自分のことは自分で

最近ネット上で「フェミニズムは弱者男性をも救うべき」みたいな意見をいくつか読んで仰天しました。不勉強なあたしはてっきりfeminineにismがくっついてfeminismになったんだと思い込んでたんだけど*1、違ったの? それとも弱者男性ってfemme*2に含まれるんですか。うわーやだどこのbutch*3だって相手にしねーよそんなfemme*4。……というのはまあ冗談にしても、「自分のことは自分でやればいいのに」とすげー単純なことを思いました。
あたしはレズビアンで、セクシュアルマイノリティの苦労をそれなりに味わっていて、「性的指向で差別すんなよムカー」的なことをよく自サイトに書きます。でも、もしそこにヘテロセクシュアルさんがやって来て、「ヘテロセクシュアルだってセクシュアリティの問題は抱えているんだから、レズビアンがわしらも救うべき」とか言い出したら「アホ?」と思いますよ。自分の抱えている問題だけで手一杯なのに、人のケツまで拭いて回れるかっつーの。
なんつーか、江戸時代の「石抱きの刑」を思い出してくださいよ。誰だって自分の分の石を膝に乗せてヒーヒー言いながら座ってるわけですよ。そこへ、「あなたならワタシの/僕の石も持ってくれそう」と人の膝に自分の石をドカドカ積み上げやがるんじゃねえ、ってことですよ。んなことされたら死んじまうよ、もー。
いや、「フェミニズムは弱者男性をも(略)」っていう主張の陰には「お前らの言う『男女同権』はタテマエじゃねーかよ」という批判とか、「性別にとらわれず、不利益をこうむっている人全体を救う運動が必要なのでは」という視点とかがあるんだろうとは思うけどね。でも結局こういうことは、不利益をこうむってる『当事者が』『自分で』行動を起こさない限り、きりがないと思います。声を上げて実際に行動を起こしている人同士で、利害が一致する部分は連帯したり手助けし合ったりするしかないんでないの。だから、フェミニズムを男性も女性も救う運動にしろってんなら、救われたい男性もどんどん参加して*5、その運動全体に"feminism"とは違う名前をつけた方が筋が通ってると思います。
それからさ、「レディースデーや女性専用車両は男性差別だからフェミニズムでなんとかしろ」とか言う男性は、たとえば大学の医学部入試についてはどう思ってるんでしょうか。今時の医学部って、成績優秀な女子志願者が増えたせいで、成績だけで単純に選ぶと男子より女子の医学生の方が多くなっちゃったりするんですよ。で、それだと困るってんで女子の方の合格基準を厳しくする、なんてことが現実にあるんです*6。男子は女子よりバカでも医者になれちゃうんですよ。それには文句言わないんですか、「弱者男性」は? 「医学部を受けるような男性は『強者』だからどうでもいい」とか? 「あれもこれもフェミニズムが解決すればいい、僕の知ったことじゃない」とか?
結局「自分にとっての不利益」にばっかり敏感なのは性別や強者弱者に限らず誰だって一緒じゃん、ってかカミサマじゃないんだから誰もあまねく全ての人にとっての不利益にカンペキに気を配るなんてできねーよ、自分の持ち場で自分のことをがんばるしかないじゃんかよ。というのが、あたしの出した結論です。

*1:つか、正確に言うと、「たぶんラテン語かフランス語で"feminine"に該当する語にismがくっついたんだろう」と思ってたんですけど。

*2:femme, (仏)1. 女、女性. 2. 妻. 3. (女の召使い)

*3:butch, (英)(レズビアンで)男役の女性。「タチ」

*4:femme, (英)(レズビアンの)女役。「ネコ」

*5:そもそも、わざわざフェミニズムに丸投げしなくたってメンズリブとか男性学とかいろいろあるじゃんよ。

*6:もちろん、全ての大学の医学部がそうだというわけではありませんが。