28日、オーストラリアのジュリー・ビショップ(Julie Bishop)外相とインドネシアのマルティ・ナタレガワ(Marty Natalegawa)外相は、バリ島のヌサ・ドゥアにおいて、今後、両国とも互いの利益が損なわれるようなスパイ活動を行なうことはやめて、関係機関同士の情報協力を推進していくことで合意した、「行動規範への共同理解(Joint Understanding on a Code of Conduct)」に調印した。
文書は、わずか1ページにも満たないもので、以下の2点で合意に至ったと記されている。
この2点を実行に移していくため、豪・インドネシア両政府は、情報機関トップが定期的に会合を開き、情報面で調整を行なっていくことが確認された。
実を言うと、オーストラリアとインドネシアの関係は、2013年11月に発覚したスパイ問題によって、大きく悪化した状況となっていた。この問題は、元アメリカ中央情報局(CIA)スタッフのエドワード・スノーデン(Edward J. Snowden)氏がリークした機密文書によって明らかになったもので、オーストラリア通信情報部(ASD)が2009年頃、インドネシアのスシロ・ユドヨノ(Susilo Bambang Yudhoyono)大統領やその側近らを標的として、携帯電話で交わされた通話の内容を盗聴していた。
当然、インドネシアでは、オーストラリアへの反発が一気に強まり、予定されていた政府首脳の会談が相次いでキャンセルとなった。また、軍事や治安などの分野で進められていた両国間の協力についても、一時的に中断、延期されるようになり、それまで培ってきた戦略的なパートナーシップの関係に大きな亀裂が入ったのである。
しかし、2014年6月、オーストラリアへの反発をあらわにしていたユドヨノ大統領の態度が軟化し、オーストラリア政府首脳との会談に前向きな姿勢を示したことから、風向きが変わり始めた。今回の会談は、こうした風向きの変化を捉えて開かれたもので、「行動規範への共同理解」は、両国の関係修復を図る上で、ユドヨノ大統領が強く要望したことによって調印されることになった。
調印後に開かれた記者会見において、ユドヨノ大統領は、「インドネシアとオーストラリアの関係において、今日は非常に特別で重要な日である」とした上で、「行動規範への共同理解」の内容について、今後、両国間の情報協力が一層、進展することになるだろうと期待を寄せた。また、ビショップ外相も、「オーストラリアとインドネシアとの間で情報協力を促す土台になってくれるだろう」とし、この合意がより幅広いパートナーシップの構築に生かされると述べた。
確かに、今回、調印された「行動規範への共同理解」は、互いにスパイ活動を抑制することで正式に合意したという点で、歴史的に見ても画期的なものといえるだろう。だが、問題は、それが本当に機能するかどうかである。
両首脳の説明によると、「行動規範への共同理解」は、2006年、オーストラリアとインドネシアの間で結ばれた安全保障条約、「ロンボク条約(Lombok Treaty)」の第1条(Article 1)と第2条(Article 2)に基づくものだとしている。しかし、合意内容そのものが非常にあいまいであるから、その実効性を高めていくためには、具体的な規定や手続きなどについて詰める作業が必要になってくるはずである。
おそらく今後、定期的に開かれる予定になっている情報機関トップの会合では、その調整が図られることになると推測されるので、どこまで実効性のあるものにしていくかが問われることになるだろう。
【関連資料】
Joint Understanding on a code of conduct between the Republic of Indonesia and Australia in implementation of the agreement between the Republic of Indonesia and Australia on the Framework for Security Cooperation ("The Lombok Treaty")
Australian Government Department of Foreign Affairs and Trade, August 29, 2014.
Press conference, Bali - Joint Understanding on a Code of Conduct between the Republic of Indonesia and Australia
Australian Government Department of Foreign Affairs and Trade, August 29, 2014.
【関連記事】
"Australia and Indonesia agree on code of conduct"
Jakarta Post, August 27, 2014.
"Australia and Indonesia to sign code of conduct to avoid another spying scandal"
Sydney Morning Herald, August 28, 2014.
"Code of Conduct between Australia and Indonesia on framework for security"
The Australian, August 28, 2014.
"Julie Bishop mends ties with Indonesia following spy row"
The Australian, August 28, 2014.
"Australia To Sign Spying Code Of Conduct With Indonesia"
International Business Times, August 28, 2014.
Ys-K
文書は、わずか1ページにも満たないもので、以下の2点で合意に至ったと記されている。
1. The Parties will not use any of their intelligence, including surveillance capacities, or other resources, in ways that would harm the interests of the Parties.
2. The Parties will promote intelligence cooperation between relevant institutions and agencies in accordance with their respective national laws and regulations.
この2点を実行に移していくため、豪・インドネシア両政府は、情報機関トップが定期的に会合を開き、情報面で調整を行なっていくことが確認された。
実を言うと、オーストラリアとインドネシアの関係は、2013年11月に発覚したスパイ問題によって、大きく悪化した状況となっていた。この問題は、元アメリカ中央情報局(CIA)スタッフのエドワード・スノーデン(Edward J. Snowden)氏がリークした機密文書によって明らかになったもので、オーストラリア通信情報部(ASD)が2009年頃、インドネシアのスシロ・ユドヨノ(Susilo Bambang Yudhoyono)大統領やその側近らを標的として、携帯電話で交わされた通話の内容を盗聴していた。
当然、インドネシアでは、オーストラリアへの反発が一気に強まり、予定されていた政府首脳の会談が相次いでキャンセルとなった。また、軍事や治安などの分野で進められていた両国間の協力についても、一時的に中断、延期されるようになり、それまで培ってきた戦略的なパートナーシップの関係に大きな亀裂が入ったのである。
しかし、2014年6月、オーストラリアへの反発をあらわにしていたユドヨノ大統領の態度が軟化し、オーストラリア政府首脳との会談に前向きな姿勢を示したことから、風向きが変わり始めた。今回の会談は、こうした風向きの変化を捉えて開かれたもので、「行動規範への共同理解」は、両国の関係修復を図る上で、ユドヨノ大統領が強く要望したことによって調印されることになった。
調印後に開かれた記者会見において、ユドヨノ大統領は、「インドネシアとオーストラリアの関係において、今日は非常に特別で重要な日である」とした上で、「行動規範への共同理解」の内容について、今後、両国間の情報協力が一層、進展することになるだろうと期待を寄せた。また、ビショップ外相も、「オーストラリアとインドネシアとの間で情報協力を促す土台になってくれるだろう」とし、この合意がより幅広いパートナーシップの構築に生かされると述べた。
確かに、今回、調印された「行動規範への共同理解」は、互いにスパイ活動を抑制することで正式に合意したという点で、歴史的に見ても画期的なものといえるだろう。だが、問題は、それが本当に機能するかどうかである。
両首脳の説明によると、「行動規範への共同理解」は、2006年、オーストラリアとインドネシアの間で結ばれた安全保障条約、「ロンボク条約(Lombok Treaty)」の第1条(Article 1)と第2条(Article 2)に基づくものだとしている。しかし、合意内容そのものが非常にあいまいであるから、その実効性を高めていくためには、具体的な規定や手続きなどについて詰める作業が必要になってくるはずである。
おそらく今後、定期的に開かれる予定になっている情報機関トップの会合では、その調整が図られることになると推測されるので、どこまで実効性のあるものにしていくかが問われることになるだろう。
【関連資料】
Joint Understanding on a code of conduct between the Republic of Indonesia and Australia in implementation of the agreement between the Republic of Indonesia and Australia on the Framework for Security Cooperation ("The Lombok Treaty")
Australian Government Department of Foreign Affairs and Trade, August 29, 2014.
Press conference, Bali - Joint Understanding on a Code of Conduct between the Republic of Indonesia and Australia
Australian Government Department of Foreign Affairs and Trade, August 29, 2014.
【関連記事】
"Australia and Indonesia agree on code of conduct"
Jakarta Post, August 27, 2014.
"Australia and Indonesia to sign code of conduct to avoid another spying scandal"
Sydney Morning Herald, August 28, 2014.
"Code of Conduct between Australia and Indonesia on framework for security"
The Australian, August 28, 2014.
"Julie Bishop mends ties with Indonesia following spy row"
The Australian, August 28, 2014.
"Australia To Sign Spying Code Of Conduct With Indonesia"
International Business Times, August 28, 2014.
