大塚家具の創業者、大塚勝久会長(撮影:北山宏一、以下同)

経営権を巡って父娘で委任状争奪戦(プロキシファイト)が繰り広げられている大塚家具。12日の大塚久美子社長に続き、大塚勝久会長が本誌のインタビューに応じた。大塚会長は、娘の久美子社長について「広告宣伝の考え方以外の経営方針は同じじゃないかと思う」と話す。

(聞き手は西 雄大)

一連の騒動で本業に影響は出ていないのか。

大塚勝久会長:ものすごく影響が出ている。3月、4月は売り上げも受注も多い時期。婚礼や引っ越しなどお祝い事が半分以上を占める。

 こうした報道が続く中で、買い控えやキャンセルも起きている。1年で一番大事な時期にこんなことになって、お客様に申し訳ない。会社はびくともしないが、社員にも迷惑をかけている。売り上げと連動して支払っているボーナスも減ってしまう。私が復帰して何とかしないと、という思いが強くなっている。

約10%の議決権を持つ(2015年3月3日に保有株の半分以上に当たる6.12%を売却。10日に発表)大株主のブランデス・インベストメント・パートナーズは久美子社長の支持を表明した。どう見ているか。

勝久会長:私も大株主としてブランデスさんと同じ考えを持っている。会社を良くしたい。もちろん株主様にも還元したい。決して無視してきたわけではない。考えはすべて同じだ。社長側を支持するというのは何か意図があるのかと思う。

 我々が企業価値向上策を発表する前に株を売られてしまった。お会いしたいとずっとお願いしていたので残念だ。昨年はお会いしてショールームも案内した。直接会えなくてもあらゆる手段を使って理解していただけるように努力する。総会の当日までに分かっていただければそれでいいと思っている。決してあきらめていない。

社外取締役の意見受け、増配を決断

ほかの株主に対しても賛同を得られるように働きかけているのか。

勝久会長:今週の月曜から長く株を持っていただいている方々を中心に訪問している。まずは皆さんにお詫びとご説明だ。

 長期の株主の場合、店頭公開前からなので、37年間の付き合いになる。私はオーナー経営者だが、当初から30%しか株を持っていない。いつ辞めさせられるか分からない緊張感の中で経営してきた。

 株主の皆様には絶対にご迷惑をおかけしないつもりでやってきたが、こんなことになって申し訳ない。親子の問題でご迷惑をおかけするなんて、私の人生は何だったのだろうと思ってしまう。

「いつ辞めさせられるか分からない緊張感の中で経営してきた」と強調する

 株主の皆様にお会いしてもブランデスさんが売却を発表する前は「大変ですね。健康に気を付けてください」だった。でも、発表後はなぜブランデスが売ったのかに関心を持たれ、27日の総会の心配をされている。

 株主の皆様へのお詫びが終わる来週の水曜日以降に、正しい判断をしていただけるようもう一度お願いをしに行こうと思っている。お詫びとお願いを1回の訪問ではできない。

3月6日に発表した企業価値向上策では、なぜ配当額を3倍(40円から120円)に設定したのか。

勝久会長:もともとは社外取締役の意見だった。株主還元として増配した方がいいと言われた。正直にいえば、私は躊躇した。先に社員に報いるべきだと考えていた。だが、何としてでも私が社長に戻らないといけないという思いも込めた。

 お約束した120円という配当額は3年間だけで終わらせるとは思っていない。私は収益で配当を稼ぎ出す。株主の次は社員に還元したい。本当に社員は頑張ってくれている。そしてこの年の私に期待してくれている。期待に応えないといけない。

この記事は会員登録(無料)で続きをご覧いただけます
残り2917文字 / 全文文字

【初割・2カ月無料】お申し込みで…

  • 専門記者によるオリジナルコンテンツが読み放題
  • 著名経営者や有識者による動画、ウェビナーが見放題
  • 日経ビジネス最新号12年分のバックナンバーが読み放題