2025-04

2016・9・6(火)山田和樹指揮東京混声合唱団  「日本の歌」

      神奈川県立音楽堂  2時

 「音楽堂アフタヌーン・コンサート」の一環。東京混声合唱団と、その音楽監督・山田和樹が、「里の秋」「春の小川」「夏は来ぬ」「みかんの花咲く丘」「リンゴの歌」「おもちゃのチャチャチャ」といったおなじみの歌曲から、上田真樹の「夢の意味」、柴田南雄の「萬歳流し」などシリアスな作品までを取り上げた。

 「軽い名曲」も悪くはなかったが、私がやはり最も興味を覚えたのは、柴田南雄の「萬歳流し」だった。
 これは、「秋田県横手萬歳によるシアターピース」という副題をもつ、1975年の作品である。

 門付(かどづけ)と呼ばれる、大道芸人が家々の門を回って芸を行ない、お布施を貰うという古来の芸があるそうだが、それに基づきこの曲の「御門開き」の部分では、合唱団員がそれぞれ「太夫」と「才蔵」のコンビを組み、「鶴は千年、亀は万劫、君は栄えておわします、御殿造りの結構は・・・・」と威勢よく唱えながら客席を回り続ける。
 お客からお布施(御祝儀)が出れば有難く頂戴してよろしいという決まりもあるらしく、前の方で何か渡していたおばちゃんもいたようだ。

 曲では、11月7日に山田和樹が日本フィルと演奏する柴田南雄の「ゆく河の流れは絶えずして」と同様、客席のあちこちから聞こえる声が対比し調和し、不思議な音場をつくり出すのが面白く、さらにそれらが、ステージ上に位置した女声合唱の保持する一つの髙音と木魂し合い、神秘的なハーモニーでホール全体を満たすという音響効果が、何とも素晴らしいものだったのである。
 山田は今年、柴田南雄(生誕100年、没後20年)の作品を集中的に取り上げているが、この作曲家の美点を再認識させるよい企画と言えよう。

 なお今日は、ピアノに、いわゆる合唱団付のピアニストではなく、ソリストの小林有沙が招かれ協演していた。合唱に影の如く寄り添うといったピアノでなく、むしろコンチェルトのような意味合いを感じさせる演奏だったのが興味深い。「夢の意味」の第3曲「歩いて」での不気味な音色の一撃など、ソリストでなければ出せないような強烈さにあふれていた。

 山田和樹はこの演奏会でも、指揮だけでなくプレトークから演奏会のMCまで、八面六臂の大活躍。聴衆を巻き込むその話の巧いこと。

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