はじめに
 

 大河ドラマ「真田丸」は、賛否両論。おもしろい派とおもしろくない派に分かれて議論が沸騰していますね。前者が心なしか多いように感じます。筆者はやや辛口ですが、大河ドラマ「真田丸」批評を執筆する際のスタンスを改めてブログ(下記URL)に記載しています。ご関心のある方は、お読みになっていただけると幸いです。一つ言えることは、大河ドラマに頑張ってほしいということです。

 

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 ドラマのほうは、ますます混迷度を深めていますが、話のヤマは信繁(役・堺雅人)による、上杉景勝(役・遠藤憲一)との同盟締結になるのでしょうかね。

 

 さあ、第10回 「妙手」はどうだったのでしょうか!

 

信尹の獅子奮迅の活躍
 

 地味ですが、がんばっているのが信尹(役・栗原英雄)です。がんばっているというのは、史実として信尹が果たした役割(暗躍)でもあり、栗原英雄さんの演じ方という二つになりましょう。この方、現在出演している人のなかでは、一番まともな武士らしい武士を演じています。経歴を調べてみると、劇団四季の出身者とか。今後の活躍(大河ドラマの信尹役として)が期待されます。

 

 一方、昌幸(役・草刈正雄)は囲碁三昧です。当時、戦国武将は囲碁を愛好しており、昌幸もその一人であったと言われています。しかし、画面に映っている間、ずっと囲碁をしっ放しというのは、いささか腑に落ちないところです。北条氏政(役・高嶋政伸)が、いつまでもバリバリ金平糖を食っているのも気になります。金平糖でなければ湯漬け(汁飯???)です。過剰演出ですね。

 

 また、昌幸はむらっ気がかなりあり、いいアイデアを出したかと思えば、失敗すると「わからん」と投げやりな態度です。こんな描き方でいいのですか?

 

沼田領の問題


 もう一つの話のヤマが、真田氏が保持していた沼田領の問題になりましょう。沼田領とは上野国利根郡にあった沼田城を中心とした真田の所領です。今の群馬県沼田市がおおむね該当します。おさらいになるのですが、徳川家康(役・内野聖陽)が北条氏直と和睦をした際、家康が信濃国佐久郡と甲斐国都留郡を領有することとし、氏直が利根郡の沼田領を領有すると取り決めます。これが天正10年(1582)10月の話です。

 

 すでに天正10年8月、利根郡の隣の吾妻(あがつま)郡岩櫃城(群馬県東吾妻町)に矢沢綱頼と信幸(役・大泉洋)が入城し、その後、綱頼は沼田城に入ります。こうして沼田城は緊迫した状況に包まれ、同年10月には北条氏の攻撃が激化します。そして、上記のとおり、家康と氏直が和睦をしたので、昌幸は窮地に追い込まれるのです。

 

 ドラマでは取り上げられていませんでしたが、翌天正11年1月には小県(ちいさがた)郡では丸子氏らの地侍衆が徳川方に反旗を翻しており、昌幸らは鎮圧に奔走します。また、上杉景勝に属していた更級郡の屋代氏、室賀満俊、禰津昌綱らは家康の配下に収まります。複雑ですね。

 

 結局、昌幸は家康と氏直が決めたルール(領土割譲)に従わなかったので、話は大いにこじれてしまうわけです・・・。

 

上田城築城


 ドラマでは、信幸が昌幸の名代として家康のもとに向かい、今後の扱いについて交渉をしていました。叔父の信尹や弟の信繫も同行していました。その際、対上杉氏を名目として、上田城の建築を進言し、費用は家康が負担し、真田が城主となる旨を相談します。家康が築城し、昌幸に下賜したというのは、最近提示された説です。

 

 二次史料によると、たしかに上記のような記述が見られます。しかし、この事実を裏付ける良質な史料はなく、否定的な見解も提示されています。そもそも家康には、そこまでの余力はありませんでした。話としては面白いので、逸話ながらもドラマに採用したのでしょう。

 

 上田城の原型は、すでに天正10年頃から見えています。ドラマでも取り上げていましたが、尼ヶ淵(のちに上田城が築城される場所)に昌幸の拠点がありました。上杉方の虚空蔵山城が近くにあったので、上杉家の直江兼続も尼ヶ淵の昌幸の動きに注意を払っていたようです。

 

 それにしても、信幸と本多忠勝(役・藤岡弘、)との邂逅がありましたが、これはドラマのナレーションのとおり、後に信幸は忠勝の娘(家康の養女になる)の小松姫を妻(正室)として娶るからでしょう。人質になっていた祖母・とり(役・草笛光子)との再会もございましたが、相変わらず呑気な人ばかりと思ってしまいますね。

 

 というのも、無事帰還した「とり」は、真田の女たちを集め、「真田の女に何ができるか」を話し合います。ちょうど1962年のキューバ危機のときにケネディ大統領が、アメリカ国民一人ひとりに何ができるのか考えて欲しいといったことがありましたが、それを真似したのでしょうな。何かいい案でも出るのかなと思ったら、案の定、人質が良いとか悪いとか、相変わらず幼稚な話です・・・。こうした無駄な場面が多いのが、今回の大河の大きな特長かもしれません。

 

信繁の結婚


 ところで、こうしたややこしいときに、ハッピーな話が湧きおこります。何と、信繁の恋人・梅(役・黒木華)がご懐妊ではあーりませんか! いつの間に! と思いましたが、やはり天下のNHKですからラブ・シーンはご法度なのでしょう。昔から「できちゃった婚(授かり婚、とも)」はあったのですね。でも、きり(役・長澤まさみ)がかわいそうだな、と。

 

 実のところ、信繁と梅が結婚した時期は、詳しく分かっていません。天正10・11年ならば、当時で言うところの適齢期でもあり、特に問題はないです。のちほど登場すると思いますが、信繁の正室は大谷吉継の娘です。今の淡い初恋は、その後どうなってしまうのですかね。略奪婚になってしまうのでしょうか?

 

景勝のもとへ


 昌幸は考え抜いた挙句、家康と氏直へ対抗すべく、かつて裏切った上杉景勝に与そうと考えます。そして、景勝のもとに派遣されたのが信繁です。

 

 時期的には天正13年6月頃と考えられており、これまでの経過から一気に2年ほど飛んでしまいます。昌幸が上杉との交渉を開始したのは、それ以前との説もありますが、今は従来説に従います。その翌月、当時、弁丸と称していた信繁は、上杉方の海津城に人質として送られてしまいます。先ほど、ラブラブのご懐妊の話がありましたが、実際は新婚生活が難しかったかもしれません。

 

 それにしても、信繁の景勝に対する口上は、大変お見事でした。信繁の演説は、今流れている「スカパー(衛星放送)」のCMとまったく同じ口調で、はじめは「スカパー」の宣伝でもはじまるのかと思いました。それにしても、信尹の次くらいにまともに演じている景勝も「おもしろい!」と一言発し、真田の申し出を受けるわけですから、何が何だかわからなくなるわけですね。

 

おわりに


 いちおう私もこのあたりの事情は勉強し(たつもりで)、テレビを見ているわけですが、やはり途中で頭が混乱してしまいます。ここ数回は昌幸ら真田一族の動きを中心として、家康、氏政、景勝らの腹の探り合いがメインで描かれており、ときどきラブロマンスやホームドラマが絡む展開ですが、実のところ史実はなかなか複雑です(周辺の国衆の動きとか)。

 

 実際、その間にはここでは書ききれないくらいの動きがあり、ドラマでもある程度取り上げてくれないと、視聴者が理解にしにくい面があります。要は説明不足といえましょう。妙なエピソードや素っ頓狂な会話(思いつきとか)だけでは視聴者を楽しませるのは難しく、少しは合理的な視点や解釈なりで納得させる必要がありそうです。

 

 ところで、今回の視聴率は16.2%とまたまた少しだけ下がりました。次回は、再度の20%台を期待しましょう! 夢よ、もう一度!

 

 今日はこのへんにしておきましょう。では、来週をお楽しみに! 「ガンバレ! 真田丸」

<了>  

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