世界経済史講義 ③ チューリップバブル
- 世界経済史講義 (ちくま新書)
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第七章 宗教革命とマックス・ウェーバー
ここからは島田裕巳先生のご専門分野と経済の関わり。
マックス・ウェーバーの説によれば、倹約に務めるプロテスタントが貯蓄を膨らますことから資本主義の精神が生まれたという。カルヴァンの「予定説」から浪費を避けて節約したものを投資にまわすという考えが広まる。さらにアダム・スミスは貯蓄が投資にまわり、富が増えると説くが、これらをマルクスとケインズが真っ向から批判する。資本は掠奪だというのだ。
13世紀以降、大航海時代を経て、少なくとも植民地主義は掠奪の連続だった。第一章にもあった「帝国の本質」から学べば、周辺から富を掠奪する資本の考え方は、必ず外部を必要とする仕組みになっている。
第六章の最後でニクソンショック以降の変化について言及する本書は、帝国がローマからロンドンを経由してウォール街に至り、土地ではなく株式から富を集める仕組みをアメリカが生み出したことで、日本に対する民営化圧力などを通じて、世界から富を巻き上げる構造を作り上げたとしている。
「戦争と資本主義」のパラドクスについて、被災すると経済は落ち込むが復興で成長がもたらされる矛盾は、シュンペーターの「創造的破壊説」は戦争にシンクロするものだ。日本は敗戦によって莫大な消費をしたが、大蔵省と経産省の統制にもとに急速は回復を遂げた。戦争で勝ったアメリカが経済で日本に敗れるという時代に移ってゆく。
第八章 チューリップバブルの発生
オランダがスペインから独立し、新しい時代への陶酔からチューリップ・バブルが生まれたことを学ぶ。どうもきっかけは泥棒がオスマントルコから球根を盗んで普及させたことがきっかけだったらしい。球根を巡って先物取引が生まれ、ここから金融技術が革新的に進化したという。人々の「早く欲しい、早く手に入れたい」という心理がバブルを起こし崩壊に向かう。
シェイクスピアは「アテネのタイモン」で「カネは目に見える神であり、国民と国家を結びつける娼婦の役をしている」と書いた。シェイクスピアが政治と経済にどれほど博学だったかを知る名台詞だ。マルクスも「資本論」の中でこの言葉を引用している。
第九章 覇権国家としての大英帝国
覇権についての考え方を学ぶ。イタリアは都市国家が多く小さすぎて覇権を握れず、スペインは逆に大きすぎて覇権国家になれなかった。大航海時代のオランダやイギリスは、中規模で自由な海を支配して覇権国となることができたという。「国富論」によれば、金利の低いオランダに資金が集まったことでチューリップ・バブルが発生したと言われている。低金利で株高というと、我が国の現在ということになるが・・・。
対してイギリスは征服ではなく、入植による貿易で悪台する。東インド会社に代表されるインド支配は、相手国を債権で借金漬けにする。ちなみに日本で石炭が採れなければ、同じように外国の債権で借金漬けにされた可能性があるらしい。
ここからイギリスは産業革命、蒸気の発達に合わせて石炭を運ぶ技術を経て、鉄の需要が広まるが、その後植民地を手放すことで、帝国としての立場を終焉に追い込まれてしまった。
つづく・・・
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