さて、今回は英語を論理的に書く・話す、という話と、オーラル・コミュニケーションの話をしてみたい。

 「英語は、日本語よりも論理性を要求する言葉なので、論理的に書き、話せないと、本当には通じない」

 「英語で話すときは、まず結論をシンプルに。その後、その理由を述べていくのがよい」

 こういった意見を目にしたり、耳にしたりした方も多いだろう。

 英語で何とか仕事をしてきた1人としては、どれも、まさにその通り、と思うのだが、典型的日本人にとっては、どうやってそこに到達するかが問題だ。

英語のコミュニケーション力を構成する2つの能力

 少し因数分解してみると、上記のような英語コミュニケーション上の力は、(1)英語に即した論理構造を構築する能力」(2)「ぼんやりしたイメージを、端的な言葉に結晶化する能力」──の2つから成り立っている。

 自分自身の経験や、仕事の上で後輩を教えた経験に基づいた考え方に過ぎないけれど、英語を学びながら「日本語でこれら2つの能力を高めていく」という日英両方からのアプローチが、最も効果的なのではないかと感じている。

 実際にやってみると、日本語での知的能力を高めるという作業が、ある段階から英語の運用能力を高めることに、自然とつながっていく、という感覚だ。英語を徹底的に鍛えることだけでも、これらの能力は高め得るのだけれど、日本で教育を受けたノンネイティブにとっては、日本語で新しい能力をつけ始める方がよほど楽だし、スピードも速いように思える。

 まずは、論理構築能力から。

 ビジネスの場で使われるような英語の論理構造は、いわゆる「ピラミッド構造」になっている。結論を頂点に、それを支えるデータや論理が、何段階かのレベルにわたって積み上げられている、という形式だ。

 私自身、駆け出しのコンサルタントの頃、日本語・英語それぞれについて論理の緩さを何度も突き付けられ、必死になって身につけようとした経験がある。その際に役立ったのは、欧米言語における論理構造について、詳しく解説してくれる、バーバラ・ミント著『考える技術・書く技術―問題解決力を伸ばすピラミッド原則』(ダイヤモンド社)という書籍だった。

 この本で紹介されているポイントの1つに、「論理要素のレベル感」という考え方がある。具体的な表現は少し異なっていたかもしれないが、要するに、結論を支えるロジックと証拠の各階層が、「同じようなレベル感」でそろっている、ということだ。コンサルタントがよく口にする「MECE(mutually exclusive, collectively exhaustive)」という言葉があるが、実はこれも同じことを別の表現で表しているに過ぎない。

 この言葉の意味は、「論理の構成要素が、それぞれ独立していて重複がない。さらに、要素全体としてみれば、抜けや漏れがなく、見るべき要素をすべてカバーしていること」といったものだ。

 レベル感がそろった論旨だと、論理構成がMECE的な組み立てになっていて、抜けや漏れがないと感じられる。それによって、読み手や聞き手の納得感が高まるわけだ。

定石を学ぶとネイティブの思考に近づく

 このような定石を学び、普段の仕事の中で報告書やレポートを書く際にも、論理構成のレベルを上げていく。こういった努力を続けていると、自分の思考パターン自体が、英語ネイティブがビジネスの場で思考しているのと似通ったものになってくる。

 さらに併せて、英語を読み・書く際に、論理構造を意識するようにしていると、「日本語での論理力向上」と「英語運用上の論理力向上」が、相乗効果を上げ、両方が伸びてくるようだ。

 ちなみに、この種の本はいろいろ出ているが、ロジカルシンキング系の類書だけでなく、『理科系の作文技術』(木下是雄著、中公新書)のような本もなかなか役に立った覚えがある。

 さて、話をオーラル・コミュニケーションの方に転じたい。

 前回に述べたように、リンガフランカとしての英語を身につけ、仕事で使えるようにしていくうえでは、ネイティブのような発音で会話ができることを目指す必要はないと思う。

 しかしながら、相手の言うことを一定以上聞き取れる能力は、どうしても必要だ。発音の方も、ひどい誤解をされたり、全く通じない、というレベルでは困ってしまう。

 このレベルをとりあえずの達成目標とした場合、どういう学び方が効果的だろうか。

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