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2017年6月5日月曜日

The Brink/史上最低の作戦

The Brink/史上最低の作戦
The Brink
2015年 アメリカ 1シーズン10話
監督:ジェイ・ローチ、マイケル・レーマンほか

アメリカがひそかに化学攻撃をおこなっていてパキスタンの男たちから性的能力を奪おうとしていると信じる軍人ザマーンがクーデターを起こしてパキスタンの政権を奪取、とりあえずテルアビブに核攻撃をすると宣言するのでアメリカは第五艦隊に出動を命じてパキスタンの核施設破壊を計画するが、下半身にまったく抑制がなくてアジア人の女に絞殺されることを考えて興奮するラーソン国務長官はピアース国防長官と激しく対立して平和裏に解決することを提案、心がひどく動きやすい大統領はラーソンに時間を与え、イスラマバードでかつてラーソンの女衒として活動したことがある在パキスタン大使館職員で国務省下級職員のアレックス・タルボットがまったくの偶然からザマーンの病歴を記したカルテを手に入れると、ラーソンはタルボットに対してザマーンの弟でラーソンの大学時代の学友であったラジャとの接触を命じ、ラジャにクーデターを起こさせてザマーンを排除しようとたくらむが、そのあいだにインド洋から偵察に飛び立ったF-18は飲むべき薬を間違えたせいでインド軍のドローンを誤って破壊したあとパキスタンの対空砲火を浴びて撃墜され、脱出したパイロットはタリバンの支配地域に降り立って正体不明の状況に出会い、インドの外相はラーソンが自分を侮辱し続けていると憤慨し、中国軍はカシミールの部隊を増強し、イスラエルはイスラエルで先制攻撃の準備に移り、アメリカ軍も総攻撃の準備を整え、気がついたらロシア軍がエストニア国境に集結していてエストニアのことは我々にまかせてくれと言ってくるので、これはもう第三次世界大戦は避けられない、というHBO製作のミニシリーズで、1話30分、全10話のシットコム。
パイロット版の監督をジェイ・ローチが担当し、残る7話のうちの4話をマイケル・レーマンが担当している。ラーソン国務長官がティム・ロビンス、アレックス・タルボットがジャック・ブラック。ティム・ロビンスがこれまでに見たなかでは最高にいい。プロットはワシントンからニューデリー、テルアビブ、ジュネーブ、再びワシントンと飛び回るラーソン国務長官、イスラマバードでパキスタンのインテリ一家から激しい軽蔑を浴びせられる俗物アレックス・タルボット、最高のパイロットと言われながら、実際のところパイロットなのか麻薬の売人なのかよくわからないF-18のパイロット、ジークの3軸で進み、その周辺には結果を予想しないで自動的に思考する政治的怪物多数が出現する。素材の組み合わせの複雑さ、展開の小気味のよさ、そしてなによりも頭のよさがとにかくうれしい傑作である。
Tetsuya Sato

2015年8月26日水曜日

ナイト・スワローズ 空爆戦線:ユニット46

ナイト・スワローズ 空爆戦線:ユニット46
Nochnye lastochki
2013年 ロシア 376分 TV
監督:ミハイル・カバノフ

『対独爆撃部隊ナイトウィッチ』と同じく、第46親衛夜間爆撃航空連隊を舞台にしたテレビシリーズ。冬に撮影されているのでポリカルポフPo-2も冬季仕様で白く塗られている。DVD2巻はおおむね45分の8話構成で、やたらと美人率の高い飛行士たちが爆撃任務をこなしたり、地上の陸軍偵察部隊と連携したり、偵察部隊の兵士たちと恋に落ちたり、とにかく陰険な政治将校を殴ったり、ドイツ軍による化学兵器使用の証拠を見つけたり、ドイツ軍陣地のサーチライトを精密爆撃で破壊したりしていると、クェンティン・タランティーノにそっくりのドイツ軍情報部の将校が「おのれロシアの魔女め」と罵ってややこしい陰謀をしかけたり、怪しい博士が発明した個人用の暗視装置をメッサーシュミットのパイロットに渡して襲わせたりする。見ていると全体に規律はゆるめで、陰険な政治将校も途中で退場するし、指揮官の大佐はみんなに愛されるおじさんだったりする。どちらかというと色恋の部分が多くて戦争はどうかするとついでにやっているように見えなくもないが、第二次大戦を扱ったロシア製のテレビシリーズとしてはお金がかかっているほうだと思う。ポリカルポフPo-2の実機はおそらく一機のみだが、輸送用にDC-3が登場するほか、ゲストでT-34が登場して雪煙を上げて疾走する。 


Tetsuya Sato

2014年6月18日水曜日

ボルケーノ in ポンペイ 都市が消えた日

ボルケーノ in ポンペイ 都市が消えた日
Pompei
2007年 イタリア 182分 TV
監督:ジュリオ・バーセ

ローマの騎兵隊長マルクスはめでたくヴァレリアと婚約するが、その直後に東方属州へ派遣されて戦闘(ユダヤ戦争?)で倒れて捕虜なり、数年後、ポンペイに帰還すると先般の震災で両親を失ったヴァレリアは偽の登記書類によって家を奪われて兄夫婦とともに造営官の家で働く奴隷となっていて、親切な造営官はマルクスの話を聞いてヴァレリアとその兄夫婦を奴隷から解放することを約束するが、その晩、造営官は何者かに殺害され、近くにいたヴァレリアの兄が犯人として逮捕され、奴隷による殺人事件であることから兄とともに造営官のほかの奴隷も処刑される可能性があると判明するとマルクスはヴァレリアを救うためにローマへ走ってティトゥス帝に直談判して捜査権を手に入れてポンペイに戻り、造営官殺害の謎に迫っていくと造営官の書斎から黙示録の一節を記した断片が見つかり、ポンペイ市内に潜伏するキリスト教徒からの情報を得ると断片は全部で四つになり、その裏に記された地図から先般の震災で失われた記録保管所がそのまま地中に埋もれていることがあきらかになり、マルクスはヴァレリアの家を奪った詐欺行為の証拠をつかんでその犯人であるポンペイの執政官が造営官殺害の犯人であると推測し、そのころヴァレリアはその執政官が皇帝暗殺をたくらんでいることを知り、知らせを受けたマルクスは友人の護民官ティベリウスのもとへかけつけるが、ローマの大火によって両親を失い、キリスト教徒に憎しみを抱き、帝国の腐敗を嘆くティベリウスは皇帝暗殺計画の一味であったので、マルクスは捕えられて地下牢につながれ、ヴァレリアは邪心を抱くポンペイの執政官の寝室へ連れ去られ、執政官の手がヴァレリアのふとももに迫ってあわやというところでヴェスヴィオ火山が大爆発。
長さ不明のオリジナルを3時間に縮めた短縮版で火山の爆発までにおよそ2時間半、ポンペイとして登場するのは別のテレビシリーズで使われたローマのセットではなかろうか。中身はまったくの昼メロで、悪いやつはひたすらに悪く、火山が爆発すると悪いやつの頭に破砕物が降り注ぐ。降り注ぐ火山灰、降り注ぐ噴石などの描写にはいちおうの力が入っているが、爆発や火砕流のCGはテレビ映画としてもかなり粗い。


Tetsuya Sato

2014年3月8日土曜日

フェイル・セイフ(2000)

未知への飛行
Fail-safe
2000年 アメリカ 86分 TV
監督:スティーブン・フリアーズ

CBSで生放送されたドラマだという。内容は シドニー・ルメットによる1964年版の事実上のリメイクであり、脚本も64年版と同じウォルター・バーンスタイン。
大きな違いは64年版よりも30分短いことで、切られているのは爆撃機の飛行シーンとカッシオ大佐の両親についてのエピソード、ワシントンの夜会とそれに続くドライブの場面である。夜会の場面が削られた結果、好戦的な政治学者の台詞は国防省のシーンにまとめられることになって、結果として政治学者はさらに好戦的な発言をすることになる。これ以外の大きな変更は、爆撃機の編隊長が64年版よりもクローズアップされていること。これは演じているのがジョージ・クルーニーだからであろう。編隊長を説得するために呼ばれる家族は妻から息子に変更されている。これはおそらく時代の反映であろう。ちなみに妻は死んでいるという説明があった。戦略空軍司令部での副官カッシオ大佐の暴走もいくらか変更されていて、これはそのせいで状況が間抜けに見えるようになってしまった。64年版ではロシアとの電話を切ってから内輪でもめている。大統領役がヘンリー・フォンダからリチャード・ドレイファスに代わったことで、ホットラインの場面で受ける印象は全体に柔らかくなったようだ。これもおそらく時代の反映であろう。なにしろ64年版が作られた当時は、現実の話だったからである。
なぜこれを今、というのが正直な感想だが、作り手の基本的な関心はフェイルセイフ・システムではなく核兵器の廃絶にあったようで、そのために冷戦中の核の恐怖を思い出させるという主旨であれば、たぶん成功している。演出は手堅いし、場面数の多い高度な芝居を生放送でやったという勇気は十分評価に値すると思う。 


Tetsuya Sato

2014年2月17日月曜日

リバーワールド

リバーワールド
Riverworld
2003年 アメリカ 97分 TV
監督:カリ・スコグランド

スペースシャトルの事故で死んだ宇宙飛行士ヘイルは水中で目覚めて怪しい光景を目撃し、浮上して自ら出ると見知らぬ場所にいる。ヘイルの後からも水中から続々とひとが現われ、その誰もが死んだ経験を持っていて、死んだ時代も場所も違う。
恐ろしいことにフィリップ・ホセ・ファーマー『リバーワールド』の映像化。
ただ全人類が一度によみがえるのではなくて、少なくとも十年くらいのスパンで順番によみがえっているらしい。だからウマにまたがった蛮族のようなものがすぐさま出現し、サム・クレメンスのリバーボートは進水を間近に控えている。聖杯などの設定はそのまま登場するものの、リチャード・バートン、ジョン王などは登場しないし、肝心な川が視覚的にほとんど重要視されていない。蛮族は間もなくネロ(ネロとも思えないほど戦闘能力が高い)に乗っ取られ、サム・クレメンスのグループとことごとに対立するのが話の主軸になっていて、その対立に多くの時間を割いた結果、相当に奇想天外な設定はいつの間にか投げ出されてしまう。十九世紀的な人物が十九世的な科学思考でなんでもやり、そこへからむ歴史的な人物が歴史的ないかがわしさで性懲りもなくなんでもやる、という原作の前向きな雰囲気はこのテレビ映画にはどこにもない。凡庸で退屈なだけ。

Tetsuya Sato

2014年2月5日水曜日

トリフィドの日(2009)

ラストデイズ・オブ・ザ・ワールド
The Day of the Triffids
2009年 イギリス/カナダ 180分 TV
監督:ニック・コパス

トリフィドから代替燃料を採取するトリフィド農場の技術者ビル・メイソンはトリフィドの毒のせいで目が見えなくなって頭に包帯をして入院していると上空では太陽嵐による天体ショーが始まり、プラズマの放射によって天体ショーを見ていたひとはことごとく失明し、事故が起こり、飛行機が墜落し、得体の知れない狂信者がトリフィド農場のトリフィドを解放するのでビル・メイソンはトリフィド対策を呼びかけるが、コーカー少佐の率いるグループに捕えられて失明者の介護や食料集めを強要され、コーカー少佐の配下にいる得体の知れない男トレンスがコーカー少佐を排除してグループを支配し、ビル・メイソンはコーカー少佐とともに森へ送られてトリフィドの餌食になるところを危うく逃れてヴァネッサ・レッドグレーヴ扮するところの院長がいる修道院にたどり着くが、ここでも異常なことがおこなわれているので、ビル・メイソンはトリフィド研究の大家である自分の父を捜して旅立ち、一方、ビル・メイソンの事実上に恋人であるBBCのアナウンサー、ジョー・プレイトンはトレンスの悪をあばいてロンドンを逃れ、森でブライアン・コックス扮するところのビル・メイソンの父に拾われ、父のもとにたどり着いたビル・メイソンとの再会を果たし、ビル・メイソンの父はすでにトリフィド対策を完成させているものの、例によってばかげた理由で命を落とし、そこへビル・メイソンを追ってトレンスの一味が現われる。
ジョン・ウィンダム『トリフィドの日』の(たぶん)三度目の映像化で、BBCによる(たぶん)二度目のドラマ化。これまでの映像化ではおそらくもっとも費用がかかっていて、トリフィドもふんだんに登場するが、その分、余計なホラー色やサスペンス色が強くなり、原作のプロットは大きく単純化され、登場人物もアホウになっている。 
 ラストデイズ・オブ・ザ・ワールド【完全版】 [DVD]
Tetsuya Sato

2014年2月4日火曜日

トリフィドの日(1981)

デイ・オブ・ザ・トリフィド
The Day of the Triffids
1981年 イギリス 157分 TV
監督:ケン・ハナム

トリフィドから代替燃料を採取するトリフィド農場の技術者ビル・メイソンはトリフィドの毒のせいで目が見えなくなって頭に包帯をして入院していると上空に流星雨が現われて、この天体ショーに見入ったすべてのひとが翌朝までに失明し、看護婦も医師も現れないのでビル・メイソンは自分で包帯を解いて外に出て生き残るために失明した人々を見捨てようというグループに加わり、失明した人々を見捨てないというグループに捕えられて失明した人々の面倒を見ることを強制され、そうしているうちに疫病が流行って人々が倒れ、グループも崩壊するので恋人を探し求めて田舎へ走り、恋人との再会を果たしてトリフィドを駆除しながらどうにか生活を立てていくが、そこへ新秩序をもたらそうとたくらむ新たなグループが現われるので、ビル・メイソンは仲間とともに脱出する。
ジョン・ウィンダム『トリフィドの日』を原作とするBBCのテレビドラマで全6話構成。 1962年版に比べるとだいぶましで、原作の雰囲気はそれなりに出ていると思うが、視覚的な薄さはどうにも否定できない。


Tetsuya Sato

2013年9月2日月曜日

レジェンド・オブ・サンダー

レジェンド・オブ・サンダー
Gun Powder,Treason and Plot
2004年 イギリス 201分(TV)
監督:ギリーズ・マッキノン

なんだか壮絶な邦題がついているけれど、原題は『火薬、反逆、そして陰謀』といったところで、前半はスコットランドの女王メアリ・スチュアート、後半はガイ・フォークスの火薬陰謀事件を扱ったイギリスのテレビドラマである。
前半100分(1561-1567): 夫フランソワ二世の死後、女王としてスコットランドに帰国したメアリは新教派とカトリック派の対立に遭遇し、自らはカトリックとしての立場を選び、それはそれとして英国貴族ダーンリ卿ヘンリー・スチュアートと結婚する。ところが初夜の時点でこれがどうしようもないろくでなしであったことが判明し、メアリは枕を涙で濡らし、以来、夫ヘンリーは飲んだくれ、メアリの忠臣ボスウェル卿はメアリへの野心を隠そうとしない。一方、王権を独占するメアリの態度が気に入らないメアリの異母兄ジェームズ卿はことあるごとにイングランドへ渡ってエリザベス女王に注進し、メアリ打倒をたくらんで様々な陰謀を持ち帰る。その陰謀によってメアリの秘書リッツィオが殺害され、反乱が起こり、反乱は鎮圧され、メアリは男児を出産し、ボスウェルはメアリの愛人となってヘンリーを殺し、そのことでメアリは売春婦と呼ばれ、また反乱が起こり、メアリは逃げ場を失って投降する。
後半101分(1587-1605): 成人したメアリの息子はスコットランド王ジェームズ六世となってデンマークから王妃を迎え、納得ずくの愛情のない結婚生活を築いた結果、たいした波乱もない様子で立派なこどもを3人ももうけている。とはいえ妻は貧困を嘆き、イングランドの王位継承権を持つ夫はイングランド王となった日には金持ちになると約束する。やがてメアリが処刑され、エリザベス一世が死去するとジェームズ六世はイングランドで即位してジェームズ一世となり、ところが蓋を開けてみるとイングランドは対スペイン戦役で国庫を空にしており、その上、エリザベス女王の葬儀でも費用がかさみ、ロンドンはペストに見舞われるので、議会は国王の支出を認めない。そこでジェームズ一世はカトリック教徒に対して庇護を約束していたにもかかわらず、財産没収を目的にカトリックを弾圧、怒ったカトリック教徒は傭兵ガイ・フォークスを呼び寄せ、ウェストミンスター宮に爆薬を仕掛けて議会もろとも国王を爆殺しようと計画する。
全体に低予算だし、時代考証はいいかげんだし、場所によっては話がひどく駆け足だし、前半と後半で妙な具合にタッチが違うし、特に後半では登場人物が生い立ちや所信をカメラに向かって語り始めるという一種の反則技が使われているが、結果としてはそれなりに面白い。前半はエリザベス女王がほとんど宇宙猿人ゴリと化して次から次へと陰謀を放つあたりが楽しいし(というか、本当にそのまんまだったらもっと面白かったのだが)、後半はロバート・カーライル扮するジェームズ一世が、やっぱり、というか、一種のコメディ演技になっていて、そのテンションの高さだけでも十分に楽しめる。



Tetsuya Sato

2012年6月23日土曜日

ガラクタ通りのステイン

ガラクタ通りのステイン
2003年 日本 全13話各5分+エピローグ32分 TV
監督・脚本:増田隆治

フルCGのアニメーション。どこかの都市の路地の奥にガラクタを漁っている男ステイン、胸に「恨」の一文字を記したセーターを着ている巨大なネコのパルバン、首から指輪をぶら下げたトカゲ、パイロンを殻にしているヤドカリなどが生息していて、毎回ステインがガラクタからなにかを見つけ出して、そのなにかに誘発されてなにやら恐ろしい事態が発生する。台詞もなく、説明もない。作家性は明瞭で、無言で行動するキャラクターはよく練り込まれ、ときおり不意に立ち現れる冷酷で淡々とした笑いが心地よい。少々獰猛ですることに身も蓋もない、しかもまるでかわいげのないパルバンが好き。

BANDAI CHANNEL:ガラクタ通りのステイン 第1話



Tetsuya Sato

2012年5月22日火曜日

巨匠とマルガリータ

巨匠とマルガリータ
Master i Margarita
2005年 ロシア 499分 TV
監督:ウラジーミル・ボルトコ


1930年代のモスクワ。作家連盟の議長ベルリオーズと詩人ベスドームヌィが公園で反宗教詩の機能について話していると、そこへ外国人の紳士が現われて話に加わり、神を肯定し、ポンペイウス・ピラトとイエスの関わりを語り、ベルリオーズの死を予言する。そしてベルリオーズが予言どおりの仕方で死ぬとベスドームヌィはこれは敵による攻撃であると確信して紳士を追いかけ、事実をありのままに告白して精神病院にぶち込まれる。ベスドームヌィは病院で巨匠と名乗る男と出会い、巨匠はベスドームヌィに請われるままに自分がそこにいる理由を語り始めるが、つまりポンペイウス・ピラトとイエスの関わりを描いた小説を書き上げたところ、出版をことごとく断られ、愛人マルガリータの勧めにしたがって断片を公表したところ批評家から酷評され、すっかり精神を痛めつけられている。一方、ベスドームヌィが追った男はヴォランドと名乗って劇場に現われ、魔法によってモスクワ市民を幻惑し、作家連盟を破壊し、内務人民委員部を混乱に陥れ、巨匠を失って悲嘆に暮れるマルガリータを舞踏会の女王に招き、事実上の魔女と化したマルガリータは批評家の自宅を襲って部屋を破壊する。さらに女王役を務めた報酬として巨匠を取り戻し、巨匠とマルガリータは世界に対して別れを告げる。
10話構成のTVシリーズ。白状するとブルガーコフの原作は未読である。演出は愚直だが、忍耐強く、映像化の過程で都合のよい省略をおこなっていない。演劇的な空間が明確に構成され、出演者は非常に充実した仕事ぶりを示している。30年代のロシアを再現するために顔、衣装がよく選ばれ、雰囲気に厚みがある。洗練された作品ではないが、ひとを引き寄せる力がある。






Tetsuya Sato

2012年5月19日土曜日

銀河ヒッチハイク・ガイド(1981)

銀河ヒッチハイク・ガイド
The Hitchhiker's Guide to The Galaxy
1981年 イギリス 全6話・各33分 (TV)
監督:アラン・J・ベル


ある日、地球は超空間バイパス工事のために破壊され、アーサー・デントはベテルギウス人の友人フォード・プリフェクトとともに宇宙へ飛び出す。
ダグラス・アダムスの同名のラジオドラマに基づくBBCのミニシリーズで、小説でいうと一巻目『銀河ヒッチハイクガイド』と二巻目『宇宙の果てのレストラン』までを含んでいる。脚本もダグラス・アダムズが担当しており、当然ながら主筋は原作に忠実なものとなっているが、重要な言及(ヴォゴン人に関する)や主要なエピソード(アーサー・デントのお茶、「ガイド」ビル」)が割愛されている。このあたりは元々ラジオドラマにはなくて、小説にしかないのかもしれないが、小説から入った人間からすると少しさびしく感じたのである。BBCの予算で作られたものなので視覚的にはかなりわびしいし、演出面でもはったりの乏しさが見えなくもないが、あの語り口が好きな人間にはそれなりに楽しめる作品に仕上がっている。 




Tetsuya Sato

2011年10月16日日曜日

シュトラフバット

捕虜大隊 シュトラフバット(2004)
Shtrafbat
監督:ニコライ・ドスタル


第二次大戦中の懲罰大隊を扱ったロシア製のテレビミニシリーズで各話50分の11話構成。


第一話:ドイツ軍の捕虜となったツヴェルドクロフ(だったかな)少佐はヴラーソフ軍団への誘いを蹴って処刑されるが、弾が急所をそれたために墓穴から這い出して収容所を脱出、途中、ソ連軍敗残兵に拾われて戦線を突破する。するとさっそく階級が剥奪され、保安部隊による取り調べが始まり、処刑される代わりに懲罰大隊の指揮官に任命される。その大隊には収容所から社会的親近分子や人民の敵が集められ、集結地点から前線まで列車で送られるあいだに内輪の喧嘩で36人が死亡する。到着した大隊の兵士たちに大隊長は檄を飛ばし、大隊は戦場を目指して進んでいく。が、見た感じではせいぜい二個小隊くらいしか兵隊がいない。無頼漢の頭目がそれらしい風体で登場したり、無頼漢が歌を歌ったり、といった場面は珍しい。ソ連兵の制服が全体にからだに合っていない、というのはリアリズムを目指した結果であろうか。ロシア版『バンド・オブ・ブラザーズ』というにはあまりにも低予算だが、いちおうのデザインとテンションは備えている。


第二話:懲罰大隊は初めて戦闘に参加し、ドイツ軍の陣地の真正面に敷設された地雷原へ突っ込んでいく。戦闘場面はかなり小規模で小火器中心、砲撃の着弾と地雷の爆発が区別できない。ということで格別力は入っていない。懲罰部隊の背後には青帽をかぶった保安部隊が控えていて、脱走兵や憶病者を殺すために骨董品の機関銃を配置している。ドイツ軍陣地攻撃に成功した大隊の兵士たちは早速略奪に取りかかり、シュナップスをがぶ飲みする。ソ連軍の師団本部には良い将軍とその副官、悪い青帽の少佐がいつもトロイカで並んでいた。


第三話:食料事情が悪化した懲罰大隊の兵士たちはドイツ軍の制服を着込んで保安部隊の食料庫を襲撃する。保安部隊の兵士たちがことさらに太っているのが面白い。ふつうにやればシットコムになるはずの状況だが、大真面目なので決してそうはならないのである。師団本部ではあいかわらず良い将軍とその副官、悪い青帽の少佐がトロイカで並んでいた。ときどき登場する回想シーンはちょっと邪魔。 


第四話:懲罰大隊は補充兵を加えて攻撃を敢行、ウクライナの村を奪還し、兵士たちは男ひでりの村の女たちと交歓し、五十八条組は寝床で体制批判をする。戦闘シーンはあいかわらず貧弱だが、登場する銃器類の銃声がそれぞれに性格があって本物らしいのには感心する(MP40は軽快で、PPSh41は騒々しい。ちなみに懲罰部隊の兵士たちはいつの間にか鹵獲品のMP40を主力火器にしてしまっている)。


第五話:懲罰大隊に危険な偵察任務が下り、一方、第四話の戦闘で故意の負傷をした新兵は軍医に見逃してもらって入院し、そこで看護婦に恋をする。二つの話がまったく無関係に並行して進むのである。無頼漢のグリモフ中隊長がいい感じ(腰にルガーをぶら下げている)。偵察から帰還した兵士たちを保安部隊の少佐が尋問すると、取調官的な誘導方法(たしかにそうだったかもしれない、でも一般的にはこういうこともあり得るのでは)が登場する。どうやら真の敵はドイツ軍ではなくて、やはり保安部隊になるみたい。


第六話:一日の休暇。元強盗のグリモフ中隊長は牛をつかまえ、村に住む戦争未亡人に牛の世話を頼んだところ、二人はなんとなくいい仲になる。一方、故意の負傷で入院中の新兵も目当ての看護婦といい仲になるが、退院して懲罰大隊に戻される。その大隊ではグリモフ中隊長のところへ戦争未亡人が訪れて、ここで二人は気持ちを明かしてすっかり恋仲になる。だが大隊はまたしても危険な任務に送り込まれ(二台並んだドイツ軍戦車の地域射撃圏内に突撃する)、重大な損害を受けて後退する。


第七話:人員の補充を受けた懲罰大隊は解放されたばかりのウクライナの町に到着し、そこで敵残存勢力の掃討にあたる。だが腹を空かせた懲罰大隊の兵士たちは同胞を相手に悪事をおこない、事実を知った保安部隊の少佐はそれ見たことかと大隊長のシュテファノヴィッチを締め上げにかかる。だが、そのとき、ドイツ軍の反攻が始まり、町の神父も死んだ兵士の銃を取って戦いに加わり、神父はそのことによって穢れを受けるので三年間は正餐式をおこなえなくなる。兵士たちが暇つぶしにやる『モンテクリスト伯』の要約が面白い。キャラクターが新たに加わり、保安部の少佐の悪役ぶりにも磨きがかかり、なんだかストーリー物のような展開が始まっている。


第八話:第七話で登場した神父はそのまま志願兵として懲罰部隊に残り、山上の垂訓についての講和などをしているが、保安部隊のカルチェンコ少佐はもちろん快く思わない。少佐は大隊長にそのことでからみ、その直後、戦闘が始まり、懲罰大隊はドイツ軍機甲部隊の攻撃にさらされ、二十人足らずを残して事実上、全滅する。


第九話:カルチェンコ少佐の疑念(おもに第三話と第七話の状況に基づく)によって大隊長は逮捕され、大隊長は供述を拒んで拷問を受ける。一方、懲罰大隊には新たな補充兵とともに新たな大隊長が着任し、札付きの兵隊リョッカは前線の中間地帯でドイツ軍の食料倉庫を発見する。リョッカは一人でたらふく飲み食いをしてから発見をグリモフ中隊長に伝え、リョッカを含むグリモフ中隊長とその一味は夜間に食料倉庫を訪問、そこで同じように略奪にやってきたドイツ軍の兵士と遭遇する。


第十話:保安部隊のまともそうな少将(というのが第七話から登場している)の手配によってシュテファノヴィッチは大隊に一兵卒として戻される。同じく保安部隊のカルチェンコ少佐は食料倉庫の一件を聞きつけて食料強奪作戦を自ら立案、陣頭指揮に立つものの、少佐自身の行動によって戦端が開かれ、懲罰部隊は大損害を受けて後退する。なお、このかん、懲罰部隊の面々は第七話で登場したミハイル神父の感化を受けて、とても敬虔になってきていて、略奪品のラム酒を飲むときにもちゃんと食前の祈りを捧げていた。


最終話:赤軍の機関銃二個中隊及び砲兵二個中隊を加えて旅団編成に膨れ上がった懲罰大隊はドイツ軍正面で大規模な渡河作戦を決行、対岸への上陸に成功してドイツ軍の拠点を奪取、そのまま拠点防御を開始するが、最初から見捨てられている、という理由で増援を受けられないまま全滅する。


全体をとおしての印象としては、低予算ながらも真面目で好感の持てる作りであった、ということになる。1930年代を背負う形でいかにもそれらしいエピソードや会話が混ぜ込まれているし、保安部隊の陰険な習性、無頼漢の性懲りもない生態、政治犯が歌う歌の歌詞(スターリンがキーロフを殺した!)、いかにもな神父の登場など、興味深い場面がたくさんあって、その方面に関心を抱いて見ればかなり面白い。ちなみに最終話のエンディングロールでは赤軍に存在したすべての懲罰大隊のリストが紹介され、それが画面に収まりきらない、という有様には見ていてちょっとぞっとした。最後に示される数値は1000を越える懲罰中隊があったことを告げるが、一個中隊が通常の戦時編成で200人程度であった、と考えると、20万人を越える規模の懲罰部隊が全体では存在したことになり、もう一度ぞっとした。 
捕虜大隊 シュトラフバット DVD-BOX



Tetsuya Sato