「証拠を出せ? 出したらちゃんと自分の目で見るんだろうな?」その2

  • 「日本軍「慰安婦」・性暴力に関する国会図書館文献調査の報告」、日本の戦争責任資料センター研究事務局、『季刊 戦争責任研究』第66号、2009年冬、55-67ページ
  • 「日本軍「慰安婦」・性暴力に関する国会図書館文献第二次調査の報告」、日本の戦争責任資料センター研究事務局、『季刊 戦争責任研究』第73号、2011年秋、40-47ページ


「日本の戦争責任資料センター」は1993年、2009年、2010年の3度にわたり、ボランティアの協力を得て国会図書館所蔵の旧日本軍将兵による戦記、回想記に見られる軍「慰安所」や戦場の性暴力についての記述を調査している。93年の調査は本格的な軍「慰安所」制度研究の初期に行なわれたもので、その成果は従来の研究書や概説書でも援用されてきたものである。したがって今回はとりあげないが、『季刊 戦争責任』の第3、5、7、9号にその結果が報告されているので、「証拠」を見たくてたまらない人々はぜひ自分の目でご覧いただきたい。所蔵している図書館を探すか、「日本の戦争責任資料センター」に申し込んでバックナンバーを入手するかして。間違っても、私が著作権法違反を犯して全ページをスキャン&アップロードすることなど期待しないでもらいたい。
さて2009年と10年の調査は主に93年以降に刊行された文献を対象としている他、10年の調査では70年代以前の文献も含んでいる。今回紹介するのは66号と73号に掲載された収集資料の一覧。内容については09年調査分が66〜68、70号で「戦争体験記・部隊史にみる日本軍「慰安婦」(1)〜(4)」*1として、10年調査分については77号に「戦争体験記・部隊史にみる日本軍「慰安婦」第二次(1)」*2として報告されている。
66号で一覧にされている文献は495冊、「備考」欄に「○」「△」が記されているか無印であるかにより、当該文献がなにについての記述を含むかが示されている。「○」は「日本軍「慰安所」・「慰安婦」または日本軍による性暴力を示す記述があるもの、「△」は「ソ連軍による性暴力を示す記述があるもの」、無印は「その他(慰安婦問題への個人的な意見表明、その他の戦争犯罪に関わる記述、一般の売春宿などさまざまである)」(55ページ)。
73号でリスト化されているのは280冊。同じように「○」、「△」、無印の分類がなされているが、「△」は「ソ連軍や中国軍、米軍など連合軍による性暴力を示す記述があるもの」とされている(40ページ)。
なお日本軍「慰安所」や「慰安婦」、日本軍の性暴力についての記述を含むものは66号掲載分で260点、73号掲載分で161点なのに対し、ソ連軍ないし連合軍による性暴力についての記述を含むものはそれぞれ102点、67点となっており、かなりの数にのぼる。ネトウヨは連合国による性暴力を引き合いに出して相対化をするのが好きだが、結局のところ連合国による性暴力を実証的に調査しているのはネトウヨが言うところの「サヨク」学者であり、「プロ市民」だということになる。
次回以降、09年および10年の調査結果のごく一部を紹介するが、本シリーズの目的は「どこを調べれば“証拠”が見つかるか」を紹介することであって、ひな鳥よろしく口を開けてピーチクパーチク鳴きわめくくせにいざエサ=証拠を口に突っ込まれると嚥下せず吐き出してしまう人々の手間を省いてやることではない。間違っても私が著作権法違反を犯して全ページをスキャン&アップロードすることなど期待するのではなく、自分で図書館にいくかバックナンバーを取り寄せてもらいたい。
なお、従来も何度か紹介して来たが、「政府調査「従軍慰安婦」関係文書資料」についてはこちらのサイトでPDFを閲覧できる。「証拠」を求めてやまないネトウヨ諸氏ならば当然すべて読破しているものと思うが、念のため。

*1:「(1)」などの数字は原文では丸囲み数字。

*2:80号以降に続きが掲載される予定と思われる。