19日、アメリカ連邦捜査局(FBI)は、「ブラックシェーズ(Blackshades)」と呼ばれる不正プログラムの開発や販売に関わった人物、90人余りを世界18ヶ国で一斉に摘発し、逮捕したと発表した。

ブラックシェーズは、他人のコンピューターに侵入すると、ネットバンキングで利用されるパスワードを盗んだり、ソーシャル・メディアのアカウントを乗っ取ったりするほか、キーボードの入力情報の収集やウェブカメラの操作、さらには、サービス妨害(DDoS攻撃)に加担する機能までも併せ持った、悪質性の高い不正プログラムである。すでに世界100ヶ国以上で売買されており、感染したコンピューターは50万台以上と言われている。

『CNN.co.jp』によると、捜査員らが容疑者宅の捜索を始めると、ハッカーの情報交換サイトは騒然となったという。捜索先はヨーロッパ、アジア、オーストラリア、北米など300ヶ所以上に及び、ブラックシェーズの共同開発者と見られるスウェーデン人とアメリカ人のハッカーが逮捕された。

今回の摘発に協力した、ヨーロッパ司法機構(European Judicial Cooperation Unit、Eurojust)のコーエン・ヘルマンズ(Koen Hermans)オランダ代表は、「誰もが安全にインターネットを使用できるわけではないことを強く認識させる事例だ」とした上で、「不正プログラムの開発やその使用に関わった人に対して、警告と抑止になるだろう」とコメントしている。

なお、ブラックシェーズ関係者の摘発を発表するにあたって、FBIは、あらためて不正プログラムからコンピューターを守る方法について紹介している。それによると、(1)アンチウイルスソフトを導入する、(2)修正プログラムの自動更新機能を有効にしておく、(3)パスワードの強化、(4)ポップアップ・ブロックの機能を有効にしておく、(5)信頼できるウェブサイトからのみダウンロードする、(6)怪しげな電子メールに添付されたファイルやウェブサイトのアドレスを開かないようにする、といった方法が並べられている。

割と当たり前のことではあるのだが、(6)に関しては、たとえ知り合いからの電子メールであっても、場合によっては、その本人でさえも不正プログラムに感染していることに気づかないまま、それを拡散させてしまっていることがあるから注意が必要だ。そのため、FBIでは、指定されたウェブサイトにアクセスしなければならないときは、電子メールに貼られたリンクからではなく、直接、アドレスを入力して訪問するように勧めている。

【関連資料】
International Blackshades Malware Takedown
Federal Bureau of Investigation, May 19, 2014.

【関連記事】
"FBI: More than half million computers in over 100 countries infected by BlackShades malware"
U.S. News and World Report, May 19, 2014.

"Cybercrime: Creators, users of sinister Blackshades malware arrested"
Los Angeles Times, May 19, 2014.

"FBI arrests 100 hackers over Blackshades malware"
Guardian, May 19, 2014.

FBI、マルウェア『Blackshades』の作者を摘発 世界で90人逮捕
『ITmedia エンタープライズ』(2014年5月20日)

パソコン乗っ取り、世界で一斉摘発 90人以上逮捕
『CNN.co.jp』(2014年5月20日)

米欧当局、ハッカー90人余逮捕=ウイルスを開発・販売
『時事ドットコム』(2014年5月20日)


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