不確実で、変化も加速している現代。経営や生き方の揺るがぬ指針を求めて、古今の思想・哲学に学ぶ企業やリーダーが増えている。

 禅や瞑想が医学や心理学とも結びつき、「マインドフルネス」として発展した米国。人工知能(AI)の台頭など事業環境が激変する中、プレッシャーにさらされる経営者たちは「心」とどう向き合っているのか。

 日本から米国に渡り、多くのビジネスリーダーに浸透していった「禅」。ストレス軽減や集中力を高める効果の研究も進み、米国では宗教色をなくしたマインドフルネスへと姿を変え企業が研修などに取り入れるようになった(関連記事:セールスフォース・ベニオフCEOも虜に 「禅」が日本のキラーコンテンツに)。

「押しつぶされる」経営陣

 マインドフルネスは、米社会全体が閉塞状態に陥った新型コロナウイルス禍でさらに注目を集めた。コロナ収束とともに、それが一服したかに見える。しかし、20年余り禅を実践している米法律事務所ホワイト&ケース幹部のマティアス・バーク氏は「かつてなく重要になっている」と明言する。研修で出会う企業の幹部たちが「強いプレッシャーに押しつぶされ、不安や困難な感情に苦しんでいる」と言う。

 実際、経営者や管理職を取り巻く環境は厳しい。社会の分断が進む中で、中東地域の紛争や台湾有事といった地政学リスクにも目を配る必要がある。一方で、リモートワークなど様々な働き方をする人材をうまく管理しなければならず、メールやチャットツールの通知は止まらない。

 仏教で「三毒」と呼ばれる貪欲、怒り、無知。まさにそれらに日々さらされている状態といえるだろう。職場の苦境は数字にも表れている。米マイクロソフトが24年春に世界の働き手3万1000人を対象に実施した調査によれば、68%の人が仕事の量やペースに苦しんでおり、46%の人が「燃え尽きた」と感じていた。

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