「すべての女性が輝く社会に」をスローガンに、安倍政権が強力に推進している女性活用。政権発足から2年余りが経つが、企業の間でもようやく対策に本腰を入れ始めてきた気がする。
しかし私はこの「女性が輝く」という言葉が嫌いだ。30歳の時に第1子を出産し、2歳の子供を育てながら記者を続けている私の生活の実態は「輝く」という言葉からほど遠いからである。テレビで安倍晋三首相が演説をしているたびに思う。「安倍さん、あなたは何を分かってこんな偉そうな事おっしゃっているのですか」と。
もう一度「女性が輝く社会」とやらの中身を整理しよう。内閣府のウェブサイトを見ると色々項目が並んでいるが、簡単に言うとこの政策は2本立てである。
1つは「女性でも出世できる」というインセンティブの付与である。能力ある女性を「女性だから」という理由で管理職に登用しなかったり、重要な仕事から外すことは、表立っては言われなかったが、どの企業でも少なからずあったことだった。この「暗黙のルール」を無くし、女性の活躍機会を拡大すれば、女性もモチベーションが上がり、働き続けようと思う、というロジックである。
2つ目は「女性が働く上での障害」の排除である。女性がキャリアを継続する上でネックになっているのが家庭との両立だ。そこで保育園など子供を安心して預けられる環境を整備すると共に、フレックスタイムの導入や在宅勤務といった「柔軟な働き方」を用意する。そうすれば女性も家庭と仕事の両立に前向きになり、女性の社会進出が進むという見立てである。
仕事の楽しさに目覚め、結婚しない
だが誤解を恐れず言おう。女性活用が進めば進むほど日本の少子化に拍車がかかり、離婚率が高まると。
この論拠は以下の通りである。企業が女性活用に熱心になり、管理職、果ては役員になる「ロールモデル」が増えれば増えるほど、女性は仕事の楽しさややりがいを覚え、結婚・出産から遠のくのではないだろうか。結果、ますます少子化が進む。
私自身も経験がある。24歳で大学院を卒業して会社に入り、仕事を一通り覚えたのが5年後くらい。ここで結婚して、子供を産んだ。産休に入る前、1年とはいえ会社から離れるのがとても名残惜しかったのを覚えている。
かつては女性にとって当たり前だった「結婚、出産」は、今や選択肢の1つ、すなわち「ワン・オブ・ゼム」になりつつある。結婚してもすぐ子供を作らないカップルも増えた。多様な選択肢を許容する社会的素地があるだけに、仕事に打ち込み子供を作らない、あるいは作ったとしても晩産化で1人しか産まない、ということが増えるのではないだろうか。
「もうこんな生活続けられないよ!」今から約2週間前のある朝、私は初めて夫に雑巾を投げつけた。大学教員の夫と私はお互いの仕事の都合を見ながら子供の保育園のお迎えを分担している。この日は夫の当番日だったが、6時には間に合わないため7時までの延長保育を申請しなければならない日だった。
恥ずかしながら雑巾を投げつけたワケ
夫は約1カ月前に「メール」で、自分の当面の予定を一覧にして私に送っていたが、私は忙しくてそれを見落としていた。そのため、延長保育の申請をし忘れてしまったのだ。夫はそんな私に対し「前に送ったんだけど」と不満そうに文句を言った。
その瞬間、私の中で何かがぷつりと切れたのである。正直、私と夫の家事・育児の分担は公平ではない。夫は一切料理をしない。私の仕事が遅くなり、夫に子供を迎えにいってもらう日も、食事はすべて作っておいておく。掃除もしない。やるのはごみ出しと皿洗いを時間のある時にするくらいである。
人にはそれぞれ得意、不得意があるので別にそれでも構わなかった。週に何日か夜、子守をしてくれれば私は遅くまで仕事ができるからだ。しかし、2月は夫の仕事も忙しく、ほとんど私は毎日5時過ぎに会社を出て保育園に子供を迎えに行っていた。そして、子供が寝た後に家で仕事をしたり、帰ってきた夫と交代でまた会社に行っていたりしていたのだ。寝不足でとても疲れていたのである。
これらの不満蓄積が夫に雑巾を投げつける結果となったわけだ。犬も食わない夫婦喧嘩だが、共働き夫婦の方なら共感してくれるのではないだろうか。
【初割・2カ月無料】お申し込みで…
- 専門記者によるオリジナルコンテンツが読み放題
- 著名経営者や有識者による動画、ウェビナーが見放題
- 日経ビジネス最新号12年分のバックナンバーが読み放題