サンスターは2016年4月18日、歯ブラシに取り付けてその動きをスマートフォンなどに送信するBluetooth機器「G・U・M PLAY」(ガムプレイ)を発売した。歯磨きの仕方が正しいか採点できるほか、歯ブラシの動きで専用ゲームアプリを遊んだり、ニュースの読み上げアプリを利用したりできるのが特徴。歯ブラシを使った時間などのデータはクラウド上に集計され、自分の歯磨きについて継続的にチェックできる。価格は5000円で、サンスターのオンラインショップなどで購入できる。正しい歯磨きの仕方を覚えたい人や、口内の健康に関心の高い層を狙う。
歯ブラシに取り付けるBluetooth機器
ガムプレイは、歯ブラシのグリップ部分に取り付けるゴム製のキャップと、その中に入れるセンサーで構成されている。センサーにはスイッチがあり、歯ブラシのグリップをキャップにしっかり挿し込むとスイッチが入る仕組みだ。
歯ブラシのグリップの形や太さによっては、スイッチが入らない、キャップをしっかり固定できないなどの理由で使えないことがある。サンスターでは、自社の「ガム・デンタルブラシ」シリーズの一部などを適合歯ブラシとしている。それ以外は動作保証外になる。
電源はボタン電池(CR2032)を使用する。1回3分の歯磨きを1日3回行う場合で約半年持つ。重さは約15gだ。付属のキャップは白で、そのほか5色の別売キャップが用意されている。価格はガムプレイ本体が5000円、別売キャップが500円。
歯磨きデータが見えるようになる
ガムプレイには加速度センサーとBluetooth 4.0が内蔵されている。センサーでスピードと向きを検出してスマートフォンに送信するのが特徴だ。スマートフォンは、iOS8.0以上を搭載するiPhone/iPadとAndroid 4.4以上搭載機種に対応する。いずれもBluetooth 4.0以上に対応していることが必要だ。
スマートフォン側では、歯磨きの動きに合わせて楽しめるアプリが3つ用意されている。「MOUTH BAND」(マウスバンド)は、歯磨きの動きに合わせて楽器を鳴らせるアプリ。磨き方が正しいと正確に演奏でき、仲間の楽器が増えていく。逆に正しくないと楽器が減っていく。曲は最初から用意されているもののほかに、スマートフォンに保存している好みの曲を鳴らすこともできる。歯磨きは3分で設定されているので、これも3分で終了するように曲は自動的に編集される。
「MOUTH MONSTER」(マウスモンスター)は、歯磨きの動きに合わせてモンスターを退治するゲームアプリ。モンスターは実際の菌をモデルにしたもので、朝昼晩の時間帯に合わせて変わる。正しい磨き方ができていると必殺技が出せる。ゲームもそれに合わせて3分で終了する。
「MOUTH NEWS」(マウスニュース)は、歯磨きをしている3分間に天気や気温を教えてくれたり、ニュースを音声で読み上げてくれるアプリ。忙しい朝の時間を最大限活用できるようにというアプリだ。今後アプリの追加を考えており、アプリの開発キットも公開する。
これらのアプリで使われているのは、ガムプレイから取り込んだ歯磨きのデータだ。このデータの記録・分析もできるようになっている。「MOUTH CHECK」(マウスチェック)では、歯磨きの仕方が正しいかチェックして採点してくれる。「MOUTH LOG」(マウスログ)は歯磨きの動きや経過時間などを記録・蓄積してくれる。これらのデータはスマートフォンを通じてクラウド上に記録され、後で見返すことができる。
ガムプレイは、1つのアカウントで100名まで登録してこうしたデータを個別に記録・保存できる。例えば家族全員分を登録しておけば、自分の歯磨きデータも子供の歯磨きデータもチェックできる。同じアカウントなら遠隔地にいてもデータを見られるので、遠くに住む子供や両親のデータを見ることもできる
歯科衛生士の歯磨きに学ぶ
歯磨きは、磨いている本人は正しくしているつもりでも、実際には磨き残しがあったり、過剰な力で歯ぐきに傷をつけてしまったりといったケースが多い。そこで、正しい歯磨きの仕方を学べること、小さい子供でも継続できるように楽しみながら学べることが開発の目標だったという。
特徴は、口の中の位置を16分割して、それぞれしっかり磨くように指示が出ることだ。前歯は上下のそれぞれ表・裏で4カ所、上下左右の奥歯は、噛み合わせる部分と内側・外側の3カ所で計12カ所、合計で16カ所となる。一般的には口の中を4分割程度で磨き方を指導することが多いが、それより細かく歯磨きの仕方をチェックできる。
ガムプレイで使われている“正しい歯磨き”の判断基準は、歯科衛生士が実際に使用して記録した歯磨きデータが元になっている。その動きに近いほど高得点になる仕組みだ。筆者も実際に試してみたが、普段自分がやっている歯磨きの動きでは、マウスチェックの表示が“BAD”のままで、“BEST”はおろか“GOOD”にすらならない。必死になってマウスバンドをやってみたら、動かし方が激しすぎると怒られてしまった。このままでは歯ぐきから出血してしまう。
歯科衛生士の方に助けを求めると、歯ブラシを大きく動かすのではなく、小刻みに細かく振動させるように動かすのがいいという。言われた通りにするとようやく“GOOD”になったが、“BEST”はまだ無理。道は険しいようだ。こうして使っていてもグリップに取り付けたガムプレイの重さが気になるようなことはなく、使い心地に違和感はなかった。
これまで歯科に行ったり、歯磨き教室のような場に参加して教えてもらっていた“正しい歯磨きの仕方”を、スマートフォンを使って自宅で簡単にチェックできるのは面白い。これぐらい気軽にできるようになると歯磨きが面倒くさくなくなってくるし、ゲームと連動させることで子供も正しい歯磨きの仕方を身につけやすいだろう。
「ガムプレイ」では、ユーザーの歯磨きデータがクラウド上に蓄積されていく。サンスターではこうしたデータを使った今後の展開も考えている。
「口内の健康と身体の各部は密接に関係している。例えば歯周病は多くの疾患の発症や進行につながる。蓄積されたデータはこうしたヘルスケアの分野で役に立つ。また、歯の噛みあわせを気にすることが多いスポーツ分野とも連携できると考えている」(サンスター オーラルケアカンパニー アジア/日本エリアマーケティング部 松富信治氏)という。
自分や家族の虫歯予防だけでなく、成人病予防やスポーツで実力を発揮するための体調管理など、広い範囲で役立ちそうな機器だ。なお、発売日の時点ですでに予約がいっぱいで一時品切れ状態になっている。口内の健康を気にする人がそれだけ多いということなのかもしれない。
(文/湯浅英夫=IT・家電ジャーナリスト)
登録会員記事(月150本程度)が閲覧できるほか、会員限定の機能・サービスを利用できます。
※こちらのページで日経ビジネス電子版の「有料会員」と「登録会員(無料)」の違いも紹介しています。