ネットでよく見かける痴漢えん罪逮捕からの防衛テクニックの一つですね。
結論からいうと、その考え方は非常に危険です。
まず、刑事訴訟法217条では、ごく一部の軽微な犯罪については、
住所・氏名が不明だったり、逃亡のおそれがない限り現行犯逮捕はできないとされています。
このごく一部の軽微な犯罪は余りに狭すぎて、
当然、迷惑防止条例違反(痴漢行為)も窃盗罪(万引き)も含まれません。
しかし、人の身体を逮捕・拘束する以上はそれなりの逮捕の必要性が要求されるべきであり、
刑事訴訟法217条の考え方を応用し、同条に定めるごく一部の犯罪に含まれなくても、
それなりに軽微な犯罪については、住所・氏名が不明だったり、
逃亡のおそれがない限り現行犯逮捕はできないという考え方を採る人がいます。
この考え方は、理念としてはよく分かるのですが、法律の条文上の根拠が弱いことに加えて、
実際、犯罪が行われた現場で犯人は逃げないかどうかなんて分かるわけがありませんし、
犯人が身分証を提示したところで、その身分証がニセモノである可能性も十分にあるわけですから、
安易に現行犯逮捕の例外を認めてしまうと、簡単に犯人を逃がしてしまうことになりかねません。
したがって、刑事訴訟法217条の要件を満たさない場合、
つまり、迷惑防止条例違反(痴漢行為)や窃盗罪(万引き)の場合については、
現行犯逮捕が違法となるケースはほとんど考えられず、逮捕に反抗した場合は、
別の罪(暴行罪、傷害罪、万引きの場合は強盗罪の可能性もあり)も成立する可能性があります。
自分で勝手に現行犯逮捕が違法だと判断して相手に暴行を加え、
自分で自分の首を絞めることのないように気をつけましょう。