「若者向けTV番組に登場する同性愛者はステレオタイプか、笑いの対象か、ほとんど不可視の存在」英調査で

英国のLGB団体Stonewallの調査で、同国の若年層向け人気TV番組の多くが、同性愛者を否定的・屈辱的に描いていると判明したというニュース。

この研究の題名は「Unseen on Screen」といい、英国で12〜18歳の視聴者がもっともよく見ている計20本のTV番組について調査したとのことです。それによると、4つの放送局(BBC1、ITV1、Channel 4、Five)の総計126時間の番組中で、同性愛者をポジティブに、そして現実的に描いている場面は46分間だけ。また、同性愛者が登場するシーンの4分の3が、C4とITV1の計4本の番組に集中していたとのことです。BBCでは、39時間半の放送時間のうち、リアルな同性愛者が登場するのはわずか44秒だったとのこと。

同性愛者の登場場面の約半数(49%)が、同性愛者をステレオタイプ化していたそうです。つまり、笑いの対象や、淫乱や、人を性的に搾取しようとする存在として描いていたってことです。また、番組内でのホモフォビア描写のうち5分の3が、ホモフォビアを問題視していなかったとのこと。

面接調査では、英国の若者たちは、TVの中の同性愛者はステレオティピカルで、不幸な人生を送り、いじめられたり家族から拒絶されたりしていると述べたとのことです。彼らはまた、同性愛者についての知識はTVが頼りだと言っているそうです。

以下、TVに出てくる同性愛者について、子供たちの声をいくつか拾ってみます。


彼らには悪いことがたくさん起こる。(ウィリアム、13歳)
A lot of bad stuff happens to them. William, 13

いつも言い争ったり泣いたりしてばかりいる。(アディル、13歳)
They’re always having arguments and crying. Adil, 13

テレビはいつも同性愛者をステレオタイプ化する。山ほどスキンケア用品を使わせたりして。(ティム、12歳)
They always stereotype them. He uses loads of skin products. Tim, 12

同性愛者は侮辱的にからかわれる。バーから追い出される。(ルーク、13歳)
People taunt them. They get kicked out of bars. Luke, 13

テレビにはレズビアンはあまり出て来ない。(キア、18歳)
There aren’t many lesbians on TV. Kia, 18

最後の発言は的を射ています。今回調査された番組では、実際、出てくる同性愛者の実に77%がゲイ男性だったそうです。

日本でこういう調査が行われたのは見たことがありませんが、状況はたいして変わらないんじゃないでしょうか。日本でも、メディア(とくにTV)に登場する同性愛者はそのほとんどがゲイ男性です。そして、同性愛者と言えば滑稽なオネエキャラか、「悪いことがたくさん起こる」悲劇的な存在か、同性を虎視眈々と狙う淫乱役として描かれるというパターンがほとんどでしょう。ホモフォビアの描写はあっても、ホモフォビアを問題視する姿勢が少ない(せいぜい『同性愛者はこういう目に遭っちゃうんですよー、ああかわいちょうにかわいちょうに』みたいに憐れんで終わりとかさ)ってところもよく似ていると思います。
あたしもただ個別の百合作品の感想をボーッと書いてるだけじゃなく、もっと統計的に調べてデータ出した方がいいのかなとちょっと思ったりしました。「百合漫画1000冊のトータル○○ページのうち、同性愛者が肯定的に描かれているのは■■ページ、『“こんな想い”が知られたら嫌われるよね……気持ち悪いよね……』のようなネガティブ描写は△△ページ。全体の◎◎パーセントの作品にホモフォビアが登場し、うち★★パーセントがホモフォビアを問題視していなかった」みたいな。いや、百合漫画だけでなく、広く漫画全般について調べた方がいいのかしら。卒論のテーマに困ってる学生さんとか、どうよ、こういうの?

なお、この調査「Unseen on Screen」の詳しい結果は以下で見られます。ご興味がおありの方は、ぜひ。