【1】女子の薙刀隊
板垣退助(役・加藤雅也)、大山弥助(のち巌)(役・反町隆史)、伊地知(いじち)正治(役・井上肇)が二本松城に入ったのは、慶応4(1868)年8月19日。いまの暦では10月。奥羽にはすでに寒さが忍び寄っている。冬になる前に会津を落とさなければ、新政府軍が不利となる。板垣たちは地図を広げ、どの峠を越えて会津に攻め込むか協議する。
山本家では、川崎尚之助(しょうのすけ)(役・長谷川博己)を隣に控えさせた権八(役・松重豊)が、佐久(役・風吹ジュン)、八重(役・綾瀬はるか)、うら(役・長谷川京子)、みね(役・池田沙弥花)、徳造(役・戸田昌宏)、お吉(役・山野海)を前に、会津の者としての覚悟を語って聞かせる。
角場で、権八と尚之助は登城の準備をはじめる。少女時代の八重の火縄銃の落書きを見つけ、それを折りたたみ、うれしそうに懐に入れる権八の表情がいい。
八重は、三郎の遺品の着物をそっとかき抱く。
目と脚を悪くして寝込んでいる黒河内伝五郎(役・六平直政)を八重と日向ユキ(役・剛力彩芽)が見舞っている。黒河内は、「こんなときに、お役に立てぬとは情けねえ」と悔しがる。
道場では、中野竹子(役・黒木メイサ)を中心に、女たちが薙刀の稽古に励んでいる。薙刀隊をつくり、照姫(役・稲森いずみ)を守ると言う。竹子の母こう(役・中村久美)、妹の優子(役・竹富聖花)、岡村すま子(役・白須慶子)、依田まき子(役・小出ミカ)、妹の菊子(役・吉谷彩子)らもいる。「娘子軍(じょうしぐん)」と呼ばれる面々だ。
隊には加わらないと宣言する八重に、皆は怪訝な顔をする。だが竹子は、「八重さまには別のお考えがおありなのでしょう」と納得する。
八重はユキ(役・剛力彩芽)にだけ「薙刀では、薩長は倒せねえ」「薙刀ではねえ、お城を守れんのは」と打ち明ける。
このへん、藩内女子のあいだの温度差を感じますね。ユキは、娘子軍に入ることもできなかったわけですし。
【2】鬼の官兵衛
8月20日、鶴ヶ城の広間では、神保内蔵助(くらのすけ)(役・津嘉山正種)、田中土佐(役・佐藤B作)、萱野(かやの)権兵衛(役・柳沢慎吾)、梶原平馬(役・池内博之)、秋月悌次郎(役・北村有起哉)ら重臣たちが、松平容保(かたもり)(役・綾野剛)を中心に頭を悩ませている。新政府軍が、どの峠を越えてくるかがわからないからだ。
だが佐川官兵衛(役・中村獅童)だけは、
「雪さえ降れば、我がほうが俄然有利!」と意気盛ん。
ここで、内蔵助と土佐が、官兵衛が新政府軍から「鬼の官兵衛」と恐れられていることを口にする。
ようやく「鬼の官兵衛」というフレーズが出てきた。鳥羽・伏見の戦いのころに出ていてもよかった。
官兵衛、日光口にいる山川大蔵(役・玉山鉄二)が家老に昇進することになる。
家老になる――藩内にあっては、たしかにすごいことだが、その役職は「今」だけ。すぐに無用の長物になる。
重臣たちの前で、容保が籠城の覚悟を語り、「頼母にも登城を命じる」と。
京都の薩摩藩邸にいる西郷吉之助(のち隆盛。役・吉川晃司)のもとに中村半次郎(のち桐野利秋。役・三上市朗)が訪ねてくる。西郷は、中村を日光口に向かわせる。
西郷の背後にかけられた額縁の文字は、「敬天愛人」(天を敬い人を愛する、の意味)。西郷が好んで揮毫(きごう)した言葉だ。
戦を長引かせないためにはどうすればいいか考えている西郷は、「敬天愛人」とともに「いい人」の演出。
西郷が山本覚馬(役・西島秀俊)と話すため牢に顔を出す。覚馬は流行病にかかり横たわっている。
「死なすっとは、惜しか」
西郷は牢番に命じ、医者を呼ばせる。
覚馬は、うわの空で、うらと八重の名をつぶやく。「うら……八重……八重」。妻うらが1回、八重が2回。時栄の名が出てこなくて、よかった。
【3】男たちの出陣
新政府軍の軍勢3000は、8月21日、守りが手薄だった母成(ぼなり)峠から攻め入り、会津同盟軍800は猪苗代城へと退く。
翌22日早朝、触れ役の藩士数人が、「家並(やな)みの触れ」を叫びながら会津城下を走りまわる。触れ役のひとりが、山本家を訪ねる。
「15歳から60歳までの男子は皆、城に入るよう、命が下りました」
山川家では、家族総出で、登城する山川健次郎(役・勝地涼)を送り出している。母親の艶(役・秋吉久美子)は歌を書いた紙を渡す。
「天下(あまがした) とどろく名をば 上げずとも 遅れなとりそ もののふの道」(手柄はあげなくとも命を惜しんで遅れをとるな)
言うは易いが、難しいんじゃなかろうか。
権八と尚之助の出陣祝いの席。
勝ち栗、大豆、クルミが並んでいる。「買って(勝ち栗)、まめで(豆)、来る身を待つ(クルミ)」という意味らしい。
権八と尚之助が出陣祝いの杯を飲み干す。権八が仏様に一礼して立ち上がったとき、三郎の仇を討ちたい一心の八重が、畳に手をつき、連れていってくれと頼み込む。
権八は叱りつけ、佐久は八重の頬を張る。
「三郎の仇はわしが討つ」という権八の静かな決意の声がいい。
平伏したまま悔し涙をこぼす八重を見下ろす尚之助の顔は、困っている。
西郷頼母(役・西田敏行)もまた、戦支度をしている。手伝う妻千恵(役・宮崎美子)を見下ろす頼母の目に涙が浮かぶ。今回の大河ドラマでいちばんいい表情。
猪苗代城では、土方歳三(役・村上淳)が、城に火をかけて退却しようとしていた。土方は仙台に逃れ、榎本武揚率いる艦隊に加わると言うが、斎藤一(役・降谷建志)は「いま、会津を見捨てるのは、義にあらず」と言う。斎藤が惚れたのは、「愚かなほどにひたすらまっすぐな会津という国」というが、やっぱり時尾(役・貫地谷しほり)を助けたいんじゃないの?
【4】白虎隊、出陣す
鶴ヶ城に、猪苗代城陥落の知らせが届く。
新政府軍は、猪苗代と会津城下を結ぶ十六橋(じゅうろっきょう)へ兵を進めてくるはず。石造りの十六橋をなかなか叩き壊せないでいる。
容保が「出陣する!」と立ち上がる。
重臣たちは反対したが、「こたびこそ、わしは、皆とともに戦わねばならぬ」と言い放つ。容保は鳥羽・伏見の戦いを後悔しているのだ。
出陣する容保を見送る照姫、時尾、滝瀬(役・筒井真理子)。
照姫は、負傷兵は城の女たちが介抱すると宣言し、籠城に先立ち、塩の蓄えをたしかめさせる。照姫、たくましい。
容保の護衛兵の中に時尾の弟高木盛之輔(役・大蔵栄人)、付き従う白虎隊のなかに、篠田儀三郎(役・今村信也)、飯沼貞吉(役・峯崎雄太)、伊東悌次郎(役・中島広稀)らがいる。
出陣する白虎隊を、藩士の家族らが沿道で土下座して見送る。八重が見上げると、悌次郎たちは古いヤーゲル銃をかついでいる。ヤーゲル銃は射程距離が短い。
八重は、「よーぐ引きづげで撃ぢなんしょ!」「まどもに撃ち合って、無駄に死んではなんねえ!」と声をかける。
立ち上がって見送る八重が、だれにも責められなくてよかった。
容保一行が滝沢本陣に到着した直後、十六橋まで奪われたという知らせが届く。
次の要所、戸ノロ原(とのくちはら)が破られると、新政府軍は一気に城下に押し寄せてくる。容保は予備兵の半数を戸ノロ原の援軍に向かわせる。そのためには、白虎隊士中(しちゅう)二番隊を出陣させなければならなかった。
土佐が、容保がみずから裂いたという白い木綿の細布を、白虎隊の袖印として配る。
第25回のタイトル「白虎隊出陣」は、ここから。
【5】八重、変身
夕刻、会津城下に、この日2度目の「家並みの触れ」が回る。新政府軍が迫ったときには半鐘が鳴る。それを合図に家臣の家族は鶴ヶ城に入るように、家臣以外の者は逃げるように、と。さすがに領民すべてを城に入れるわけにはいかない。
佐久は、ずっと山本家に仕えてきた徳造とお吉それぞれに金(かね)の入った巾着を渡し、村にもどるよう命じる。ふたりは声を振り絞って抵抗するが、佐久らの荷支度を手伝うまで居ることで納得する。
遠くに雷鳴が轟き、雨が降りはじめる。
この夜、戸ノロ原に着いた白虎隊士中二番隊は、雨中での野営となった。
隊長の日向内記(ないき)(役・武智健二)は、食糧調達のため隊を離れる。
この日向、隊を離れたのは食糧調達のためとされるが、滝沢本陣で作戦指示を受けるためだったともいわれている。いずれにせよ、途中で敵と遭遇して部下たちのもとにもどることができず、負傷したまま鶴ヶ城にもどることになる。
少年たちは体を寄せ合って「おしくらまんじゅう」をして暖をとり、励まし合う。
山本家では、徳造とお吉が、庭に野菜を埋めている。みねが「お吉が好きなかぼちゃも埋めんべ」と笑うと、吉がみねを抱きしめて号泣する。もらい泣きした視聴者もいるのではないだろうか。
初回から出演していた徳造とお吉が、いかに山本家の人々を愛しているかが、よく伝わってきました。
夜、八重は角場を見回している。
三郎(役・工藤阿須加)、覚馬、少女時代の八重(役・鈴木梨央)の回想シーン。鈴木梨央ちゃんは、やはり、かわいいですね。
八重が「いままで、ありがとなし」と手を合わせる。
8月23日、夜明け前の白虎隊士中二番隊。
雨があがり、霧が立ちこめたなか、なにかが動く音がする。
ウサギかと思った直後、敵兵が撃った銃弾が少年たちのあいだをかすめる。
まだ夜が明けきらぬ会津城下に、半鐘が乱打される。
八重は登城の支度をしている。八重の「変身」シーン! 八重は、三郎の軍服を着て、大小の刀を帯び、肩からスペンサー銑をさげている。髪もしばり、凛々しい。母の佐久を前に「いまから、わたしが三郎だ」「わたしは、戦う」と宣言。
ここで、第25回は幕を閉じる。
【まとめ】
今週は、東京都議選の速報がテロップで入りつづけました。なんだか、もう恒例というかんじですが、そのたびに過去から現代に気分が引きもどされます。速報が大事とはいえ、午後8時45分にはニュースがあるのだから……。
今回特筆すべきは、八重の「変身」シーン。カッコいい演出です。毎回やってほしいくらい。
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