March 2013

NSC創設有識者会議、秘密保全の徹底を求める声が相次ぐ

29日、首相官邸において、国家安全保障会議(National Security Council、NSC)創設に向けた有識者会議の第3回会合が開かれた。その中で、出席したメンバーから軍事情報を含む秘密保全の徹底を求める意見が相次ぎ、礒崎陽輔首相補佐官が「法律を制定する方向で検討している」と説明したとのことである。

以前、本ブログにおいて、NSC有識者会議がスタートした際、情報集約だけでなく、秘密保全についても現行法制のままでよいのか、あらためて検討してほしいと書いたことがある。昨今、農水省や外務省での情報漏洩事件が立て続けに発生している状況を考えると、何らかの対策強化を図ることが必要であるし、重要な政策決定に関する情報を集約させることになるNSCという仕組みを安全に保つためにも望ましいと思われるからである。

今のところ、政府としては、今年夏に行なわれる参議院選挙の後、法案提出という運びにしたいようだ。秘密保全法については、日本弁護士会だけでなく、報道機関からも「国民の知る権利を侵害する」として批判されていて、論調としては保守的と言われる『産経新聞』ですら、少なからず反発しているくらいである。選挙後に法案提出とする方針は、政治的に見れば正しい判断と言えるだろう。

ただ少し引っ掛かるのは、法案提出となると、閣議決定が必要になってくる。閣議決定は、原則として全会一致であることが求められるのだが、1980年代、中曽根内閣で検討されていた「スパイ防止法案」について、現行法制においても「尻抜けの状態になっているのではない」として、同法案を批判する論文を書いたことがある谷垣禎一法相は、今回の秘密保全法案の動きについて、どういった態度で臨むのだろうか。あらためて見解を聞かせてほしいところである。

【関連資料】
国家安全保障会議の創設に関する有識者会議
首相官邸(2013年3月29日)

【関連記事】
NSC創設で特定秘密保全法を検討
『msn産経ニュース』(2013年3月29日)

秘密保全法を検討=NSC創設で再浮上-政府
『時事ドットコム』(2013年3月29日)

【関連論文】
谷垣禎一
「われら自民党議員 『スパイ防止法案』に反対する」
『中央公論』第102巻第5号(1987年4月)pp. 78-81.


Ys-K

MI5長官人事、現副長官パーカー氏の昇任を発表

28日、イギリスのテレーサ・メイ(Theresa May)内相は、英保安局(MI5)のジョナサン・エバンス(Jonathan Evans)長官が来月、辞任することを受けて、同局副長官であるアンドリュー・パーカー(Andrew Parker)氏が昇任し、新しくMI5長官のポストに就くことを発表した。

パーカー氏は、現在50歳で、MI5で30年にわたって勤続してきたベテランである。その間、中東諸国や北アイルランドのテロ対策、防諜活動、組織犯罪を担当してきたが、近年は、イスラム過激派をはじめとした国際的なテロリズム対策に取り組んでいた。また、1991年には、情報連絡官としてアメリカに派遣されていた経験もあるという。

2007年、MI5副長官に就任し、その後、5年以上、同ポストでエバンス長官を支えてきた。今回、その後任となったことについて、パーカー氏は、「非常に名誉なことだ」とした上で、「私は、MI5職員が厳しい状況においてイギリスを守るという特別な仕事について、大変誇りに思っている」とコメントしている。

メイ内相は、パーカー氏が選ばれた理由について、「経験と知識の豊かさ」を挙げている。「彼のリーダーシップの下、MI5は、イギリスの安全に対する国内外の脅威に先んじて行動するとともに、世界で最も有能な治安機関の一つとして、その評価をさらに高めることになるでしょう」とも語っていて、パーカー氏の手腕に期待を寄せている。

なお、これは余談であるが、パーカー氏は、もともと鳥類学を研究していた人物で、ケンブリッジ大学で学位も取得しているらしい。ちょっと変わった経歴ではあるけれども、それがまた、なんともイギリス的でいいなぁと感じてしまうのである。

【関連記事】
"MI5 deputy named as director general"
Guardian, March  28, 2013.

"Andrew Parker named as new head of MI5"
BBC News, March 28, 2013.

"MI5 name birdwatcher as new head of spy agency"
Daily Telegraph, March 28, 2013.

"Meet the real-life spymaster: Andrew Parker announced as new director general of MI5"
Independent, March 28, 2013.


Ys-K

警察庁、「サイバー攻撃特捜隊」の創設を発表

近年、サイバー攻撃の脅威が高まっていることを受けて、警察庁は28日、「サイバー攻撃特捜隊」を創設し、サイバー攻撃対策の体制推進を強化することを明らかにした。

警察庁が発表した資料によると、「サイバー攻撃特捜隊」は、約140人の専従捜査員によって構成され、来月から発足する予定になっている。捜査員には、警備情報の収集や警備犯罪の捜査に従事してきた者だけでなく、民間企業の技術者も含めて、情報通信技術に関する専門的な知見を持つ人材を確保するとともに、語学能力(英、中、韓、露など)を有する者も登用し、海外からのサイバー攻撃に関する情報収集に対応する方針である。

また、「サイバー攻撃特捜隊」は、銀行や鉄道などの「重要インフラ事業者」が集中する大都市圏や、先端技術を扱う企業などが多い地域の都道府県警(警視庁、大阪府警など)において専従捜査員を配置し、管轄区域内の捜査を推進するとともに、他の都道府県警に対して、技能・技術面での支援や体制面での支援を行ない、都道府県の垣根を越えたノウハウや情報の集約・共有を目指すとしている。

これまで警察当局は、サイバー攻撃への対応の遅れが繰り返し指摘されてきた。今回、こうした体制を構築することによって、状況改善に向けた一歩にしたいところだが、組織としての能力向上を図ることは当然としても、重要になってくるのは、サイバー対策を担当する組織同士の連携と協力である。

『毎日jp』によると、警察庁は今後、全国の捜査指揮や関係機関との調整を担う「サイバー攻撃対策官(仮)」や、最新動向や組織的背景の分析などを進める「サイバー攻撃分析センター(仮)」も新設し、さらに態勢を強化する方針であるという。しかし、これは、基本的に警察内部の連携であって、他の省庁を念頭に置いたものにはなっていない。

現在、警察庁のほかに、内閣府、防衛省、経産省、総務省といったところがサイバー対策に取り組んでいるが、一連の成果を有機的に活用するためにも、セクショナリズムを克服する制度作りが不可欠である。その点で、サイバー攻撃に関する全体的なコーディネーターとして、「内閣情報政策監」をいち早く設置することが望ましいように思われる。

【関連資料】
サイバー攻撃特別捜査隊の設置について
警察庁新着情報(2013年3月28日)

【関連記事】
『サイバー攻撃特捜隊』4月創設 13都道府県警 民間技術者も登用
『msn産経ニュース』(2013年3月28日)

サイバー攻撃、140人専従=『特別捜査隊』13都道府県に-警察庁
『時事ドットコム』(2013年3月28日)

サイバー攻撃特捜隊を設置へ…13都道府県警に
『YOMIURI ONLINE』(2013年3月28日)

警察庁:サイバー捜査に専従部隊 13都道府県、計140人配置
『毎日jp』(2013年3月28日)


Ys-K

CIA諜報部門トップに初となる女性局員の起用が決定

昨日、米シークレット・サービス史上初となる女性長官が誕生したことをニュースとして取り上げたが、27日付『Washington Post』によると、米中央情報局(CIA)においても、今週初め、国家秘密部(National Clandestine Service、NCS)トップに女性局員が就任したとのことである。

NCSは、もともとCIA工作本部(Directorate of Operations)を起源に持つもので、主に国外での諜報活動や秘密工作などを担当している。現在、中東や北アフリカといった地域で、テロ容疑者を標的とした無人機攻撃が行なわれているが、それもまた、NCSの「テロ対策センター(Counterterrorism Center)」という部局が担当し、作戦を実行している。

NCS部長のポストは、前任者であるジョン・ベネット(John D. Bennett)氏が今年2月いっぱいで退任したことから空席になっていた。今回、就任した女性局員は、代理部長としてNCSを引っ張っていた人物で、このほど、ジョン・ブレナン(John O. Brennan)長官が、複数の元CIA幹部たちとも相談した上で、NCS初となる女性部長を誕生させるという決断を下した模様である。

CIA関係者の話では、新しくNCS部長となった女性局員は、数ヶ国語の言語を操り、豊富な海外経験を持つ有能な人物であるとしている。2001年9月に起きた米同時多発テロ事件以降、NCSのテロ対策センターに配属されて、対テロ戦争の最前線で活躍してきた。女性局員の氏名は非公表となっているが、ちょっと聞くと、『ゼロ・ダーク・サーティ』の主人公を彷彿させるような人物像だ。元情報関係者からも、今回の人事に関して「様々な観点から画期的なことだ」として歓迎するコメントが出されている。

しかし、ブレナン氏の指名承認で議会が紛糾したように、CIAには、水責めなどの強化尋問(enhanced interrogation)をめぐる倫理的な批判が国内外から浴びせられている。こうした批判に対して、ブレナン氏は今後も必要があれば議論を重ねたいとして、真摯に応じる姿勢を示しているが、『Washington Post』が伝えたところでは、今回、NCS部長に就任した女性局員は、まさしく強化尋問に深く関与した人物と見られていて、もしかすると、この人事によって、CIAを批判する声がさらに高まるかもしれない。

とりわけ問題になりそうなのが、2005年、タイの秘密収容所において、強化尋問の様子を撮影したビデオテープを破棄した件である。これは、当時、NCS部長を務めていたホセ・ロドリゲス(Jose Rodriguez)氏が、次第に尋問方法への批判が高まりつつあることを受けて指示したもので、最終的には、尋問を行なったCIA局員が特定されないようにするためとの理由で、90本以上に及ぶとされるビデオテープをすべて破棄してしまった。

実を言うと、このとき、ロドリゲス氏とともに、ビデオテープを破棄するようにCIA上層部と掛け合っていたのが、今回、NCS部長に就任した女性局員だったと言われている。そのため、この問題が再燃することを懸念して、ブレナン氏は当初、起用に難色を示していたようである。

だが、元CIA幹部と相談した際、それでもこの女性局員を起用すべきだとアドバイスされたようで、CIAスポークスマンのプレストン・ゴルソン(Preston Golson)氏によると、それは間違いなく候補者選びにおいて有益なものだったとしている。どういったアドバイスが示されたのかは定かではないが、男性優位の組織文化において、しかも一連の疑惑を脇においてまでもNCS部長に起用するというのだから、CIA関係者の間では、相当、有能な人材として認められているのであろう。

ただ、CIAはそれで良いとしても、他が納得するかどうかは分からない。NCS部長の人事は、議会の承認を必要とするものではないから、今回の一件で議会が紛糾するということはないと思われるが、強化尋問への批判と真相解明の要求は、今もなお根強く続けられている。女性局員の起用が成功だったかどうかという評価は、単純に対テロ対策の成果のみならず、こうした批判や要求に対して、ブレナン氏がいかに対応していくかといった点によっても左右されることになるだろう。

【関連記事】
"CIA director faces a quandary over clandestine service appointment"
Washington Post, March 27, 2013.


Ys-K

米シークレット・サービス、初めての女性長官が誕生

26日、アメリカのバラク・オバマ(Barack H. Obama)大統領は、次期のシークレット・サービス(United States Secret Service)長官として、ジュリア・ピアソン(Julia A. Pierson)氏を任命することを発表した。

ピアソン氏は、セントラル・フロリダ大学を卒業後、30年以上にもわたってシークレット・サービスでキャリアを重ねてきたベテランで、現在、同長官室首席補佐官として勤務している。今回の任命によって、1865年にシークレットサービスが発足して以来、初となる女性長官が誕生することになる。

オバマ大統領に対しては、国防総省や国務省、中央情報局(CIA)といった重要閣僚について、男性ばかり指名したため、もっと女性を起用すべきだという批判の声が上がっていた。本来ならば、男性であろうと女性であろうと、能力的に問題がなければ誰であっても構わないと思うのだが、ピアソン氏をシークレット・サービス長官に起用することで、ひとまずそうした声を抑えることにはつながるだろう。

議会においても、今回の任命については好意的に受け取られているようである。米上院国土安全保障・政府問題委員会(United States Senate Committee on Homeland Security and Governmental Affairs)トム・カーパー(Tom Carper)委員長は、「名誉ある画期的な出来事だ」とした上で、警護・警備、捜査活動、サイバー・セキュリティーといった分野を抱えるシークレット・サービスを率いていくのに十分な経験があると称賛している。

ただ、シークレット・サービスは、2012年4月、コロンビアで同スタッフが売春行為を働いたとするスキャンダルが発覚し、高い倫理観と使命感を持つという組織のイメージが大きく崩れてしまった。そのため、前任者のマーク・サリバン(Mark J. Sullivan)長官から綱紀粛正が進められているわけだが、ピアソン氏もまた、同様にシークレット・サービスの権威を取り戻すことが課題になってくるだろう。約7,000人の職員と16億ドルの予算を使って、それをいかにして進めるか、その手腕が問われることになりそうである。

【関連資料】
President Obama Announces A Key Administration Post
White House Office of the Press Secretary, March 26, 2013.

【関連記事】
"Obama names veteran Secret Service agent Julia Pierson as agency’s 1st female director"
Washington Post, March 26, 2013.

"Obama names the first woman to head the Secret Service"
Los Angeles Times, March 26, 2013.

"Obama Names Pierson as First Woman to Lead Secret Service"
Bloomberg, March 26, 2013.

米大統領警護隊トップに初の女性 買春スキャンダルも影響
『msn産経ニュース』(2013年3月27日)

警護局長に初めて女性起用=米シークレットサービス-大統領
『時事ドットコム』(2013年3月27日)


Ys-K
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