世界経済史講義 ② 長い16世紀
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第四章 13世紀における資本と資本主義の誕生
途中になるが、この本を読んで思うことは「資本(ストック)」の存在が社会をおかしくしているように思えてくる。「宵越しの金は持たない」が経済学的理想だと本書でも語られている。なぜカネを貯めるかといえば「将来が不安」だからだ。
13世紀は、農業革命によって農具が改良され経済が膨張すると、貨幣不足に陥り、強奪が始まる。イギリスの資本家第1号は「海賊ドレーク」と言われていて、メディチ家同様「強奪」によって自己資本を拡大する。
教会は教会で、キリスト教の禁じ手である利子を異教徒から取り立て、改宗すれば債務免除するという脅しのような行為を繰り返す。
第五章 教会に代わる法人(株式会社)の誕生
水野和夫先生は最近、さかんに「過剰」という言葉を使う。「即日配達」や「スマホの普及」について「異常なことが日常化している」と警告する。日本人の健康年齢が世界1位なのも異常だとしている。まったくだ。
ところで、13世紀に生まれた資本は教会(大学も)という存在から「法人」という組織に継承される。(ちなみに宗教法人の帳簿は閲覧できないらしい。極めて怪しい)
株式会社の始まりは1555年、イギリスで設立された「モスクワ会社」だといわれている。そしてこれらが、戦争という例外によって必要となった莫大な資金を集めるために生まれたものだ。戦時国債もいわば経済発展に必要な措置と考えられる。
そして株式会社に投資する人たちにとって、その欲望は無限に肥大化され、その行き先がバブルであることは言うまでもない。「南海泡沫事件」や「チューリップバブル」という経済史における異常減少は、すべて資本と株式の関係から生じている。
ちなみにアダム・スミスは「国富論」の中で、株式会社の在り方を強く批判している。
第六章 「長い16世紀」とは
ここでは「価格革命」や「利子率革命」について解説される。
イギリスの農地で、過剰な労働供給により、雇い主(地主=資本家)が強くなり、失業者が増えて治安が悪化する時期があった。(似たような現象はその後も繰り返される。)この治安悪化に対し、マルクスが「資本論」の中で厳しく批判する「血の立法」(浮浪者を虐殺するなど)が行われ、フレッド・ジンネマンの「わが命つきるとも」にも登場するヘンリー8世は7万人(いまの東京に置き換えると3200万人)を死刑にしたと記録されている。
中世は「偽書」の時代とも言われている。そして宗教革命があって、カトリックとプロテスタントの対立が始まった時期でもある。教会か聖書かという対立はグーテンベルグの印刷術によって、聖書を誰もが帰るようになりプロテスタントの勢力拡大に繋がったのだそうだ。
「コペルニクス革命」や「科学革命」と言われる、様々な革命が起きたのが16世紀で、水野和夫先生はこれらを現代に照らして、「長い21世紀」という表現で1971年のニクソンショック以降、資本が他人を不幸にする仕掛けとして広まったことを嘆く。アメリカで増加している「絶望死」、アル中、ドラック中毒、自殺はトランプ政権の特徴と紐解いている。
つづく・・・
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