インドでは、国内の治安・防諜活動を担当している法務省直轄の情報機関、情報部(Intelligence Bureau、IB)において、公式史(official history)を編纂しようというプロジェクトが進行しつつあるようである。
きっかけは、2011年、インドの対テロリズム政策を改善するための提言を求める書簡において、ネーチャル・サンドゥ(Nehchal Sandhu)IB長官が、IBの歴史についても、これを機会に振り返りたいと言及したことだ。その後、周囲から促されたこともあって、元インド警察情報部長のアミヤ・サマトラ(Amiya Samantra)氏を中心に、IBのスタッフや学者によって構成されるチームが結成され、公式史編纂に向けた計画が着手されたようだ。
IBといえば、長い間、闇のベールに包まれてきた情報機関であった。現在においても、議会に対して活動報告の義務が課されていないので、その実態についてはよく分かっていないことが多い。それにもかかわらず、公式史編纂に乗り出したのは、IBのカウンターパートであるイギリスの情報局保安部(MI5)が、2010年、ケンブリッジ大学のクリストファー・アンドリュー教授によるMI5の公認史(authorized history)を出したことに影響を受けたからだとみられている。
もし公式史を世に出すとなれば、IBにとって、きわめて画期的な出来事である。闇のベールを自ら外すということでも十分、興味深いが、そもそもIBは、イギリス植民地の時代から続いてきた情報機関であり、その歴史は、世界の情報機関の中でも最も古いという説もある。1962年、中印国境紛争で中国の奇襲を許したことから、海外での情報活動は研究分析局(Research and Analysis Wing、RAW)という組織に移されてしまったが、治安・防諜活動を通じて、インドでは、相変わらず隠然とした政治的な影響力を持つと言われている。
公式史では、そうした歴史や転換点について、内容上、どこまで踏み込めるかが注目される。現時点において、いつ出版されるのかは決まっていないようだが、大きな期待を寄せておきたい。
【関連記事】
"Intelligence Bureau to take off cloak & bare the dagger"
Daily News and Analysis India, July 30, 2012.
Ys-K
きっかけは、2011年、インドの対テロリズム政策を改善するための提言を求める書簡において、ネーチャル・サンドゥ(Nehchal Sandhu)IB長官が、IBの歴史についても、これを機会に振り返りたいと言及したことだ。その後、周囲から促されたこともあって、元インド警察情報部長のアミヤ・サマトラ(Amiya Samantra)氏を中心に、IBのスタッフや学者によって構成されるチームが結成され、公式史編纂に向けた計画が着手されたようだ。
IBといえば、長い間、闇のベールに包まれてきた情報機関であった。現在においても、議会に対して活動報告の義務が課されていないので、その実態についてはよく分かっていないことが多い。それにもかかわらず、公式史編纂に乗り出したのは、IBのカウンターパートであるイギリスの情報局保安部(MI5)が、2010年、ケンブリッジ大学のクリストファー・アンドリュー教授によるMI5の公認史(authorized history)を出したことに影響を受けたからだとみられている。
もし公式史を世に出すとなれば、IBにとって、きわめて画期的な出来事である。闇のベールを自ら外すということでも十分、興味深いが、そもそもIBは、イギリス植民地の時代から続いてきた情報機関であり、その歴史は、世界の情報機関の中でも最も古いという説もある。1962年、中印国境紛争で中国の奇襲を許したことから、海外での情報活動は研究分析局(Research and Analysis Wing、RAW)という組織に移されてしまったが、治安・防諜活動を通じて、インドでは、相変わらず隠然とした政治的な影響力を持つと言われている。
公式史では、そうした歴史や転換点について、内容上、どこまで踏み込めるかが注目される。現時点において、いつ出版されるのかは決まっていないようだが、大きな期待を寄せておきたい。
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