ショルティ/マーラー 『交響曲第8番 《千人の交響曲》』

Gustav Mahler: Complete Edition より。
 サー・ゲオルク・ショルティ指揮、ウィーン国立歌劇場合唱団、ウィーン楽友協会合唱団、ウィーン年合唱団、シカゴ交響楽団ほか演奏。1971年録音。
 『交響曲第8番』 は1906〜1907年に作曲され、1910年に作曲者自身の指揮により初演された。マーラー自身が初演を行った交響曲は、これが最後である。《千人の交響曲》 は副題ではなく、初演時のキャッチコピーらしいのだが、初演の際は本当に1,000人を超える演奏者が参加したらしい。
 第1部(約25分)と第2部(約55分)という構成になっており、第1部は宗教曲風のラテン語の歌詞、第2部はゲーテの 『ファウスト 第二部』 を用いたドイツ語の歌詞が歌われる。グラモフォンの全集には歌詞カードがついていないのだが、この曲に関しては歌詞カードを見ながら聴いても、どの部分を歌っているのかまったく聴きとれず、対訳を読んでも意味がさっぱりわからない。
 曲は約80分間のうち大半がフォルテッシモでテンションの高い状態が続き、たまに出てくる静かな部分は退屈である。ためしに 第1部冒頭の映像を見ていただきたい。サイモン・ラトル指揮、イギリス・ナショナル・ユース管弦楽団ほかによる演奏で、2002年のライヴ映像である。

 ばかでかい演奏会場、極端な大編成のオーケストラと合唱団。音よりもどちらかというと視覚や場の空気のようなものに支配される楽曲なのである。映像と音声がずれているのだが、これだけ会場が広いのだから仕方ないのかもしれない。むしろ、音がちゃんと合っているのが不思議なくらいだ。
 音楽的には大味というか大雑把というか、面白味はあまりなくて、指揮者による解釈の違いもほとんど目立たない。この交響曲は 「演奏する」 こと自体がイベントあるいは祝祭としての性格を持っているのであろう。 繰り返し聴くことを前提とするレコード・ CD による鑑賞には適さないのだと思う。