テロ組織はどうやって資金を獲得しているのか。すぐに思いつく方法として、麻薬取引や人身売買などが挙げられるが、今年7月8日から11日にかけて、ジンバブエの首都ハラレで開かれた政府間会合では、野生動物の密猟もまた、深刻な問題になっていることが指摘された。

この会合は、アフリカ情報・治安機関委員会(The Committee of Intelligence and Security Services of Africa)と呼ばれるもので、アフリカ25ヶ国の情報機関トップが参加した。今回の会合の目的は、中東からアフリカへと活動範囲を広げているテロ組織の対策について協議することであったが、その中で、議長を務めたジンバブエ中央情報部(CIO)のハッピトン・ボニョングェ(Happyton Bonyongwe)長官は、麻薬取引や人身売買のほかに、野生動物の密猟が国際的なテロ組織の資金源の一つになっている点について言及し、この問題が十分な関心を集めていないとの見方を示した。

同じ問題意識は、他の参加国も共有していたようである。たとえば、ナイジェリア代表からは、「テロ組織が、その活動を支えるために、密猟から莫大な収益を上げている」とし、その証拠を押さえていることも明らかにした。また、組織犯罪として、牛泥棒も深刻になっていて、ナイジェリアでは、2013年、6000頭の牛が盗まれ、322人の牛飼いが殺害されていることも指摘した。

南スーダン代表は、密猟や牛泥棒などが生じる要因として、内戦によって生じた政情不安を挙げている。特にウガンダのテロ組織、神の抵抗軍(Lord’s Resistance Army)を引き合いに出しつつ、その政情不安に乗じて、ゾウを乱獲し、ワシントン条約で売買が禁止されている象牙の違法取引を行なっていると非難した。

こうした指摘を受けて、会合では、ナイジェリア、南スーダン、ウガンダ、コンゴのテロ組織が密猟で利益を得ているとした上で、参加各国の政府が協力し、安全保障上の問題として扱うことで合意した。また、近年、密猟に関わる組織のネットワークが広範かつ高度になってきているので、密猟・密売・密輸のサプライ・チェーン全体を機能不全にするための作戦を進めるように勧告も出された。もちろん、作戦を進めるにあたっては、軍部や治安当局だけでなく、野生動物の保護や出入国管理を担当している政府機関と連携することも確認された。

なお、ここで指摘されている野生動物とは、もっぱらゾウが念頭に置かれている。ゾウから取られる象牙は、闇市場で1本あたり400万円もの値段が付けられるというから、サバンナを歩いている野生のゾウは、テロリストから見れば、金が歩いているようなものだ。しかも、そうして密輸された象牙の7割が中国に送られていることを考えると、この問題で中国が果たしている役割を無視することはできない。

今回の会合でも、象牙の密輸先として知られる中国、ベトナム、タイといった国々と情報交換し、犯罪摘発に努めることが謳われている。だが、そのためには、なんといっても中国が真摯にアフリカ諸国に協力するかどうかがポイントになるだろう。象牙の密輸がテロの資金源になっている以上、中国には、責任ある行動を求めたいところだ。

【関連記事】
"African spy chiefs warn of poaching link to terror groups"
Mail & Guardian Online, August 8, 2014.

追跡 アフリカゾウ密猟とテロ
NHKクローズアップ現代(2014年5月26日)

アフリカの違法象牙、7割が中国に密輸―中国メディア
『レコードチャイナ』(2012年9月9日)


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