ここもその1つだ/鉄血のオルフェンズ25話感想
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戦いと共に少しだけ「終わる」約束1つ。
機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ 第25話(最終回)「鉄華団」
©創通・サンライズ・MBS
グレイズアインと激闘を繰り広げる三日月だが、完全に人機一体と化した敵に苦戦を強いられる。一方、ガエリオの前にはマクギリスが立ちふさがり……
戻ろう、火星へ。第25話。前回生存を不安視されたシノ、ラフタ、アジー生存という結果だったわけですが、ドラマ的にはいくつか理由が考えられます。1つには、この物語における名有りキャラの死は生き残る者と視聴者へ心の傷を追わせるものであったという一貫性。今回この場で誰かが死ねば、誰かがそれを強く受け止めなければならない。でも、それを受け止め立ち直る時間は用意されていない(秋の放送再開までに視聴者はその死を受け入れてしまう)。1つにはオルガの「死ぬな、生きろ」という命令のため。あの言葉は半モブのガットとディオスが死に、名有りのシノ達ですら生存のラインが危うくなり、それでも生きていたからこそ輝ける。生きていて欲しい、という命令(願い)の下で、ヤマギやエーコがシノやアジー達の死の悲嘆に暮れていたら、その言葉は虚しくなってしまうわけです。
そしてもう1つは、死や絶望といったものは今回、ガエリオが持って行っているから……です。幼い頃からの親友が、自分を変えてくれた部下を、己に思いを寄せてくれていた女を、そして自分に至るまで、その生命をも利用していた。マクギリスは内に隠した憎しみを語ることはなく、利用されていたものをあざ笑うでもなく、ただ淡々と事実だけを語る。だから彼の「彼女の幸せは保証しよう」という言葉は本気なのだということがマクギリスには分かる。同時に、妹の未来を保証するその言葉は彼の裏切りも本気なのだということも保証している。親友が裏切ったことを認めたくない彼の思いは、この言葉を聞いた瞬間に完全に断ち切られた。だからもう彼は、感情の獣になるしかなくなってしまうのです。主人公サイド補正がないにしても、一矢報いることもできない、全く救いのない結末。どれだけ絶望的だよ。
鉄華団の分までガエリオは陰を背負った……と言えますが、でも、陰を背負ったのはガエリオだけではきっと、ない。先に述べたように、本作における名有りキャラの死は必ず誰かの心を傷つけてきた。ガエリオの死が誰を傷つけるか――それはやはり、家族なのだと思います。アルミリアももちろんなのですが、もう1人、家族になるはずだった男を。そして泣きじゃくるアルミリアと異なり、彼は、マクギリスはその悲しみを吐き出すことができない。それは2クールの休止期間の間に潜んでしまう傷だし、きっとマクギリスも傷を表に出すことはないでしょう。でもその傷は、マクギリスの結末に大きな影響をもたらすのではないかと思います。
一方で、やはりこの陰の分だけ鉄華団が「陽」を手にすることができたのも確かで。1番大きなのはやはり「本当の居場所」(の1つ)に行けたことでしょう。三日月はそこに行くまで止まれないし、オルガはそこへ連れて行かなくてはならなかった。だから三日月は「次は何をすればいい」と問い続けオルガは応え続けなくてはならなかったわけだけど、今回やっと、その約束が少し果たせたことになります。だからオルガはようやく三日月に「次は何をすればいい」と問うことができる。少しだけ荷を分かちあうことができる。
激闘の末にバルバトスがCGS収蔵時に近い姿に戻ったように、鉄華団が子供に戻れたように、旧OPのワンシンーンに「戻る」ように、オルガと三日月の関係も少しずつあの約束の時よりも前に戻っていけるのではないか。そんな風に感じたラストシーンでした。
それにしても、ブルワーズ戦でも装甲の隙間を狙うに留まり使いづらいと文句言われていた長ドスが最後の決め手になるとは思わなかったな。本作の格闘兵装が打撃武器の類が中心だったのはもちろん、装甲が厚くて武器が効きづらいという設定のためなわけだけど、その中で機能しない筈の斬撃武器がちゃんと通用するとなればそりゃ恐ろしい武器にもなるわ。見せられてみれば当然の帰結なのですが、「ありふれた筈の武器」を必殺兵器に仕立てあげるのによく仕込んだものだなあ……
というわけで、前回破滅に突っ走っていたのが嘘のように鉄華団にはひとまずハッピーな第1期終了劇でした。サブタイがAパート終了時に挿入されるという印象的な作りもあいまって、その回その回のテーマを考えやすい作品だったなあ。それによってキャラがそれぞれ動いているようでそのテーマに密接に関わっていることなども掴みやすく、アニメを視聴する上でとても勉強になる作品だったなとも思います。
そして何よりビスケットの死からの物語の変転がすさまじく、1人の死が鉄華団全体の死を想起させる焦燥感は相当なものでした。これだけ1人の死が「1通過イベント」で済まされず全体の雰囲気を変えてしまった作品も珍しいのではないでしょうか。そしてそこから気持よく終わらせてくれたこと、これはもう見事としか言いようがありません。
果たして、マクギリスの奸計が成功した後のギャラルホルンはどうなるのか。これからの三日月達の運命は、向かう先は。秋の再開を楽しみに待ちたいと思います。スタッフの皆様、ひとまずお疲れ様でした。……ガエリオ生きててくれないかなあ(´・ω・`)
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