【1】はじめに
5月27日(火)から江戸東京博物館(東京都墨田区)で「軍師官兵衛展」が開催されているが、その前日のお披露目会に招待されたので行ってきた。特筆すべきは、なんと特別ゲストに中谷美紀さんが来ていたことだった! 「美しい!!!」と言いたいのであるが、少し遠かったのでよく見えなかった(涙)。きっと美しいはずだ。
展示物は「黒田家文書」をはじめとし、兵庫県下の中世文書(「芥田文書」「正明寺文書」など)も展示されていた。官兵衛ファンであるならば、ぜひ行くべきであろう。図録もなかなか見ごたえがある。ちなみにですが、6月11日(水)に同館主催の講演会で話をしますので、ご都合のつくかたは、ぜひご参加くださいませ。
それにしても有岡城のシーンがあまりに長すぎる。もうネタが尽きたというところであろうか??? 短いのも嫌われるが、長いのも嫌われる???
やはり、官兵衛(役・岡田准一)の悶え苦しむシーンと官兵衛を救おうと奔走する家臣たち、そして官兵衛を信じる羽柴秀吉(役・竹中直人)らの厚い友情が目玉となるのだろう。それにしても、蜂須賀正勝(役・ピエール滝)も「軍師」といわれていたが、とうとう正勝も「軍師」になったのかと嘆息した。それにしても、一人の武将にあまりたくさんの「軍師」が仕えていると、安っぽくないだろうか???
閑話休題。
今回もまた、突っ込みどころ満載でおもしろかった!
【2】「だし」のこと
よく考えてみると、荒木村重(役・田中哲司)の妻だし(役・桐谷美玲)のことをすっかりと忘れていた。彼女のことを書かなくてはなるまい。ただ、ご承知のとおり戦国時代の女性については、ごく一部の例外を除いて、あまりその生涯が知られておらず、「だし」も同様である。
「だし」は、本願寺に仕えていた川那部氏の娘と指摘されている(『左京亮宗継入道隆佐記』)。ただ、天正7年(1580)段階での年齢は各説あり、『信長公記』では21歳とあり、『左京亮宗継入道隆佐記』では24歳とある。同年、村重は46歳であったことがわかっているので、なんと年の差は22~25歳ということになる。
正直に言うと「うらやましい」。実は今気付いたのであるが、私も46歳なので村重と同じ年だ。ただ、私には20歳以上も年の離れた彼女はいない。いや、おばあさんですら近寄ってこない(涙)。
それはともかく、「だし」を演じているのは、美人女優の桐谷美玲であるが、諸記録には「だし」の容貌をどう書いているのか。『信長公記』には美人であると書かれており、『左京亮宗継入道隆佐記』も同様の評価を行なっている。とりわけ後者の史料は、世界三大美人の一人「楊貴妃(ようきひ)」になぞらえている(ほかの二人は、小野小町とクレオパトラ)。
ドラマのとおり、「だし」はキリシタンであった。その名を「Daxi」と表記し、洗礼名であるとする説もある。「出汁」ではない・・・。「だし」が官兵衛のことを気にかけ、食糧を送ったりしようとするのは、彼女がキリシタンで優しかったからか??? ちょっと過剰な演出か???
天正7年(1580)12月、「だし」は織田信長(役・江口洋介)の配下の者によって、京・六条河原で斬殺された。その後、荒木一族は信長により皆殺しにされている。
【3】村重は尼崎に逃げたのか???
村重は毎度のことながらハイテンションで、セリフはすべて絶叫調である。最初は強い違和感があったものの、だんだんと彼の必死な思いが伝わってくるように感じた。
天正7年9月、ドラマでやっていたように、村重は有岡城を出て尼崎城に移った。そして、有岡城は同年11月に落城してしまう。無念。
そのとき信長は、有岡城の城守だった荒木久左衛門に対し、尼崎城と花隈城(神戸市)を明け渡せば、預かった妻子を助けるとの約定を交わした。久左衛門は村重のもとに赴き説得を試みるが、ドラマのように失敗に終わった。残された人質は斬殺される。
これまで村重が尼崎に移ったのは、自分だけ助かろうとして逃亡したといわれてきた。しかし、ドラマでもやっていたように、近年の研究では村重が海に近い尼崎に移り、本願寺や水軍を率いる毛利氏との連絡を密にし、反転攻勢に出ようとしたと指摘されている。つまり、逃げたのではないのだ。
後世の編纂物は、敗者に対して厳しい評価をすることがある。村重は一族や妻子を殺されたが、自分だけは生き残った。そのことが大きな誤解を招いたのであろう。
【4】最後に
ここにきて、視聴率も16.6%に上昇した。そろそろ有岡城は止めにして、次の場面に移る必要があろう。また、新キャストも発表されたようなので、今後が大いに楽しみだ!しかしながら、油断は禁物である。今年(6月13日から)はサッカーのワールドカップもあるしね。
がんばれ「軍師官兵衛」!
〔参考文献〕
渡邊大門『黒田官兵衛 作られた軍師像』講談社現代新書
渡邊大門『黒田官兵衛・長政の野望――もう一つの関ヶ原』角川選書
渡邊大門『誰も書かなかった 黒田官兵衛の謎』中経の文庫
〔ご案内〕
さて、私事になりますが、現在、黒田官兵衛に関する下記の講座を開講しています。ご都合があえば、ぜひご参加いただけると幸いです。
☆日本史史料研究会(練馬区)「『黒田家譜』から官兵衛の生涯を探る」
→こちら http://www13.plala.or.jp/t-ikoma/page040.html
>洋泉社歴史総合サイト
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