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「年賀状じまい」の流れで絶縁するのは大損失! 3年計画でダメージをなくそう
2022年12月22日 06:55
10年程前から「終活」という取り組みが注目されるようになっています。
明鏡国語辞典(第三版)によると、その意味は「人生の終わりについて考え、墓や遺言、遺産相続などの準備をすること」となります。死後に残すものを極力減らす取り組みとも結びつきやすく、「断捨離」や「墓じまい」などが含まれることも少なくありません。
それ自体は悪いことではないのですが、なかには家族にとっても大切な思い出の品々を断りもなくごっそりと捨ててしまったり、一族が知らないうちに実家のお墓を都心に移してしまったりというトラブルを起こすケースも見られます。せっかく終活しても周囲の人たちを残念がらせたり困らせたりする結果になるのは何とももったいないことです。
年賀状じまいは絶縁とは違う
この残念な落とし穴は、最近話題になっている「年賀状じまい」にもあります。年賀状じまいとは、長年年賀状のやり取りをしていた相手に「今年で年賀状のやり取りをおしまいにしましょう」といったことを伝え、翌年以降は年賀状のやり取りをなくすことで、終活の一環とも捉えられています。
しかし、年賀状じまいをきっかけに滅多に連絡を取らない人や、もう会うこともないかもしれないけれど近況だけは知れた人との関係性まで切ってしまうのは、本来しなくていい絶縁といえます。たとえ細いつながりであっても縁は縁。手間を惜しんで切ってしまうのは、やはりもったいないことだと思います。
日本郵便によると2023年向け年賀状の発行部数は16億4000万枚で、前年より1割も少なくなっていますし、減少傾向は12年続いています。いまの季節に量販店などの年賀状売り場に行けば、年賀状じまい用のデザインはがきもたくさん並んでいます。もはや年賀状じまいは時代の流れという側面もありそうですが、何も人間関係まで「しまう」必要はないでしょう。結果的に、はがきを準備して宛名を書く手間、そして、先方に同じような手間をかけさせることだけがなくなればいいのではないでしょうか。
現在はそんなダメージの少ない年賀状じまいを実行するのに追い風が吹いています。最近の傾向をおさえ、安全な年賀状じまいを実践しましょう。
この5年間でシニアのSNS使用率は急上昇
ここ数年間のSNSの浸透ペースは目を見張るものがあります。
総務省が毎年発表している「通信利用動向調査」によると、SNSの利用率は5年の間に大きく上昇しました。とりわけ60歳以上の伸びが著しく、60代は2017年に3割程度だったところから7割超に、70代も2割弱から6割強の人が利用するようになっています。
その背景のひとつにスマートフォンの普及があります。60歳以上の人のスマートフォン利用率も同じように急上昇しているのです。60代は5割未満から約8割に、70代は2割未満から過半数に達するまでに伸びました。
スマートフォン所有率が伸びた大きな要因として、3G通信の終了が挙げられます。2024年1月にはソフトバンクが、2026年3月にはNTTドコモが終了を予定しており、auは2022年3月時点で停止済みです。それまで愛用していたフィーチャーフォンが使えなくなり、やむなく4G以降の端末(ほとんどがスマートフォンです)に移行する人が急増。その結果、スマートフォンと相性のよいSNSの利用も同時に進んだとみることができます。
つまり、現在はシニア層を中心に「ここ数年の間にスマホデビューしてSNSを始めた」という人がとても増えているのです。日本人のスマホユーザーの9割が利用しているといわれる「LINE」も含め、何かしらのオンライン上のIDを所持していることが世代を問わず当たり前になりました。
「年賀状じまい」を「SNSはじめ」のきっかけに
この機に乗じ、年賀状に自身のSNSや「LINE」の情報を書いてそちらに縁をつないだ上で、年賀状のやりとりを終わらせるというわけです。SNSアカウントを持っていないのなら、年賀状後につながるために作って、年賀状じまいと「SNSはじめ」を並行して実行するのも良いでしょう。
「Facebook」や「Instagram」、「Twitter」、「TikTok」なら、自身のアカウント名をはがきに書いておけば検索してもらうこともできます。「LINE」も同様に、LINE IDや携帯電話番号を記載して「LINEやっています。つながりましょう」などと添えられます。
ただ、自身のSNSページを氏名や電話番号で誰でも検索できるようにしておくことはリスクを伴います。利用しているサービスごとに詳細は異なりますが、多くは検索に使える情報を制限したり、ページを非公開にしたりできるので、長く安全に使えるように設定した上で投函することをお勧めします。
なお、高齢の両親の代わりに年賀状じまいする場合は、上記の設定に加えて、ご本人がSNSや「LINE」がある程度使えるようになるところ、できれば楽しく利用できるところまでナビゲートするのが理想です。
1年目は情報提供、2~3年目で移行
以上を踏まえて、1年目はまずは先方に選択肢を提示し、オンラインでつながりが持てるようになった人には2年目で年賀状じまいの意志を伝え、3年目以降は年賀状だけでつながっている人にのみ送るといったスタンスにすれば、年賀状じまいが人間関係の損失に直結することは避けられそうです。
とはいえ実際は、生活の変化や喪中などを機に年賀状を書かなくなる(書けなくなる)ことも多いでしょう。年賀状だけのつながりに必要性を感じなくなることも、単純に怠け心から出さなくなってしまうこともあるでしょう。私も7年前に年賀はがきを買わなくなりましたが、明確な理由はなく、何となく年賀状じまいをしてしまいました。
ただし、そうであってもダメージの少ないコミュニケーションツールの移動方法を考えておくことは、これからの人間関係においても意味があることだと思います。
オンラインだけをみても、コミュニケーション手段は多岐にわたります。「メールだけ」「LINEだけ」と制限すれば自分の首を絞めるような状況です。交流する人によって最適なツールは異なり、それぞれ調整していく必要があります。多彩なコミュニケーションツールを柔軟に使い、移行できないと人間関係を円滑に維持するのは難しくなっています。
そんな現代において、年賀状じまいはチュートリアルにも似た行為なのかもしれません。