狙ったわけではないのですが)結構B/Sが強固なんですけどね・・・(笑)。
と言うことで、チェック事項は以上で終了です。
次回は総括として、この事項をどう生かしているのか(すべてクリアしていなくても投資する場合など)について書いてみたいと思います。
2010/02/10(Wed)
さて、もう少しでチェック事項も終わりです。
○その企業は投資に値するだけの利益率を確保しているか
良い商品を作っていても売れなければどうしようも無いのと同様に、売上が伸びても利益が伸びなければどうしようもありません。
やはり、売上とともに利益が伸びる(できれば売上以上に利益が伸びるのが好ましい)企業に投資したいですから、収益体質は必ずチェックします。
具体的には、主に同業他社との営業利益率を比較することが多いです。
ただ、有利子負債が多い企業にあっては支払利息が足を引っ張る場合もありえますから、経常利益を中心に見ていくこともあります。
加えて利益率は単年ではなく、ある程度眺めのスパンで変遷を見ることにしています。
なぜなら、長期的にコスト削減計画を実行しているかをチェックするためです。
今回のような不況になると「収益性の改善に努めました」という趣旨の文章がレポートに載ることが多いですが、それは素晴らしいことでも何でもなく、当たり前のことです。
そのようなことは基本的に好況不況関係なく行っていくべきものですから、景気拡大と共に企業の財布がゆるんでいくようでは長期的な発展は望めません。
以上のような理由から、複数年で利益率は見ていくことにしていますが、気をつけているのは仮にコストが削減されているならばそれが何によって起こっているのか、ということです。
基本的にコスト削減は望ましいことではありますが、望ましくないコスト削減が一つあります。
ここまでこのシリーズを読んでくださった方ならお気づきでしょう。
それは、人件費の削減です。
どんなに厳しいときでも基本的に人(従業員)を大切にしてくれる企業が良いですし、好景気に入って成長しているのに従業員数を減らして筋肉質な企業体制を作り、不況になっても景気が厳しいからという理由で大幅なリストラを行ってさらに数を減らしている企業もありますからね・・・そういう削減は勘弁です。
ちなみに先ほど、「基本的にコスト削減は望ましいこと」と書きましたが逆に利益率が下がっていても許される場合もあります。
それは、先行投資による場合です。
大きなプロジェクトにより多額の研究開発費を計上する、人を大量に採用して人件費が増える・・・そういう理由なら利益率が低くても問題ではありません。
ただし、この場合は他のチェック事項に普段以上に気を配るようにしています。
その先行投資が本当に企業の爆発的な成長に必要なものであるかをしっかり見極め、十分な効果が出るかを見定めないと、その負担が何の利益も生まないからです。
このように少々例外はありますが、そのようなちょっと特殊な場合を除いてはやはり他社より利益率が高い企業を選んでいます。利益率が高い、ということは他社よりうまくコストコントロールを行っている、という証拠でもありますからね。
というわけで今回はこの辺で。長々と書いてきましたが、チェック事項は次回で最後です。
ここまでの調べる順番は基本的に順不同(あ、でも企業規模とマーケットの比較が最初かもしれません)なのですが、次回挙げるチェック事項は順番が必ず最後です。
「今さらそれ?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません・・・フィッシャーの著書をお読みの方は想像がつくかもしれませんが、明日のお楽しみ、ということで(^^)。
2010/02/09(Tue)
さて、もう少し分析事項は続きます。
○業界特有のスキルを重視しているか
これは一概に言うことはできません。
例えば小売業だったら居抜出店などの出店方法やFC展開が挙げられると思います。
やはりこの辺をうまく活用していける企業は成長していけるのでしょうから、出店費用などには十分注意したいところです。
加えてFC展開を行っている場合はどのような基準でFCと直営を区別しているのかも調べたりします。
一方製造業系は何と言っても研究開発です。ボクの好みは研究開発型企業ですので、ここは結構力を入れます(あ、記事ではなく分析にです(笑))。
と言ってもボクは理系ではありませんし、材料とか成分とかについてはわかりません(^^;)。
調べるのは過去10年くらいの研究開発費の推移(売上高に占める割合や開発費の伸び(比率、絶対額など))やその費用の内訳(成長分野に費用を十分投じているか)、研究開発の伸びと利益の伸びとの比較などです。
製造業は研究開発をしていかなければ競争に勝ち残るのはなかなか難しいでしょうから、基本的にどんな時でも開発費をしっかり計上している企業に投資します。
もちろんその分野での利益がその後にしっかりと上がっていることが前提です。
それに、研究開発費って収益の足を引っ張ってミスプライシングの原因になりやすいのでその点でもありがたいんですよね。
もっとも、IFRSが導入されたら一部資産計上が認められますのでどうあるかわかりませんが・・・。
では続いての事項へ。
○営業に力を入れているか
いくら良い商品を作っていても、売れなければどうしようもありません。競争相手が存在しない分野などありませんし、他社を出し抜いて成長するためには「買ってもらうための対策」がどうしても必要です。
これについては前項と同様に分野によって事項が異なると思います。
小売業などのB to Cの企業だったら広告宣伝費や割引キャンペーンなどについて調べますし、B to Bだったら営業所が全国に配置されているか(進行中含む)を調べます。
取引社数を公表している企業だったらその推移も重要視します。
ただ、営業力は調べるべきものがほとんど見当たりませんのでできることはこれくらいしかありません。
あとは前記事で書いた従業員の事項からと併せて推測するくらいです。
ここについては改善の余地があるような気がしますのでもっと良い方法を模索中、と言ったところですね。
というわけで今日はこれくらいにします。ここまで来ると事項は残り少ないのでもう少し、お付き合いいただければ幸いです。
2010/02/08(Mon)
今回は従業員についてです。
○従業員が満足に働けるような職場であるか
もちろん経営陣も大切ですが、従業員もまた大切です。
実際に企業を動かしているのは彼らだといっても過言ではありませんし、企業は雇用の受け皿としての役割もあると思っているので、その責務をしっかりと果たしているような企業でなければ投資したいとは思いません。
彼らに尊厳を与え、彼らが力を十二分に発揮できる環境を整えるのも企業の大切な仕事だと考えています。
そのことについて見る一つ目は従業員数の変遷。
リストラによって収益体質を改善する、というのも一理あるのでしょうが、上に書いたように企業は雇用の受け皿としての役割も求められますし、従業員が安心して働ける環境を作るためには極力大規模なリストラなどはしないのがその一歩だと考えています。
ですので、従業員は横ばいか、増えていっているのが望ましいです。
続いては平均給与。
もちろん給与額だけで決まるとは思っていませんが、給与は生活を支える大切な資金です。
やはり同業他社と比べて明らかに低ければモチベーションが下がったり、転職してしまう可能性も出てきてしまうので少なくとも平均以上が良いのですが、次の事項の結果によってはここはあまり考慮しません。
それは、平均勤続年数です。
良い職場とは少しでも長く働いていたいと思わせてくれるような職場ですので、同業他社と比べた勤続年数は非常に大事にしています。
多少給与が低くても、ここが他社より長ければそこの職場には何かそれとは別に魅力的なものがあると考えて差し支えないでしょうし、長く勤める環境があれば訓練経費も節約できます。
加えて優秀な人材を企業の内部においておけるというメリットもありますし、従業員についての事項では最も大事にしています。
ここが明らかに平均より短ければほぼ100%投資しません。せめて平均より少し上、出来れば完全に上の企業を探しています。
少し前にも書きましたが、やはり「企業は人」だと思っていますし、人を大事にしない企業に長期的な成長は望めないと思っていますので、少々暑苦しくはありますがこの辺も大事にしています。
従業員についてはこんなところです。分析事項は、もう少し続きます。