「ゲイダー(同性愛者を探知する能力)は実在する」?:オランダの研究で

オランダの研究者が、異性愛者と同性愛者では問題に対する注意の向け方が違うと発見したというニュース。この研究者は、この注意の向け方の違いが、同性愛者がゲイダー(同性愛者を探知する能力)を持っていることを示す根拠であると主張しているとのことです。

この研究を行ったのは、オランダにあるLeiden大学のLorenza Colzato博士ら。研究の手法は、合計42人の男女にある図形を見せ、注意の向け方を調べるというもの。その図形というのは、「大きな正方形/長方形の中に、別の小さな図形を詰め込んだもの」です。

人間の脳はより大きな図形に気を取られる傾向があるため、「大きな正方形の中に小さな長方形が詰め込まれている」という画像を見せられて「中にある図形は何か」と聞かれると、「正方形」と答えてしまいがちなんだそうです。同様の質問を被験者男女に対して行うと、異性愛者は同性愛者より速く回答するものの、正答率は同性愛者より低かったとのこと。そして、同性愛者は異性愛者より回答速度が遅い反面、正答率が高かったのだそうです。これはつまり、同性愛者は大きな図形のみならず、図形の細部まで目を向けることができるということで、この能力のおかげで同性愛者は仲間を見分けることができるのだというのがColzato博士の主張です。以下、博士の弁。


「同性愛者はこの知覚スキルのおかげで他の同性愛者をより速く識別することができる。我々は、これは同性愛者が異性愛者よりずっと分析的であるためだと考えている」
‘This perceptual skill allows homosexuals to recognise other gay people faster and we think it's because they are much more analytic than heterosexuals.'

面白いことに、こうした知覚の差異は宗教グループにも見られるのだそうです。イタリアのローマ・カトリック教徒は俗人よりも大きな図形に注目しやすい傾向があり、イスラエルのユダヤ正教徒も、無信仰な人に比べ、図形の細かい部分への注意が少なかったとのこと。Colzato博士はこれを、ローマ・カトリックやユダヤ正教徒の団結を強く強調する傾向と関係があるとしています。同じ宗教グループでもオランダのカルバン派には、「人のことに干渉するな」という教えがあるのですが、このカルバン派の人たちは大きな図形よりむしろ細部に注意が行くんだそうです。

面白い研究ですね。特に、宗教ごとの知覚スキルの違いと比べているところがユニークだと思います。こうした結果を見る限り、細かなところに注意が向くか向かないかは生まれつきによって100パーセント決まるのではなく、属している集団の影響が考えられるみたいですね。団結や連帯感を強調する集団にいると、細かな部分への分析力が落ちやすいってことなんでしょうか。

ただ、「ゲイダー」に関して言うと、

  1. 被験者が42人とごく少ないこと
  2. 性的指向の違いは正方形と長方形の違いほど明確でないこと
  3. そもそも性的指向の違いが外見やふるまいに現れるものかどうかはっきりしていないこと

などから見て、この実験結果から即「ゲイダーは実在する」と断定してしまうのはいささか短絡的であるように思います。あたし自身が同性愛者で、同性愛者の友人知人も多いのですが、一目ですぐお仲間だとわかる人もいれば、自己申告されない限りまるでわからない人もいますもん。そんなわけで、あくまで話半分に聞いておいた方がいい研究だと思いますねこれは。

単語・語句など

単語・語句 意味
like-minded 同じ心[意見、趣味、目的]の、(…と)うまの合う、同じ考えを持っている
pluck 引き抜く、選び出す
inbuilt 持って生まれた、固有の、生来の
solidarity 団結、一致、協同一致、連帯、連帯意識、結束