経団連に加盟する大企業の会社説明会が3月から解禁となり、2017年卒大学生の就職活動が本格的に始まった。6月から選考も解禁となるため、わずか3カ月で志望企業を絞り込む必要がある。本日より毎日、就活のポイントを解説していく。第1回は、人事部採用担当者の本音に迫り、エントリーシート(ES)や面接で落としたくなる就活生の共通項を探った。

2017年卒向けの就職活動は史上最短の決戦となる(写真:TK/アフロ)
2017年卒向けの就職活動は史上最短の決戦となる(写真:TK/アフロ)

 紆余曲折を経て、2017年卒の就職活動は面接などの選考開始時期が2016年6月となることが決まった。8月開始だった就活2016に比べ2カ月前倒しとなり、就活生の準備期間はそれだけ短くなる。そこで本日から、採用担当者の本音に迫り、内定を勝ち取る方策を紹介していく。第1回はエントリーシート(ES)や面接で落としたくなる就活生の共通項を探る。

 本番の選考で何か問題があっても、企業からフィードバックされることはない。落とされた就活生の実例を知れば、改善すべきポイントも見えてくるはずだ。

御行? ウチは証券会社だけど

 就活生優位の売り手市場と言われているが、人気企業の選考はいまだに激戦だ。例えばユニ・チャームには約50人の採用枠に3万のESが届く。単純な倍率は600倍を超える。まずは志望動機や自己PRを適切にESにまとめなければ、面接にもたどり着けない。

 大企業でも採用担当者が数人というところは少なくない。少人数で何千、何万というESを読み込んでいく作業は大変だ。それだけにちょっとしたミスでも落とす理由になる。

 ダメなESに多いのは「文字が少ない/小さい」というもの。「少ないとやる気を感じない」「文字が小さいと読みにくく、1つのESを読むのに時間がかかるのでパスする」と担当者は語る。誤字脱字や修正液で修正、ボールペンで黒塗りしているなども「関心の薄さを物語っていると判断する」(化粧品メーカー)。

 「御行と書いてあるけど、ウチは証券会社」「ESにライバルメーカーの商品のことが書いてあった」など、社名・商品名の間違いは致命的だ。

 写真に関するNG例も多い。写真なしは論外として、「ふざけている写真や、部屋の家具が背景に映りこんでいる写真を貼っていた学生もいた。自然な感じを演出できるとでも思ったのか…」と厳しい意見が目立つ。

 あるサービス業の採用担当者は過度な写真修正はやめた方がいいとアドバイスする。「美しい写真だとESの通過確率は上がるかもしれないが、面接で会ってギャップが大きすぎると誠実さがないと判断する」。

 しっかりと書かれたESでも、中身が不適切ならば落とされる。共通するのは、自己PR欄にバイトやサークルでの実績だけのものや、実績は書いてあっても評価しにくいものだ。「『100人をイベントで集めた』『バイト先の売り上げを2倍にした』と言われてもすごさが分からない」(サービス業)。

 さらに、実績は評価できても、そのプロセスがないもの、そのプロセスを選ぶに至った自分の考えが伝わらないESも「本人がどんな人か感じられないので落とす」(大手広告代理店)という採用担当者は多い。

 ある商社の採用担当者は「人柄や、業務理解、自分のやりたいこともしっかり書かれているが、落とすESがある」という。それはコピーした内容と疑われるもの。似たESが続いたことを不審に思った担当者がインターネットで検索したところ、商社のES事例集にほぼそのままの文面が出てきた。「疑わしいものは全部落とした」という。

 「当社への関心の高さは認めても、きれいごと過ぎるESは低評価」という担当者もいる。そのESは入社したら海外の発展途上国で社会貢献をしたいという熱意があふれていた。「社会貢献は否定しないが、それならNPOやボランティアでやって」と手厳しい。

面接の前にもチェックの目

 続いて面接やグループディスカッションで落とす条件を尋ねた。

 戦いは面接前から始まっている。かなりの割合の企業が受付や通路、そして控え室で就活生の振る舞いをチェックしていると答える。「受付でぞんざいな態度を取る就活生はけっこういる。そういう人はこっそりチェックが入る」。それだけで一発アウトにはならないが、「どちらの就活生を次の選考に進ませるか悩んだ際の判定材料になる」。

 面接でNGとなるのは、暗記してきた話を何とか話そうとする就活生だ。「暗記はすぐにばれる。途中で暗記内容を思い出すために一瞬斜め上を見たりするからだ」(広告代理店)。この場合は内容の良し悪しではなく、用意された言葉ではどんな人物か分からないために落とすという判断になる。

 集団面接では、協調性がない就活生に対しては特に評価が厳しい。「面接で話す順が1番手なのに長々と話す人がいる。時間が30分で6人だと1人が話せるのは5分程度。協調性がない」(大手商社)とバッサリ。5、6番手の就活生は時間不足でピンチとも言えるが、チャンスでもある。ここで簡潔にまとめて話せれば、「状況に応じて行動できる人だと分かるし、時間が短くて申し訳ないと高評価につながる」(同)。

 ストレスへの耐性が低そうな就活生も避けられがちだ。「一番つらかった出来事と乗り越えた経験を聞く」「なぜ?なぜ? と質問で深掘りしていくときの対処を見る」など方法は企業ごとに異なるが、当落の判断材料にしている企業が多い。「入社してすぐに休職・退職になると、本人や配属部署、採用担当者のすべてにいいことがない」(システム開発)ためだ。

優秀と認めつつ落とすことも

 最近では面接の代わりにグループディスカッションを導入する企業も多い。 面接だけでは測れないコミュニケーション能力や人柄を見るためだ。選考前のインターンシップや説明会でもいい人材を見つける目的で実施される。

 マニュアル本には「仕切り役やタイムキーパーなどを率先すべし」と助言が載るが、採用担当者によると「役割=高評価」というわけではない。「仕切っているだけ、時間計測するだけで、自分の意見を言わない就活生は人物を評価できない」からだ。

 「他人の話を否定ばかりする」「議論の流れをくまず、筋違いの話をする」といった就活生も落ちる可能性が高い。

 グループディスカッションは1グループ内で落とす人数を決めていない企業も多い。各人がしっかり発言し議論が深まれば全員通過もあるし、逆もある。

 話す態度や癖も見られているので注意したい。貧乏ゆすり、ボールペンをカチカチとノック、ほおづえをつくなど無意識に出てしまうものだが、「落ち着きがない人、精神的に幼い人といった印象を受ける」(サービス業)。

 選考では能力が高いと認めながらも内定を出さないこともある。これは「華やかな業界が好きそうだが、当社はお堅い鉄道会社」「ウチはチームプレー重視だが、個人プレーが合いそう」など社風に合わないと判断されたケースに多い。つまり落とされた理由は千差万別であり、内定が取れなくても気持ちを切り替えて次に挑むことが大事だ。

《本記事は、日経ビジネス2015年12月7日号スペシャルリポートを再構成しました》

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