[書評]果てなき渇望 ボディビルに憑かれた人々(増田晶文)
それほど気にしているという問題でもないし、自分の周りで見かけるということでもないのだが、いやほんと気にしているわけでもないのだが、誤解してほしくないわけだがそこ、その、つまり、女性ボディビルダーのバストというのは、どうなっているのか?
果てなき渇望 増田晶文 (草思社文庫) |
「果てなき渇望 ボディビルに憑かれた人々(増田晶文)」(参照)を読んだら、答えが書いてあった。男性のボディビルダーと女性とは違うが、として。
とはいうものの、コンテストで勝つために女性ボディビルダーたちは究極の筋肉を求める。ステージで肉体を誇示するのに、筋肉を覆う脂肪は邪魔だ。女性ボディビルダーたちは乳房を大胸筋に、お尻は臀筋群に仕立てて、ウエストは腹筋を浮き上がらせなければいけない。神が配分した分厚い脂肪を削ぐには極限に近いダイエットが必要となる。
あれは大胸筋であったのか。
ということなのだが、どうなのだろう。これで解決したわけでもないが、いずれにせよ、その手の話題がこの本の第2章「女子ビルダー」に書かれている。
他にも、想像はしていたけど、脂肪が15%を割ると生理が止まるという話もあった。それでいいのかというのは、この章の話題にも当然なっている。
第1章は「コンテスト」とあって、男子ボディビルダーたちが人生のすべてを投入してボディビルダーにいそしむ姿が描かれている。冒頭は、スポーツライターらしい文体で三島由紀夫の逸話ある。挿話はどれも、ものすごい。タイトルの「果てなき渇望 ボディビルに憑かれた人々」ということが確かに伝わる。第3章は「禁止薬物」で、一部のボディビルダーが利用する薬物とドーピングの話題になり、終章は「生涯をかけて」として60代のボディビルダーを描いて終わる。
面白い。ボディビルダーたちに密接に取材してよく内情が書き込まれいる。さらに、いわゆるスポーツライターの作品を微妙に越える部分さえ、かなり追い込まれている。なぜ彼らはボディビルに没頭していくのかという問いだ。
自分が変容していくということへの渇望。しかも、自己像として他者からも見える肉体が変貌していくことへの渇望がなぜ起こるのか?
強くなりたい、美しくなりたい、あるいは自己愛、など。なんらのありがちな表現で済むことかもしれないが、おそらく、肉体を越えるために肉体に執着するとでもいうような超越への渇望が、人間の存在の根底に潜んでいるだろう。その片鱗がボディビルダーからうかがえる。
その根底にあるものは何なのだろうか。うまく言い切れないその問いの重さを、この本はとても上手に描き出している。
本書は 2000年に草思社から出版され、昨年の2012年に同社から文庫化された。内容は基本的に2000年以前の話で、現代のボディビルからすると一時代前の話のようにも思える。技術などはだいぶ変わった面もありそうだ。が、ボディビルの本質的な部分にはあまり変化はないだろう。その意味で本書は長く読み継がれそうにも思うし、読んで心にぐさっと来るものがあった。
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コメント
ご参照いたします。ありがとうございます!
投稿: ダイエットマルコ | 2013.08.26 16:53
たんぱく質重視の食事に切り替えて、筋力トレーニングしているわけじゃないけど、胸と背中がポカポカするようになった。うっすらと筋肉が増えているもよう。秋になって、涼しくなったら、週一でも、筋肉負荷をやってみようかしら。
食後がいちばん、胸が温かくなるから、最初は胸焼けかなぁと思ってはみたけど、気持ちがいいので。まぁ、肺が外気で冷えなくなるからだとは思うけどね。ただ、今年の熱帯夜はキツかったなぁ。窓を開けて裸でも暑い。昨年までなら風邪ひいてたのに。
投稿: | 2013.08.27 08:45