フォト
2025年1月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  
無料ブログはココログ

« 「ジョブ型正社員」をめぐる錯綜@『労働調査』 | トップページ | 『若者と労働』は在庫切れ@amazon »

2013年8月10日 (土)

「政労会見拒否」の読み方

日経新聞が「政府、政労会見を拒否 連合に伝達 」と報じていますが、

http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS0903J_Z00C13A8PP8000/

政府は9日までに、連合が求めていた雇用政策などを安倍晋三首相と古賀伸明会長が話し合う「政労会見」の開催を拒否する意向を連合側に伝えた。連合が参院選で政府、自民党への批判を強めたことが背景にある。政府高官は「連合とは筋道が異なる。労働者側の意見を聞く場は他にもある」と語った。古賀会長は3月の自民党の石破茂幹事長との会談で、年2回の政労会見の開催を要請した。同席した衛藤晟一首相補佐官は「検討したい」と前向きな姿勢を見せていた。

これを安倍政権が単純に連合に喧嘩を売ってると読むのはあまりにも表層的でしょう。

政労会見という二者構成ではない形でやりたいというメッセージととると、朝日の一昨日の社説の最後のところの話とつながってきます。

http://digital.asahi.com/articles/TKY201308070548.html(最低賃金上げ 脱デフレへ次の一手を)

・・・デフレからの脱却には、幅広い層での賃金上昇が必要だ。人件費抑制に傾きがちな使用者側に、発想を切り替えてもらわなければならない。

そこで活用が期待されるのが成長戦略に盛られた「政・労・使が意見を述べ合い、共通認識を得るための場」である。

ここに、非正規を含む労働者側を呼び込み、全体的な賃金引き上げを軌道に乗せる.そうしてはじめて、雇用制度全般を議論するような政労使の信頼関係も築いていけるだろう。

つまり、政労使三者構成の場で、使用者側の反対を押し切ってでも政府が主導して賃金上昇をやる。今回かなり上げた最低賃金よりも上の方の、しかし春闘相場が直ちに及ばないようなレベルの労働者層に焦点を当てて。

デフレ脱却という政権の看板を裏打ちする賃金上昇を、しかも政権のイニシアチブでやるという意図が背後にあると読むと、逆にこれで何を叩こうとしているのかも読めてきます。

(参考)

http://homepage3.nifty.com/hamachan/roukijunpo130725.html(『労基旬報』7月25日号「政労使三者構成原則を唱えているのは・・・」 )

 去る6月14日に安倍内閣がとりまとめた「日本再興戦略-JAPAN is BACK-」は、広範な分野にわたって成長戦略を語っています。膨大な分量に加え、マスコミは世間の関心の高いところしか報道しないので、多くの方は認識していないと思われますが、この戦略の中に労働政策の観点から見て大変興味深い一節が盛り込まれているのです。
 それは、「第Ⅰ 総論」の「2.成長への道筋」の最後の項「(4) 成長の果実の国民の暮らしへの反映」というところにさりげなく書かれています。
「・・・特に、20 年の長きにわたる経済低迷で、企業もそこで働く人々も守りの姿勢やデフレの思考方法が身に付いてしまっている今日の状況を前向きな方向に転換していくためには、賃金交渉や労働条件交渉といった個別労使間で解決すべき問題とは別に、成長の果実の分配の在り方、企業の生産性の向上や労働移動の弾力化、少子高齢化、及び価値観の多様化が進む中での多様かつ柔軟な働き方、人材育成・人材活用の在り方などについて、長期的視点を持って大所高所から議論していくことが重要である。
 従来の政労会見や経営者団体との意見交換という形とは別に、政・労・使の三者が膝を交えて、虚心坦懐かつ建設的に意見を述べ合い、包括的な課題解決に向けた共通認識を得るための場を設定し、速やかに議論を開始する。」
 ILOの掲げる政労使三者構成原則は、およそ労働法制や労働政策について意思決定しようとするときに必ず践むべき先進諸国共通の原則であるということは、私がさまざまな場で繰り返し述べてきたところですが、連合の支持する民主党から政権を奪還したばかりの自民党政権がこういう形でその原則を宣明するというのは、やや意外な感を与えました。
 これを言い出したのは労働大臣も経験した甘利明経済再生担当相で、5月19日にNHKの番組で、賃上げ加速を狙って、政府、産業界、労働界の三者協議の場を設置する考えを明らかにしたのが出発点のようです。
 このように自民党が三者協議に積極的な姿勢を示すのと対照的に、野党に回った民主党の細野幹事長は同月26日、「政府が賃金の在り方に介入するのは社会主義的、共産主義的な手法だ。戦時中の経済統制のにおいすら漂い、ちょっと考えた方がいい」と疑問を呈したと報じられています。
 いうまでもなく、共産主義と対立する西欧、北欧の社会民主主義的政権下においてこそ、政労使三者構成原則に基づく政策形成が確立してきたのであって、連合が支持する政党の認識としてお粗末としかいいようがありません。かつて第一次安倍内閣の頃、政府の規制改革会議の一部委員が三者構成原則をやたらに攻撃して顰蹙を買ったことがありますが、第二次安倍内閣がこの問題について極めてまっとうな認識に立つようになったからといって、民主党が三者構成原則を攻撃する側に回る必要はないのではないでしょうか。

« 「ジョブ型正社員」をめぐる錯綜@『労働調査』 | トップページ | 『若者と労働』は在庫切れ@amazon »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 「政労会見拒否」の読み方:

« 「ジョブ型正社員」をめぐる錯綜@『労働調査』 | トップページ | 『若者と労働』は在庫切れ@amazon »