ニューハンプシャー州議会、同性婚違法化を否決

2010年1月1日から同性婚が合法となった米ニューハンプシャー州議会で、同性婚を再び違法化する法案が否決されたというニュース。

同性婚禁止をもくろんでいたのは共和党保守派で、

  • 「同性婚とシビル・ユニオンの両方を廃止する」という法案
  • 憲法を改正し、結婚を「1対1の男女でするもの」と規定すべしという決議案

のふたつを提出していたとのことですが、下院にて前者は反対210対賛成109、後者は反対201対賛成135で否決されたとのこと。

「ユニオン・リーダー」紙によると、この法案・決議案を提出したAl Baldasaro議員は、州は同性カップルを認めるべきでないとし、


「ホモセクシュアルはいつでも性的な好みを変えることができる」
"Homosexuals can change their sexual preference at any time,"

と主張したんだそうです。ちなみに米国医師会や米国精神医学会や米国心理学会は「性的指向を変える試みは無意味で、むしろ有害」と主張している*1んですが、そのへんは無視なんですね。あと、つい先日、カリフォルニア州の同性婚裁判でゲイ男性が「ゲイを異性愛者に変えようとする『治療』のせいで、自殺寸前まで追い込まれた」と証言してたはず*2なんですが、そのへんも都合よくガン無視なんですねー、へえええ。

ちなみに、共同提出者のJordon Ulery議員は、


「これは平等な権利の問題などではまったくありません。これは生殖が可能かどうかの問題なのです。これは自然の法則の問題です」
"This is absolutely not an issue of equal rights. This is a question of being open to procreation. This is an issue of natural law."
と言っているとのこと。出た出た、おなじみの「生殖」を根拠としてのゲイバッシング。先日の「みやきち日記」でお伝えした通り、こちらもカリフォルニア州の同性婚裁判で、ハーバード大のコット教授が論破してるはずなんですけどね。以下、再掲します。


コット教授は、生殖能力を失った高齢者や不妊の女性も結婚していることが多いとした上で、無精子症だったとして知られる、米国の初代大統領のジョージ・ワシントン(George Washington)も結婚していたと指摘。コット教授の発言は、前日に示された「結婚制度の主な目的は、安定した関係の中で、生殖を促進し、生殖を前提とした男女間の自然な性行為を導くものだ」とした同性婚反対派の意見に反論したもの。
コット教授は、政府は歴史的に特定の結婚に制限を加えてきたと語った。教授によると、米国の州のうち少なくとも41州は、歴史のある一時点で、白人と黒人間、白人とアジア人間の結婚を禁止していたことがあり、そうした法律を可決し議員たちは、「これらの法律は神の定めを実現するもの」で、きわめて当然のことだと考えていたという。(c)AFP

本当に生殖を根拠として同性婚を阻止しようとするのなら、EDや無精子症の男性、不妊症の女性、そして生殖能力を失った高齢者全員からも結婚の権利を剥奪しなければアンフェアってものです。もちろんBaldasaro議員やUlery議員も、ストレスや加齢で勃起しなくなったり、病気や怪我などで生殖能力を失ったりしたら即離婚の方向で。それをせずに同性愛者だけ扱いに差をつけようとするのは、要するにまず「同性婚禁止」という結論ありきで、後付けの理屈として生殖云々を持ち出してるって丸わかりですよ。

ちょっと調べてみたところ、上記のAl Baldasaro議員は2010年1月に、ニューハンプシャー州は「子供たちをひとり1万ドルでホモセクシュアルに売り渡している」と発言して物議をかもしているようです。動画はこちら。

彼はこの件で辞職を要求され、のちに謝罪のようなものを発表していますが、お決まりの「言葉の選び方が悪かった("That was a bad choice of words")」という説明に終始しているのみです*3。これは昨年マシュー・シェーパード事件を「でっち上げ」呼ばわりして批判を浴びたノースカロライナ州議員の「謝罪」*4と同じロジックで、要するに、論旨が悪かったとは思ってないんですね。ホモフォビアがたいへん強い人だと見ました。

いずれにせよ、こんな人たちの提出した偏見たっぷりの法案が否決されて、本当によかった。ニューハンプシャー州下院の分別と理性を讃えたいと思います。

単語・語句など

単語・語句 意味
resolution 決議、決議案
concede 容認する、承認する、認める
procreation 生殖