削除要請に於けるはてなの立場は

http://moustacheetgrandssein.g.hatena.ne.jp/wetfootdog/20061024/p4によれば、id:wetfootdog氏のところに

とある企業から
「ブクマのコメントを削除してくれ」
という依頼があったそうで、該当コメントを削除するなり編集するなりしてくれ、というメールがはてなからきた。

らしい。更にこの記事に対するブックマークコメントによれば、削除要請を受けたユーザは複数いるようだ。
実際に削除されたのかどうかを含め確認のしようもないから憶測でしか書けないわけだが、少なくとも現在のところ該当するらしきブックマークには問題視されそうなコメントは見当たらない。もう削除されて当たり障りのない内容しか遺されていないだけなのか、それとも当該企業が神経質すぎるだけなのか。
そもそも上記記事では削除要請の理由については一切触れられていない。はてな情報削除ガイドライン - 機能変更、お知らせなどに拠れば、削除などの処理が行なわれるのは(法人の場合)著作権侵害、または名誉毀損に該当する場合のみである。本件に関して著作権の侵害はまず有り得ないので、名誉毀損を事由とした申請と思われる。
一体何が名誉毀損と判断されたのだろうか。


該当すると思われるサーヴィスとして挙げられているのはライターの募集・求人・登録なら【ブログライター】。企業からの依頼でブログに記事を書くライターを、一般ブロガーから募集するもののようだ。
このサーヴィス自体については判断を保留するが、:id:ululun氏によって登録料の問題が指摘されていることを記しておく。明記されたものではないが詐欺紛いと扱われる可能性について言及したもので、(ほとんど言い掛かりに近いほど)極めて拡大解釈的に見れば名誉毀損と取れないこともない。
逆に、これに類する内容以外に名誉毀損と取られそうなものは見当たらないので、恐らくはこの「登録料詐取の疑い」が当該内容であると仮定しておくことにする。

情報削除ガイドラインの内容について

前出の情報削除ガイドラインでは

  • 企業その他の法人(以下「法人」)の名誉又は信用を毀損する表現行為が行われた場合、以下の理由により原則的に別に定める発信者への照会手続きを経て対処を行う
    1. 法人はほとんどの場合公的存在である
    2. 表現行為が公共の利害に関する事実に係り、専らかどうかは別としても、それなりに公益を図る目的でなされたと評価できること
    3. 表現が法人の社会的評価を低下させても、そこで摘示された事実の真偽についてははてなによる判断ができない場合が多いこと

とあるが、主語を明示しないために今一つ趣旨が明瞭でない印象を受けた。
特に、理由2表現行為が公共の利害に関する事実に係り、専らかどうかは別としても、それなりに公益を図る目的でなされたと評価できることの「表現」を行なっているのは申請者である法人の方なのかはてなユーザの方なのか。多分はてなユーザを指すのだろうが、誹謗中傷表現の根拠も概ね法人の発表した何らかの文書に拠る場合が多いと考えられるので、法人のそうした文書に於ける「表現」を指す可能性が否定できない。
で、これをはてなユーザ側の表現についての文章と仮定すると、要するに「本当に根拠のない中傷かどうか判断できないし、相手が法人である以上それなりに公共性がある」という判断と受け取れる。
法的には、名誉毀損はその内容が真であっても成立する。ただし公共の利害に関する内容であり、その内容が事実であると証明できるならば名誉毀損とはならない。
つまり、今回の件で争点となるのは専ら「登録料の要求が詐欺に該当するか」という点であろうと考えられる。

立証責任について

まず事実として。
登録料詐欺は実在する。そういう手法があるというだけでなく、詐欺として起訴立件された例があるようだ。
ただ、残念ながら争点がどこにあったのか-----「斡旋しなかった」ことにあるのか「斡旋する気もなかった」ことにあるのかが判らない。両者は近いようで全く違う。つまり、「斡旋する気がなかった」だとすれば立証は限りなく困難になるからだ。
当該サイトには事例の紹介があるが、固有名詞は伏せられているから実際の確認は不可能と言える。登録ライターについては固有名で紹介されているので証言を得ることもできようが、仮にその中にサクラがいて、嘘の証言-----「確かに仕事を紹介されました-----をしたとしても、これまた確認しようがない。無論、逆にそれらが本当/本物であるという確認もまた不可能であるが、名誉毀損で訴える側には立証責任がないので、少なくとも「詐欺」と断言するようならばそれを立証せねばならないのは被告側である。

企業情報その他

whoisでドメイン登録情報を確認しようとしたが、ムームードメインでの登録らしく利用者の情報は得られなかった。
企業名での検索でも芳しい結果は出なかったが、設立が2006年8月とごく最近であることを鑑みればこれは仕方あるまい。

追記

http://moustacheetgrandssein.g.hatena.ne.jp/wetfootdog/20061025/p4及びhttp://d.hatena.ne.jp/floi/20061023/1161620860に拠れば、ブックマーク当時とは事業内容に変化があったため当時のコメントが営業を妨害しかねないという理由であり、はてなの削除ガイドラインにも則っていない要請なので強制的なものではなかったようだ。
むしろ気になるのは、僅か1年足らずの間に代表者が交代したらしいという点。ていうか会社としての設立が2006年8月ということは、それ以前は法人化せずに業務を行っていたのだろうか。それとも別会社を立ち上げてドメインを移管した?